思えば私には心残りがあった。
余命短いと悟ってから、気付くとは・・・だが、今更悔やんだところで時計の針は元には戻らない。
今は針が私の逝く道を照らすその時まで、私は語るべき言葉を綴ろう。彼等の人生を、生きてきた全てを
忘却の彼方へと置き去りにすることは出来ない。
今こそ語ろう、黒い兎人達の哀しい歴史の始まりを。
~プロローグ~
精霊による魔力と、機械と電気というエネルギーが同居するこの世界ニーテリア。
その3大国家の一つアルフヘイム、人と獣とのハーフである亜人達と、エルフが暮らす自然豊かなこの国の北部に兎と人のハーフの亜人達が暮らしていた。彼等は兎人族と呼ばれ、このアルフヘイムでは人口第二位の亜人 である。兎人族を更に細かく分類すると2種類の民族に分かれる。
白兎人族と黒兎人族だ。
白兎人族は白兎と白人のハーフウサギを発祥とする亜人で、白色の肌に、白色や銀色の髪、長い前歯、頭部から生える2つの長耳が特徴である。3000年(諸説あり)の歴史を誇るピーターシルヴァンニアン王朝の君主である国王とその王族による統治の下、聖地ブロスナンを首都とし暮らしている。
黒兎人族は、当初は白兎人族と黒人とのハーフウサギがコウモリ族と交わったことで誕生した亜人である。
褐色の肌に、茶色や黒色の髪、犬歯や八重歯が変化した牙、そして頭部から生える4つの長い兎耳と、2つの人耳の計6つの耳を持つのが特徴である。〔基本的に白兎人族は兎面と人間面の2種類に分かれているのだが、黒兎人族は兎面、人間面、蝙蝠面の3種類に分かれている。詳細を
記述し切れない程の複雑な遺伝子構造を持つため、先に記述した情報とやや異なる外見をした者もいることをここに記しておく]
その複雑な経緯を経た出生により、
白兎人族からは雑種、吸血鬼の使い魔、ヴァンパイアと迫害されてきた哀しい歴史がある。
その歴史は今でも尾を引いており、
黒兎人族は白兎人族の王朝が定める自治区でしか居住することを認められていなかった。自治区では常に白兎人族の駐在軍(以下白兎軍とする)が、反乱を企んでいないか目を光らせている。
これは、そんな自治区の一つ
コルレオーネ村で暮らす黒兎人族の男女の物語・・・