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二十一歳になり、大人になり、女になった。大人になったから赤信号でも平気で渡るようになったし、お箸の持ち方も綺麗になり、ずっと煙草を吸う。大人になって出来たことはたったそれくらい。
大人になって出来なくなったことの方が両手の指に収まらないほどある。
電車に乗れなくなった。学校に行けなくなった。薬を飲まないと生きていけなくなった。人の目が怖くなった。誰かに見られていると思ってよく後ろを振り向くことが多くなった。薬を飲まないと眠れなくなった。薬を飲まないと普通になれなくなった。薬を飲まないと人前に出られなくなった、とか。
小学生の時、どんな大人を想像していたんだろう。
テレビに出てくる綺麗な女優さん?
近所の優しいお姉さん?
残念。どれにもなれなかった。テレビに出てくる綺麗な女優さんは薬無しで生きていけるし、近所の優しいお姉さんはきっともう知らないところに行っている。
そしたら私はなにになればいいのだろう?
私は私で。私は何にもなれなくて。私は惰性で生きていて。私は、私はこのまま死ぬのが正しいと思っている。何にもなれないなら首を吊れ。