そして空へ
「クルシュラ! 観念してお縄につけい!」
「ムムッ、貴様はキャッシュ! ええい、お前ごときにやられる俺ではないわ!」
玉座の間にいたクルシュラは少しも変っていなかった。
「俺はむかしから、お前のことが気に入らなかった・・・だから兵をおこした!」
「それが、それが人を悲しませるお前の理由か、クルシュラ!」
俺は剣を構えた。
クルシュラと何度も激しく斬り合う!
「それがお前の悲しみか! 兵をおこしていたずらに人を死なせることが!」
「そうだ! おれは、おれは権力が欲しかった! 何もかもが欲しかった! そう思って何が悪い!!」
「欲しいと言えば、くれてやったのに!」
「そんなこと信じられるかああああああああああああ」
クルシュラの手から炎が出て、オレを吹き飛ばした。
「ぐあああ!」
「どうだ、これが俺の力だ! 邪教の力に手を染めて手にした俺の力!
「それで手にしたものは、まがいものだ!」
「だったらなんだ、俺はこれが欲しかった! 俺は最強なんだああああああああ!」
クルシュラの全身が炎に包まれる。
「うおおおおおお、な、なんだこれは! 俺はいったいどうしちまったんだ!」
「それが悪しき力だよ、クルシュラ・・・・」
火だるまになったクルシュラはわけもわからず剣を振り回している。
「クルシュラ・・」
「王子、負けちゃだめ!」
「リュキ! それにノリム! どうして・・・」
「ヘタレ王子に活を入れに来た」
「活ってなんだよノリム、俺は・・・」
「王子は迷ってる。それを振り払ってクルシュラを倒さなければならない。
それが彼のためにできる・・・たったひとつの、供養」
「く。よう・・・」
「人は長く生きられない。せめて、苦しまずに逝かせてやるべき」
「・・・そう、だな」
俺は剣を構えた。そこにリュキがエキドナを、ノリムが杖を出す。
「三人の力をいま、ひとつに!」
「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!」」」
その剣先がクルシュラの胸をつらぬく!
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
「お前の悲しみもこれまでだ、クルシュラ!」
「そんな、ばかな、この、おれが、
俺は、すべてを 手に入れた はず だったのに
なんで こんな ・・・・・
ち きしょ う・・・」
やがてクルシュラは消滅した。次元の渦に飲み込まれたのだ。
もう二度と会うことはないだろう・・・・・
「クルシュラ・・・・」
「王子、泣いちゃだめだよ。それが、王族のつとめだから・・・」
「リュキ・・」
「しあわせは、みんなにはない。
それをもっている人間が しあわせになるべき。
そして、そうでない人間は・・・クルシュラ王子のように野心に憑かれた人間は、死ぬしか・・・」
「・・・・そんなことねぇ!」
俺は涙をぬぐった。
「あいつが死ぬしかなかったなんて、思いたくねぇ・・・・
俺がよわかったから、あいつは死んだ!
だから・・・俺は強くなる・・・いつか・・・」
「王子・・・」
ぶっ壊れた城に、冷たく静かな風が吹いていた・・・・
数ヶ月後・・・
「いやーそれにしても王子がモアン様と結婚するなんてね」
「驚いた」
「うるせー。好きになっちゃったんだからしかたねーだろ。
それに、おれたちが幸せにならなきゃ まず国が戻っていかねー。
そんな気がするんだ」
「はいはい、おしあわせに」
「のろけ話はもうたくさん」
「うるせーばーか! お前らなんかもう知らん!」
こうして、俺は嫁さんをゲットしたのだった。