第十一話 エイダの過去~底辺ヒーロー1~ NEW
「このころの僕は人助けなんて人から強いられて仕方なくやるものだと思っ
ていたんだ。
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「いらっしゃいませ。」
自動扉の開いた先で店員からのお出迎えの声。
僕はそちらに目を向けることもなく小走りに店内を進む。
コーラ4本、ポテトチップス3袋。
値段も見ずにとったそばからカゴに入れるとそのままレジに向かう。
「760円になります。」
店員に1000円札を渡すと、買ったものの入った袋を手に取る。
店員から渡されたお釣りをろくに確認もせずにポケットに入れると
僕は自動ドアの前まで小走りで移動し店員の挨拶が聞こえる前に外へと駆け出していく。
残り30秒。
日々の積み重ねでほとんど正確に時をカウントできるようになった僕は
心の中で残り時間をカウントしながらここでスパートをかける。
残り13秒。
角を曲がれば残すは直線。
僕は必死に、けれどもコーラの入った袋は極力揺らさないように全力で走った。
目指すは公園。
残り5秒。
公園の入口へとたどり着く。
スピードを緩めることなく公園の中に躍り込んだ僕は膝をつき屈みこむ。
「おお、時間ぴったりじゃん。お疲れ―。」
そして公園の入り口で僕を出迎えたのは3人。
僕のクラスメートである男女の3人組だった。
「グッジョブ、エイダ。」
「エイダ君、ありがとっ。」
僕への感謝の言葉を口にしながら僕の手にするレジ袋の中身をとっていく。
「はぁ、はぁ、はぁ。じゃあ僕はこれで。」
「おっ、エイダ帰んの? じゃねー。」
「ばいばっ。」
「うん、それじゃあ……」
今日は金曜日。
明日は学校が休みだと思うと少しホッとする。
帰り道、僕は一人家路を歩く。
こんな時、ふと思うことがある、自分は何のために生まれてきたのかと。
朝起きると顔を洗い朝食の並べられたテーブルに着く。
父親は僕が中学に上がった年に亡くなっていて、母は僕が目覚めるころには
病院へと出勤しており一人さびしく食事をとる。
学校に行けば話すのは先生にあてられた時ぐらいで
友達もおらずただただ一人授業が終わるのを待つばかり。
学校が終われば電話で呼び出されぱしりに使われ
用が済めばそのままこうして家路へとつく。
家には当然誰もおらず母が帰ってくるまで一人で過ごすのだ。
特に生きるのがつらいというわけではない。
確かに学校の連中にはいいように使われているのだが
今まで暴力を受けたことも暴言を吐かれたこともなく
陰口をたたかれているのは知っているが
彼らのいうことさえきちんと聞いていれば特に僕に危害を加えられることはないだろう。
けれども、こんな生活……楽しいわけがない。
正直もう学校なんて行きたくはないがそれでも一人頑張る母を見ると
僕だけ家にこもっているわけにもいかずただただ冴えない日常を繰り返す。
変わりたい、そう何度も思った。
変わろう、そう何度も決意した。
けれどもその決意も家を出るまで。
学校につけば結局一言も話さず、だれともかかわらず、結局僕はいつも一人。
誰からも意識されず、誰からも期待されない。
僕はいないも同然なのだ。
一度でいいからヒーローになりたい。
そんな漠然とした期待が頭をよぎることも多々あるが
代わり映えしない日々を過ごすうちに錆びついて鈍化してしまった僕の心は
そんな期待では揺れることはなくなってしまった。
あきらめではなく期待すらできなくなっていく自分。
そんな僕はいつしか変わることすら疎ましく思うようになってしまったのだった。
変わらない、それが僕の今唯一の幸せ。
こんな僕でも何か役に立つことはあるのだろうか。
僕は何のために生まれてきたのだろうか。
その疑問だけが家へと帰る間中僕の中で流れ続けるのであった。
ていたんだ。
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「いらっしゃいませ。」
自動扉の開いた先で店員からのお出迎えの声。
僕はそちらに目を向けることもなく小走りに店内を進む。
コーラ4本、ポテトチップス3袋。
値段も見ずにとったそばからカゴに入れるとそのままレジに向かう。
「760円になります。」
店員に1000円札を渡すと、買ったものの入った袋を手に取る。
店員から渡されたお釣りをろくに確認もせずにポケットに入れると
僕は自動ドアの前まで小走りで移動し店員の挨拶が聞こえる前に外へと駆け出していく。
残り30秒。
日々の積み重ねでほとんど正確に時をカウントできるようになった僕は
心の中で残り時間をカウントしながらここでスパートをかける。
残り13秒。
角を曲がれば残すは直線。
僕は必死に、けれどもコーラの入った袋は極力揺らさないように全力で走った。
目指すは公園。
残り5秒。
公園の入口へとたどり着く。
スピードを緩めることなく公園の中に躍り込んだ僕は膝をつき屈みこむ。
「おお、時間ぴったりじゃん。お疲れ―。」
そして公園の入り口で僕を出迎えたのは3人。
僕のクラスメートである男女の3人組だった。
「グッジョブ、エイダ。」
「エイダ君、ありがとっ。」
僕への感謝の言葉を口にしながら僕の手にするレジ袋の中身をとっていく。
「はぁ、はぁ、はぁ。じゃあ僕はこれで。」
「おっ、エイダ帰んの? じゃねー。」
「ばいばっ。」
「うん、それじゃあ……」
今日は金曜日。
明日は学校が休みだと思うと少しホッとする。
帰り道、僕は一人家路を歩く。
こんな時、ふと思うことがある、自分は何のために生まれてきたのかと。
朝起きると顔を洗い朝食の並べられたテーブルに着く。
父親は僕が中学に上がった年に亡くなっていて、母は僕が目覚めるころには
病院へと出勤しており一人さびしく食事をとる。
学校に行けば話すのは先生にあてられた時ぐらいで
友達もおらずただただ一人授業が終わるのを待つばかり。
学校が終われば電話で呼び出されぱしりに使われ
用が済めばそのままこうして家路へとつく。
家には当然誰もおらず母が帰ってくるまで一人で過ごすのだ。
特に生きるのがつらいというわけではない。
確かに学校の連中にはいいように使われているのだが
今まで暴力を受けたことも暴言を吐かれたこともなく
陰口をたたかれているのは知っているが
彼らのいうことさえきちんと聞いていれば特に僕に危害を加えられることはないだろう。
けれども、こんな生活……楽しいわけがない。
正直もう学校なんて行きたくはないがそれでも一人頑張る母を見ると
僕だけ家にこもっているわけにもいかずただただ冴えない日常を繰り返す。
変わりたい、そう何度も思った。
変わろう、そう何度も決意した。
けれどもその決意も家を出るまで。
学校につけば結局一言も話さず、だれともかかわらず、結局僕はいつも一人。
誰からも意識されず、誰からも期待されない。
僕はいないも同然なのだ。
一度でいいからヒーローになりたい。
そんな漠然とした期待が頭をよぎることも多々あるが
代わり映えしない日々を過ごすうちに錆びついて鈍化してしまった僕の心は
そんな期待では揺れることはなくなってしまった。
あきらめではなく期待すらできなくなっていく自分。
そんな僕はいつしか変わることすら疎ましく思うようになってしまったのだった。
変わらない、それが僕の今唯一の幸せ。
こんな僕でも何か役に立つことはあるのだろうか。
僕は何のために生まれてきたのだろうか。
その疑問だけが家へと帰る間中僕の中で流れ続けるのであった。
**
「ただいま。」
家の中に向けて小声で言うが当然中からは返事はない。
靴を脱いで玄関を上がるとそのままテレビのある居間へ。
鞄をおろしテレビのリモコンへと手を伸ばした僕は腰を下ろしながらテレビの電源を入れる。
『ご覧ください。この人の数。明日にクリスマスを控えた今日、ここ○×広場は
多くのカップルたちでにぎわっています。夜には大量のイルミネーションが輝く……』
そういえば今日は12月24日。多くの人たちにとって重要な意味を持つこの日。
そんな日でも僕はいつも通り一人きり。今日は母さんも夜勤のため明日の朝までは帰らない。
何とも言えないくすぶった感情。僕は渦巻くそれらを内に抱えながらカーペットの上へと寝転ぶ。
見上げれば木目の天井。小さいころはその木目にいろいろな動物や人の顔などを見出したものだが今はそんな気力もなくただただ天井の一点を意味もなく見続ける。
『犠牲者が相次ぐ絞殺魔ハングドマン。彼はカップルばかりを標的としています。
この聖夜、浮かれる気持ちもわかりますが外出の際は十分注意してくださいね……』
つけっぱなしのテレビから聞こえてきたのは昨今世間をにぎわす絞殺魔、『ハングドマン』の名であった。
ニュースをあまり見ないため詳しいことは知らないが犯行は夜にしか行われていないと聞いていたから
いままであまり気にしてこなかったけど。ふと、母さんのことが思い浮かぶ。
けれども心配してみたところで僕に何かできるわけではなくハングドマンが
狙うのはカップルだけだと思い直しテレビの電源を消す。
心配しているよりも家の片づけでもやってあげた方が喜ぶよね。
そう思い直し僕は腕まくりをするのだ。
「ただいま。」
家の中に向けて小声で言うが当然中からは返事はない。
靴を脱いで玄関を上がるとそのままテレビのある居間へ。
鞄をおろしテレビのリモコンへと手を伸ばした僕は腰を下ろしながらテレビの電源を入れる。
『ご覧ください。この人の数。明日にクリスマスを控えた今日、ここ○×広場は
多くのカップルたちでにぎわっています。夜には大量のイルミネーションが輝く……』
そういえば今日は12月24日。多くの人たちにとって重要な意味を持つこの日。
そんな日でも僕はいつも通り一人きり。今日は母さんも夜勤のため明日の朝までは帰らない。
何とも言えないくすぶった感情。僕は渦巻くそれらを内に抱えながらカーペットの上へと寝転ぶ。
見上げれば木目の天井。小さいころはその木目にいろいろな動物や人の顔などを見出したものだが今はそんな気力もなくただただ天井の一点を意味もなく見続ける。
『犠牲者が相次ぐ絞殺魔ハングドマン。彼はカップルばかりを標的としています。
この聖夜、浮かれる気持ちもわかりますが外出の際は十分注意してくださいね……』
つけっぱなしのテレビから聞こえてきたのは昨今世間をにぎわす絞殺魔、『ハングドマン』の名であった。
ニュースをあまり見ないため詳しいことは知らないが犯行は夜にしか行われていないと聞いていたから
いままであまり気にしてこなかったけど。ふと、母さんのことが思い浮かぶ。
けれども心配してみたところで僕に何かできるわけではなくハングドマンが
狙うのはカップルだけだと思い直しテレビの電源を消す。
心配しているよりも家の片づけでもやってあげた方が喜ぶよね。
そう思い直し僕は腕まくりをするのだ。
~鈍意制作中~
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