ゲオルクとディオゴの対談には双方の副官が同席していた。ゲオルク側はガザミの代理人であるクルトガとアナサスが、ディオゴ側にはヌメロ、ノースハウザーといった具合である。
協議の進行に混乱をきたすことを防ぐべく、副官の口出しはせぬ取り決めが交わされていた。
だが、双方は一向に頭を下げるつもりも 謝罪の言葉も口に出さなかった。
ディオゴにも言い分があった。
「ガザミが陵辱されたことは気の毒だ。だから、オーベルハウザーをブッ殺した件についてはこちらも咎めるつもりァ更々無ェ・・・だが、こっちはクレメンザを殺られてるんだ。 他ならぬアンタにな。それに対しては何で埋め合わせるつもりだ?」
「仲間を助ける故の正当防衛といってもらおうか・・・」
先ほど自分が口にした正当防衛という言葉を返され、ディオゴは激昂しそうになったがそれでは相手の思うツボである。ヌメロとノースハウザーの視線を感じ、ディオゴは堪えた。
だが その隙を突こうとゲオルクが攻める。
「それより、貴様。ガザミが辱めを受けたことを少しも堪えておらぬようだな・・・気の毒だと?
よくもそんな軽々しく口に出来たものだ・・・」
聖人君主と数多くの書物で記されているゲオルクは滅多なことでは怒らない、その性格が故に交渉事や喧嘩の仲裁では重宝されることが多かった。
陣地内では兵士同士ストレスも溜まるし、トラブルも多い。だからこそ、今回の件でもゲオルクは比較的冷静でいるかと思われていた。だからこそ、クルトガやアナサスも内心は驚いていた。
ガザミの件でディオゴに対して激怒した自分達をゲオルクが冷静になれと諭す展開を彼等自身予想していた。だが、蓋を開けてみれば予想外の展開であった。今にもディオゴに向かい、斬ってかかりかねない表情のゲオルクをクルトガとアナサスが冷や冷やしながら見つめている状況だ。
貴様と言われ、冷静を保っていたディオゴも我慢袋の緒が切れた。
「貴様とは何だ!!元はと言やぁ、てめェが俺を謀ったのが発端だろォおが!!」
ディオゴは耐え切れず激怒した。ここぞとばかりにゲオルクは責め立てる。完全にゲオルクのペースに呑まれている。
「私の怒りが理解出来ぬか・・・戦場において女子供を陵辱する輩は猿畜生以下の下衆である。そのような輩と同じ次元に貴様は堕ちた・・・その輩に愛する者を傷付けられた筈の貴様がな・・・私はそれが一番許せぬ。貴様は愛する妹を陵辱されて激しく嘆き悲しんだ筈だ。だから、分かってくれると思っていた・・・実に失望した。貴様が猿畜生だったと実感することにな。」
自分の過去を鑑みたゲオルクの言葉には同意できることもあったのか、ディオゴは思わず怯みそうになった。だが、それが逆に怒り狂ったディオゴを冷静にさせる間を与えた。よくよく考えるとこんなことになったのも自分を謀ったゲオルクのせいだと思うと激しい怒りがこみ上げてくる。
だからこそ、冷静を保たねば・・・ディオゴは再び緒の切れた我慢袋を縫い直しに掛かった。
「失望しただと・・・散々言ってくれやがって。
俺が猿畜生以下なら てめェは腐ったゴキブリ野郎だ。 元はと言やぁ、てめェが俺を謀ったのが理由だろうが。俺の復讐仇に袖の下を通ェして てめェは甘い汁を吸ってたってわけだろォが・・・・・・まるで蓋をしたドブの溝でコソコソと動き回るゴキブリそのものだぜ。 敵を騙すならまだしも てめェは味方を騙して平気で開き直るクズだ。おまけに こっちの部下を殺しておいて 何の詫びも無ェときた。 」
自分の落ち度を鑑みたディオゴの言葉には思わず、ゲオルクも思わず怯んだ。ゲオルクがディオゴに打ち明けなかった理由は何も甘い汁を吸うためではない。先述したハイランド存亡の危機以外にも理由は2つあった。
その1つ、仮に正直にディオゴに打ち明けたとして果たしてディオゴは聞き分けてくれたのだろうか。亡き妹を想っては咽び泣き、夜毎疲れ果てて眠れるまで自慰に耽り、現実逃避に麻薬と酒とポッポさんに溺れる・・・手首にはいくつもの痛々しい切り傷が刻まれていくのを誰もが分かっていた。そんなディオゴに正直に打ち明けたところで聞き分けないだろうと誰もが理解するだろう。図星である。だが、それはディオゴの自尊心を著しく傷付けることになるだろう。 ディオゴがそんな図星のことを言われたら 激しい自己嫌悪に陥ることは目に見えていた。
2つは、そんな精神状態のディオゴを軍務に当たれせてしまった罪悪感である。 周りがディオゴを気を引きたいだけの暴力的な基地外と見限っていく中、ゲオルクだけはそんなディオゴを哀れと想い、寛大な心で許していた。 ディオゴも時折人目につかぬところでゲオルクに救いを求め、よく相談をしてくれていた。その分ディオゴは熱心に働いてくれていた。だが、その全ては彼が復讐仇と憎むセキーネの資金あってのものだった。
心をすり減らして働いてきたその全てが復讐仇の手を借りて成り立ってきたを知ってディオゴが果たして立ち直れるだろうか?
だがその気遣いがディオゴを謀り、著しく彼を傷付ける結果となってしまった。故にゲオルクは当初としては自身の落ち度を詫びるつもりでいた。だが、それはガザミへの詫びの気持ちあっての物種である。
「何はともあれ、貴様がガザミに対して謝罪する気がなければ 此方も頭を下げる気にはならんな。」
「上等だぜ、てめェが頭ァ下げるまでこっちも絶対ェに頭は下げねェ。」
両者の意地の張り合いである。
男として両者も意地がある、最早先に詫びるつもりなど毛頭無い。
結果として決議は平行線のまま、打ち切りとなった。ディオゴは陣地内に割り当てられた部屋へと戻ると椅子に座り込んだ。
(・・・ガザミの姉御・・・まさかレイプされていたなんて・・・)
ディオゴはゲオルクの追撃部隊に連れ戻されたある日を思い出していた。ガザミが陵辱されたことを聞きショックを受けたのは事実だ。拷問したことについては妥当だと思ってはいたが、それでも心は痛んでいた。まさか自分の不在間に辱めを受けたとは思っても見なかった。
「ぅぐっ・・・ああ~~ッ!!」
拘束された部屋でディオゴの耳に ガザミの悲痛な呻き声が飛び込んできた。どうしたのかと見張り役としてその場にいたアナサスから事情を聞き、ディオゴは更にショックを受けた。辱めを受けた際にガザミは相手の子を身ごもり、襲い来る陣痛とつわりで苦しんでいたのだと。ガザミは蟹人族であり、同時に魚人族に属する。魚人族は受精から2~3日で出産する早産種である。ガザミは4つの卵を産み落とした。両手の手のひらに収まるサイズの赤い膜に覆われた卵である。苦しみの悲鳴をあげながら、ガザミが産み落とした卵をディオゴは覗き見た。 そのまがまがしさにディオゴは思わず嘔吐した。あの状況を思い出し、椅子に腰掛けながらディオゴはチャックを開き、ペニスを露出させた。まるでマグマのようにドクドクと我慢汁が溢れたペニスは今にも噴火を求めるかのように苦しそうにクナワナと震えている。黒兎人族ということをヌキにしても、ディオゴのペニスはデカい。
「はぁっ・・・あっ・・・あっ・・・」
右手と男を机の上に置いてうっぷし、ディオゴはそのペニスを左手で握り締める。
そう、ガザミを想いながら・・・
ガザミが陵辱されたことを聞いて罪悪感と同時に湧き上がってきたのは、彼女に対する背徳的欲情だった。ディオゴは、犬歯と上顎の前歯を剥き出しにして唇を噛み締め、妄想の中でガザミを犯す自慰に耽る。
「うっ・・・うッ!!! ぁッ・・・・・・あッ・・・っ・・・・・・あッ・・・ ぁッ・・・・・・・・!!!」
ブルブルと震え、陵辱されたガザミを想い、ディオゴはオーガズムに違っした。金玉袋のザーメンというザーメンをを一滴も残さずガザミの膣の中へと流し込むのを思い浮かべ 腹を脈打たせ果てた。イク寸前に咄嗟に左手の中にザーメンをブチまけたせいで、指と指の間から シチューのようにドロドロとしたザーメンがボタボタと地面に落ちる。
「はぁっ・・はぁっ・・・はぁっ」
顔を赤らめ、手のひらのザーメンを地面にボタボタと落とすのを見つめながらディオゴはレイプされたガザミをオカズにして果てたことを実感し自己嫌悪に浸った。
(・・・俺はどうしようもないケダモノだ・・・愛した妺までも オカズにした挙げ句・・・ 姉御の不幸までオカズにする・・・どうしようもないケダモノだ。)
ディオゴは目を閉じ、自分を恥じた。だが、それに追い討ちをかけるかのように 現れたのは
かつて妹をレイプしたアーネストだった。
「おまえも俺も同じ穴の狢だ、ようやくその意味が分かったようだな。」
「黙れ」
「いや、それは違ったな・・・おまえは愛した女が傷付き、涙を流し、苦しむ姿に愛を感じる男だ。
不幸な女に愛を感じ、惚れてしまう男だ・・・」
「黙れ」
「考えてもみろ、モニークをオカズに自慰に耽っていた時・・・彼女はどんな表情をしていた? 」
アーネストの言葉でディオゴはハッと気付いてしまった。自慰に夢中で気付いて・・・いや、気付かない振りをしていただけだった。
妄想の中でディオゴはただひたすらモニークを犯し尽くしたことを。我慢汁とザーメンがシチューのように零れ、いきり立った己がペニスを何度無理やり彼女のロの中に放り込んだか・・・無理やりフェラチオを強要されるモニークの頭を鷲掴みにし、何度果てたか分からない。 挙げ句の果てには、モニークを後ろから襲い滅多刺しにする勢いで何度もペニスに突き立て何度果てたか分からない。
モニークに向き合い、思いっ切り股を押し広げ腰がくの字に曲がるまで彼女をひっくり返す勢いで襲い、何度滅多刺しにしたか分からない。
そんなことをされていたモニークが果たして
喜びの表情をしていたのか?
断じて違うと言わざるを得ないだろう。
「!!!!」
ディオゴの目にモニークの苦しむ顔がフラッシュバックした。フェラチオを強要され、苦しそうに涙を流す表情・・・目に一杯の涙を浮かべ、救いの眼差しを浮かべるモニーク・・・鏡の前で彼女を後ろから犯し、泣き叫び、苦しそうにしながら、鏡ごしに実兄の自分を見つめる悲痛の表情、くの字に身体を畳まれながら目を半開らきにして自分を見つめるモニーク・・・そして、それと同時にフラッシュバックするガザミの姿・・・モニークとは違い、激しい憎悪に満ちた目で自分を見つめるガザミの表情。
「うっ・・・ぅぅっ・・・・・・最低のド畜生が・・・・・・」
ディオゴは机にうっぷしながら、自身の存在に恥辱を覚え、泣いた。
自分はアーネストと・・・オーベルハウザーと何ら変わりはしないのだと。