甲皇国空軍に所属する飛行船。戦争中、無差別爆撃でアルフヘイム中の都市を焼き払った。別名「スカイフォートレス」(空の要塞)。
甲皇国空軍指揮官ゼット伯爵の空中艦隊ドクトリンに基づいてアルフヘイム戦争中に設計されたZB-17級から連なる重武装戦闘飛行船シリーズの完成形とされる。数十年をかけて開発・建造されたこの一連の戦闘飛行船群は、アルフヘイム軍の防御を高高度から突破して敵の都市を直接爆撃し、敵国を一挙に降伏に追い込むことを主眼としており、一回の戦闘のみならず一国の戦略に影響を与えるものとして「戦略飛行船」の名を冠されている。強化された浮力嚢と長大な船体によって大量の爆弾を搭載できる浮力を持つだけでなく、高高度を高速で飛行できる巨大なプロペラや羽ばたき翼を備え、さらに多数の対空砲や、高性能爆撃照準器を装備していた。
70年にわたるアルフヘイム戦争のさなか、大量のクラスター火炎弾や建造物破壊用重爆弾、汎用炸裂弾等をアルフヘイム大陸全土の都市に投下して大火災を引き起こし、さらに物資の輸送を阻止するため運河や港に浮遊式爆弾石を投下するのにも使用され、アルフヘイムのみならずスーパーハローワーク商業連合をも物資不足に陥らせた。だが、当初の目的であったアルフヘイムの早期降伏は達成されなかった。大口径装甲貫徹爆弾(通称ケーブバスター(洞窟崩し))にさえ耐える強力な魔法によって堅固に防御された王宮や要塞都市は被害を免れ、甲皇国と異なり工業化されていないためにその破壊によって継戦能力を失うような産業や交通の中心地も存在せず、各部族に束ねられたアルフヘイム民はパニックに陥って逃げだすこともなく破壊された都市もすぐに復興し、いたずらに反甲皇国感情を広めたのみで終わったからである。しかし、数年にわたる一連の爆撃作戦でアルフヘイムの人口は減少し、生活環境は百年前の水準に落ちたとされる。これによってアルフヘイム戦争の当初の数十年間、海空において組織だった防戦を行ったアルフヘイム正規軍は兵站の基盤を失って弱体化し、爆撃に続く甲皇国陸軍による本格的な侵攻に対応しきれなかった一因になった。
一方で甲皇国空軍側の損害も少なくなく、アルフヘイム空軍による迎撃や、空中・地上からの魔法攻撃により多数が撃墜・損傷、全乗組員の半数が死傷し、その平均寿命は数週間とも言われた。アルフヘイム本土への侵攻後も、低空で地上部隊の支援を行う際に多数が撃墜され、さらに和平後の協定で保有数が削減されたことにより、甲皇国空軍空中艦隊は実質的に崩壊した。しかし甲皇国本土には未だに一都市を壊滅しうる数の戦略飛行船が残っており、状況によってはミシュガルドに対しても爆撃を行える状態にあると言われている。