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ヤング・サツバツ世界

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【雑誌名】ヤングVIP
【作品名】サツバツ世界
【作者名】攻守性カナト
【作品URL】http://satsubatsusekai.sakura.ne.jp/index.html







【1年ぶり】
 「ブラックジャックによろしく」の佐藤秀峰先生も絶賛していて、ますますWEB漫画界でもトップクラスを争う注目作になったんじゃないだろうか。
 私も今の新都社連載漫画では1、2を争うぐらい大好きだ。
 本作も1年前の感想企画の時に書いたが、やはり各話感想を書いてしまっていて相当長くなってしまった。
 今回は要点を挙げていきたい。
 全体的には相変わらず安定しているし、独特のテンポのコマ割りなども素晴らしいの一言。
 台詞が一切ないケンとカナのバトルなど圧巻だった。ああやって贅沢にページを使った表現はWEB漫画ならではだ。
 タケシ編でスラムの様子がしっかり描かれたこともあり、いっそう独自のSF世界が身近に感じられるようになった。
 まるで本当に地表面積の大部分がウミに沈んだ「サツバツ世界」があって、攻守性カナト先生はそれを見てきたかのよう。
 ただ、色んな要素がある作品なので、感想を書くのが難しくはある。

 >ジャンル:SF40%、ファンタジー20%、アクション10%、グロ10%、他20%予定。
 
 と、攻守性カナト先生はジャンルを定義づけていた。
 これまで見せてくれたロクロ・ケン・ハナ・Gを主軸とした話では、確かにその通りの配分だったと思う。
 でも「他20%」というのが何なのだろうと思っていたが…。
 それが現在のタケシ編ではないかなと。
 (激寒ダジャレじゃなかったのか!)


【タケシ編が面白い】
 本筋が実に気になるところで終わっているが、今やっているタケシ編が今までにない雰囲気で実に面白い。
 公衆の面前で脱糞したばかりに、恵まれた生活から一転追われる犯罪者となったタケシ。
 もうその粗筋を書いた字面だけで破壊力あるよね。(笑)
 タケシ視点での青都市スラム生活が描かれることになるが、彼のキャラクターは親しみやすくてとても良いと思う。
 今まで本筋に出ていたロクロ・ケン・ハナ・Gは、4人とも現実の読者からするとかなり遠い存在というか、超人的すぎて、現実離れしたところがあった。
 序盤のG視点・その後のハナ視点は、それぞれの感情も伝わってきたので感情移入もしやすかった。
 が、4人が揃ってからは、Gは内心を見せてくれなくなり、ロクロやケンも元々感情を見せないキャラだ。ハナは世間知らずキャラだからロクロから色々と教えられて読者の目になってくれているが…。
 今や、本筋のストーリーはかなり大所高所に立ったものになってきている。
 ゆえにタケシ視点は、本筋がカバーしきれない小市民的なところを補ってくれている。
 タケシというキャラは、情けなく、小心者で、下劣で、器がとても小さい。
 ハナを思い出して朝勃ちしてたり、写真に精液ぶっかけたりと、実にゲスい。
 でもその分、より等身大の読者に近い存在で、気楽に見ていられるし感情移入もしやすい。
 読者は別にこのろくでなしが生きようが死のうがどっちでもいいしね。
 今までとは違った視点で、青都市スラム生活というものが見られ、新鮮な気分。
 奴隷市場のラインナップが異常に充実しているのがなんとも「サツバツ世界」らしい。
 スラムといっても案外快適そうであり、そこで暮らしてみたいと思わせてくれる。
 独自の世界観をしっかりと確立させているのはさすがだ。
 あとはこれまでの裕福な生活から離れ、スラムでの生活を余儀なくされたタケシがどう変わっていくのかにも注目したい。
 奴隷のヌイと出会い、人のぬくもりやら知って改心するのだろうか?(いや、望み薄だ)
 ヌイは恐らく何かの疾患を抱えているようだし、不幸な結末を感じさせるが、とても健気で幸せになって欲しいと思わせてくれる。
 ハナとGに対し、タケシとヌイが少し被る。
 Gに執着するハナと、忠実なロボットに執着するタケシって、実は似たもの同士のような…。
 ハナとは読者からの同情が段違いだが、「すべてを失ったが、アンドロイドとの絆を求める」という部分だけは同じである。
 ヌイもあのアンドロイド以上の忠実ぶりはGに似ている。
 完全に犬小屋みたいなところに入れられて奴隷食を餌のように与えられつつも、実に幸せそうに食べるヌイの姿に「飼いたい…」とアブナイ感想を抱いてしまう。
 あんなに可愛いヌイだけど…疾患があって余命長くなさそうだし、ヌイの脳みそだけ使い、忠実なアンドロイドを作っちゃうのだろうか?
 タケシならやっちゃいそうだ。


【現実とリンクすると…】
 気になるところと言えば、我々の現実世界と微妙にリンクしているあたり。
 七夕や日本語での激寒ダジャレがある時点で、我々の現実世界の「近未来」と示唆されているが…。
 七夕は「伝統文化」として残されている様子は微笑ましい限りだった。
 しかし、ツイッター?ニコニコ動画?youtube?らしきものまで出てきた。
 SFやファンタジー世界を描いていて、ちょっと現実世界に近い描写が出てくると醒めちゃうところがある。
 例えば、中世ヨーロッパ風ファンタジー世界に蛇口をひねれば水が出てくる水道など雰囲気ぶち壊しである。
 手塚治虫漫画でもアトムに黒電話が出てきたりしていたが、漫画の神様ですらスマホなんて想像できなかった訳だ。
 その点、本作では「現代的なもの」が出てきても、出し方が「サツバツ世界」らしくて、そこまで気にはならない。
 ただ、近未来に世界崩壊して、ツイッターやyoutubeがなお残っていたとしても、まったく違った形になっててもおかしくはないと思う。
 最近のアニメや漫画でもツイッターが出てくるのを見かけたりするが、どうも現実にあるツイッターそのままの姿でつまらない。
 RTを「言い散らす」に置き換えられている本作は良いセンスをしていると思うが、もう少しぶっ飛んだ発想のツイッターやyoutubeを見せて欲しかった。
 名作だと思うので要求水準が高くなってしまうが、気になったのはそれぐらいだ。
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