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68 戦場の女神

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ゲオルク達はリブロース殿下と残余のフローリア難民達を乗せたレドフィンや竜騎士部隊の背に乗り、フローリアから帰隊していた。
戦力を回復させるべく、先ずはディオゴ、ノースハウザ一率いる兎人軍とガザミ率いる魚人軍と合流せねばならない。
「どや?! ドラゴンの背中でお空の散歩ってのもなかなか風情あってええモンやろ?!」
竜騎士部隊隊長のルイーズの南東部訛りのアルフヘイム語が故郷を失い 落ち込んでいたフローリア難民達の心を和ませる。
「・・・やかましい女だな」
「クールトガ こういうのもいいだろぉー?
遠足みたいでさぁー!!」
「フン 何が遠足だ」
「ツンツンしてても疲れるだけだぞー 」
気の抜けたムードが好きではないクルトガと
こういうムードが大好きなアナサスが話しているのを尻目にルイーズは話しつづける。
「こういう機会めったに無いし今の内に楽しんどきいーや!!」
ルイーズの活発さで沈んでいた難民達も横切る雲や 鳥の群れへと目を向け出す。
「わぁ~ お日様きれぇ~え」
フローリア難民の子供が目を輝かせる・・・
「お日様おっっっきいいいいーねぇ~~」
「せやろー! やっぱりお日さんは近いとこで見た方が格別やろ~?」
「お日しゃんオレンジでミカンみたい~ たべられるかなぁ~?」
「今度 食わしたるわ~ アッハッハァ~」
ハッハッハッと陽気に笑うルイーズにゲオルク達も和まされる。
「・・・戦場の女神というのはああいった女性のことを言うのかもしれんな・・・」

連戦続きで疲れ切っていたゲオルクの心が
まるでこびりついた泥を洗い流すように洗われていく。いつの時代、場所でも女は必要であり、人々に癒しを与えてくれるものだ。

和やかな明るさを取り戻しつつあったフローリアの人々の中でも浮かない人物がいた。
「・・・リブロース殿下」
治めていた国を失い 国民を流浪の民にしてしまった己の無力さと罪悪感で彼女は無気力に目を見開き、竜の背を見つめていた。
(今はそっとしておくのが正解か・・・)
気持ちの整理などついていないだろう。
ゲオルクも暫く彼女を見守っておくことにした。
「オィ ルイーズ、アレって・・・」
前方を飛んでいたレドフィンが尋ねる。
「おォ!?すげえ!!」
「みかん~ みかんだぁ~」
突如としてオレンジ色に光った閃光に
不謹慎ながら子供達はワクワクした様子で驚いていた。
「急激で刹那的な熱反応・・・爆発だな」
クルトガが冷静に呟く・・・小難しい表現は流石はエルフと言ったところか。
「・・・待て  あの方角は・・・!」
ゲオルクは焦燥した。
今まさに自分達が向かおうとしている方角での
爆発・・・

「・・・嫌な予感が的中しなければいいのだが」
ゲオルクの焦燥に少しばかり他のメンバーも事情を察した様子だった。


「・・・じゃァな ゲオルクのダンナ・・・」
「リブロース殿下たちを宜しく頼む・・・」
ゲオルク、アナサス、クルトガはリブロース達を
レドフィンとルイーズ率いる竜騎士部隊に託し、分かれることとなった。レドフィン達が送りとどける難民は先行している難民達の群れと合流する算段となっている。その群れにはセキーネとマリーが紛れ込んでいる。 合流すれば彼等の秘匿もより確実なものになるだろう。
「んな申し訳ない顔せんでええって! ちゃんと送り届けたるから!」
ルイーズが満面の笑みでゲオルク達を励ます。
「・・・頼むぞ」
そう言うとゲオルクはルイーズと握手を交わす。
「・・・ゲオルク様 」
「リブロース殿下・・・いつの日か・・・必ずフローリアを取り戻しましょう・・・これから辛いことがあろうとも 望郷の念を糧にどうか生きて下さい・・・力を蓄え、故郷を取り戻すその日には・・・ぜひ私の名を呼んでください・・・たとえ何処に居ようとも必ずや貴女の力になります。」
「ゲオルク様・・・っ」
祖国を失い、リブロースはゲオルクの巨大な胸に抱かれ、泣いた。その姿は父親と娘のようであった。
「・・・どうかお元気で」
どこか悲しげにゲオルクは大空へと羽ばたいていくリブロースを見送る。
「ひゅ~~ オッサンも罪な男だねぇ~~」
「落ち込む乙女を抱きしめてやれないような男になりたくないだけだよ アナサス君」
アナサスの茶化しぶりをゲオルクはサラリとかわす。
「・・・ゲオルク」
「・・・ああ 分かってる 急いでディオゴ達と合流しなければ」
着陸に最適な場所の選定をしている内に
あの爆発から既に2時間は経過してしまっていた・・・しかも、そこから合流地点まで1時間はかかってしまう。気持ちだけがゲオルク達を焦らせる。

ゲオルク達は焦る気持ちをおさえて駆けていく。
ディオゴにガザミが裏切り者として拘束されて居るとも知らずに・・・ そして、ガザミがオーベルハウザーに陵辱されていることも知らずに・・・
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