五年前の夏、僕の姉は消えた
姉が消えた日、僕は家出した
理由は母との些細な親子ゲンカだったが家出した僕の味方を姉はしてくれていた
家から歩いて10分ちょっとの近所の神社
そこは姉と僕の秘密基地だった
家出をし秘密基地に逃げ込んだ僕に姉はお菓子を差し入れてくれた
「お母さんもう怒ってないから暗くなる前に帰ってきなよ、お姉ちゃん先に帰るからね」
姉が帰り、差し入れてくれたお菓子を食べ終わった頃僕は家に戻った
僕より先に帰ったはずの姉はまだ帰っておらず、そしてそのまま帰ることは無かった
姉が消えてから五年が経ち、僕は中学二年生になった
消えた姉と同じ学年に上がってしまった
僕は今日も無気力に過ごしている
クラスメイトのように部活動をする訳でもなく塾に通い勉学に励む訳でもなく
只々、毎日を過ごしていた
「亮太、転校生見た?」
机に突っ伏して寝たフリをしていた僕に明るく話しかけてきたこの男は鈴村 勇人【すずむら はやと】だ
僕の小学校からの友達の一人だ
「転校生?ウチのクラスか」
「違う違う、隣の三組」
「じゃあ関係ないじゃないか」
「おま、転校生だぞ!?」
「何に興奮してるんだよ、転校生なんて大体前の学校でイジメられて引っ越してきた根暗な奴だろう」
「あー、ありそうだなソレ」
会ったこともない転校生に失礼なことを言ってしまった
「まぁいつか出くわすだろ」
「そうだなーまた今度でいいかぁ」
転校生が来たくらいでテンションは上がらない
五年も姉の事を引きずる自分という人間こそ根暗なのだ
そしてなんとなく時が過ぎ、放課後になった
「帰りにゲーセン寄ってこうぜ」
「おう、今日もダルシムが火を噴くぜ」
帰宅部に所属する僕と勇人は下駄箱に向かった
僕らと同じ様に帰宅する生徒の中に彼女はいた
淀川 鈴子【よどがわ すずこ】
黒々と肩まで伸びた髪から覗く瞳は髪より深く黒い
これから僕は彼女と関わることで姉との再会を果たすことになった