【雑誌】少年VIP
【作品タイトル】異人の「ま」
【作者名】木曜の「ま」
【作品URL】http://izinnoma.web.fc2.com/index.html
【とっつきやすい短編集】
木曜の「ま」先生の短編集。
最近完結した「黒鉄城」でご存知の方も多い作家さんだろうが、知らない方は長編の「黒鉄城」よりこの短編集から入ると良いかもしれない。
作家のテイストが良く出ている作品ばかりである。
即ち、ホラー×SF×昭和。
読切作品もあれば、長編の第1話的な内容のもの、テストパイロット版のような内容のものもある。
中でも特に読みやすくて個人的におすすめなのが以下の四作。
#1.ブラックバーゲン
#3.宙の女
#4.鉄神オーパート
#8.モスマン
【ホラーテイスト】
ホラーテイスト。多くの短編で見られる要素で、これがとても良い味を出している。
「ブラックバーゲン」で主人公が倒してきた敵が主人公と同じ顔をしていたり…。
「鉄神オーパート」で主人公が振り返ると謎の怪人が研究者たちを皆殺しにしていたり…。
「モスマン」の最後で「私たちが…何に見える?」と異形の姿で語りかけてきたり…。
全ての作品がそうではないが、結構な頻度でホラーテイスト、そして残虐な描写が入ってくる。
パンチやキックで敵の体がバラバラに引き裂かれたりもする。
顔の皮がはがれてドロドロとなったり、死んだ恋人が自分の再生のための材料とされたり、モスマンを食べたりする。
コマ割りや演出が効果的なのか、そうした話の見せ方がとても上手で、ぐっと話に引き込まれる。
題材こそ少年漫画的なものが多いが、一方で陰鬱でシリアスな世界観は実に私好みである。
【SF的ストーリー】
「黒鉄城」はマジンガーZを、「ブラックバーゲン」は仮面ライダーを彷彿とさせる。
「鉄神オーパート」もスーパーロボットを発掘というあたりがどこかで見た設定。
「宙の女」も世にも不思議な物語とかアウターゾーンを見ている気分だった。
まったく新しい概念のSFを作るのは難しいだろうし、そこは仕方ないかなと。
話の筋にそこまで驚かされることはない。
逆に時代劇のようにテンプレート的で安心感があるというぐらい。
なので、モスマン食いは良い意味で驚かされた。
総じて、分かりすくてとっつきやすい話が多い。
自分が好きで描きたいものを描いているんだな、というのが良く伝わってくるので好印象。
【昭和な絵柄】
絵柄がちょっと古い。
昭和というか泥臭いというか。
オマージュ元の題材がすべて古い作品だし、敢えてそうしているのかもしれない。
だからか、題材に合った絵柄ということで好感が持てる。
これを今時の萌え絵や洗練された絵柄でされてもなぁ…ってなっていたと思う。
そして「黒鉄城」の初期などに比べると、ぐっと読みやすい絵柄になっている。
絵柄が古い人はそれで固定化されずっと成長が無い傾向があるように思うが、木曜の「ま」先生は成長著しい。
最新話の「エニグマ」だけ見ても画力の進化が留まるところを知らない。学天則の弓矢とか実に迫力があった。ロボットやクリーチャーのデザインも素晴らしい。
今後の活躍にも期待したいところだ。