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ベリアル 第八戦 その①

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 一瞬の間に魔導麗装を纏うと地面を蹴って宙に飛び出し、剣を一本生み出すとそれを握り締める。 時間をかけるつもりなど毛頭なかった、一瞬のうちにすべてを終わらせる気で動いた。
 敵少女はそんなアリスに対して自身も変身する。
 ピンク色のオーラ―を発生させるとそれで美しい色をした球体を生み出すとその中で麗装を顕現する。 一瞬の間の後、球体から現れた敵少女の姿は今までの魔法少女とは全く違うタイプの物だった
 フリフリがたくさんついたテレビの魔法少女の主人公が着るような麗装を着ている。 ピンク色で宝石こそたくさんついていないが、華やかで、アリスの物とは全く違うものだった。 手にする武器もレイピアのような剣だった。


 まさに魔法少女だ。


 また、敵少女の周辺には何かキラキラと眩い光を放つ小さい水晶のようなものがくるくると回っていた。 その総数は三つ。 いったい何の意味があるものなのか分からないが、それがより一層華やかさを増していた。
 敵少女は杖を構え光弾を大量に顕現する。
 アリスは周囲を見渡すと、辺りを確認する。 辺りには木々が茂っていた。 これなら簡単に敵少女を殺すことができる。 アリスはそう確信すると構えていた剣を思いっきり敵少女に向かって投げつける。
 「くらえぇ!!」
 「そんなもの!!」
 敵少女は負けずと顕現した光弾を放つと剣を撃ち落とそうとする。
 しかし、光弾が命中すると同時に剣が大爆発を起こした。 あらかじめ撃ち落とされることを予測して爆破能力を付与しておいたのだ。


 ドカンッ!!と空中で爆発音が響き爆煙の雲が出来上がる。
 「なーっ!!」
 敵少女はそれに視界を奪われ一瞬驚く。 アリスはその爆煙にまぎれて移動すると周囲に生えている木々の影に入り込む。 そして影中潜行の能力を顕現し姿を消す。
 すると煙が晴れた時、アリスの姿は敵少女には映らなくなっていた。
 「くそっ!! どこなの!!」
 敵少女が木々の影に入っていることが幸いした。
 アリスは魔力の結界を張り再び剣を顕現しつつ、影の中を走って移動すると敵少女の後ろに回り込む、足音もなければ気配も全て消せる。 こういう状況下ではこの能力は最強と言っても過言ではなかった。
 敵はあたりを警戒して辺りを見渡したりはするものの、アリスが消えたことには気づいていないようだった。


 無事、後ろに回り込んだアリスはその場で能力を解除する。
 するとあらかじめ張っていた魔力の結界がアリスと敵少女、そして周囲の空間を包み込む。 
 後ろからゾッとするような殺気を感じて敵少女は急いで振り向こうとする。
 しかし、手遅れだった。


 その直前にアリスは剣を振るうと範囲切断能力を顕現し、周囲の物ごと敵少女の腹部を切断した。 もし、絶対防御能力などがあったとしても、この切断で切れないものは何もない。 そう判断してこの能力を使用した攻撃だったが杞憂に終わったようだった。
 「ガハッ!!」
 「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!! 死ねぇ!!」


 半分だけになった敵少女はと血液をまき散らしつつも腕を振るい、剣をかざすと顕現しておいた残りの光弾すべてをアリスに向かって飛ばす。 最後のあがきなのだろうが、アリスにそんな攻撃は通用しない。
 剣を宙に放り出したアリスは両腕を上にあげ、連続で指を鳴らす。
 ガオンガオンという音が断続的に続き、次から次へと光弾が消失していく。 あっという間に残った光弾は空間ごと消し去られ、アリスの命中することはなかった。


 ところが、敵少女の本命はそれではなかった。
 敵少女は一つの光弾をこっそりアリスの後ろに回して飛ばしていたのだ。 さっきはなった光弾は全て目くらまし。 痛みと苦しみのあまり今にも飛んでしまいそうな意識を必死で繋ぎ留めつつ、光弾を操作する。
 しかしそれも失敗に終わる。
 宙に放り投げた剣、それには監視魔陣がかけられていた。 そのため、後ろから向かってくるたった一つの光弾にも気づいていた。
 アリスは目の前の全ての光弾を削除した後、重力干渉波を一気に発生させ高速で振り向くと、ちょうど目の前に説いてきた剣を掴みこむ。 そしてそれを拳銃型に変形すると光弾を装填。


 一瞬の間に狙いをつけると引き金を引き、光弾を発射、後ろから向かってきていた光弾を撃ち落とし爆破させる。
 「なーっ」
 「ハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!! 勝てるとでも思ってたのぉ!? 『そいつを押さえろ』」
 「――ッ!!]

 アリスは追い打ちをかけるように物質支配を使用して範囲切断で切り落とした二本の木を操作すると、上半身だけになった敵少女を抑え込んだ。 ほかに何か能力があったとしても逃げることはできない。
 地面にたたきつけられた衝撃でコロリとレイピアを手放してしまう。


 ゆっくりと歩み寄ると左手に拳銃を、右手に剣を生み出す。
 そして敵少女の顔面を見下しながら剣を掲げる。
 「これで!!! 勝った!!」
 「こんな……こんなのっ!!」
 「なぁにぃ? 遺言ぐらいなら聞いてあげるけどぉぉぉ?? ハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」
 「………たくない……」
 「……え?」


 あまりに予想外の言葉を聞いた気がした。
 そのため、アリスは正気に戻ると間抜けな声を上げてしまう。
 敵少女は悔し気に顔を歪め、腹の切断面から腸と思しき内臓をこぼしながらもう一度叫んだ。



 「私は!! 死にたくない!!!」
 「あ、そ」



 ザンッという心地のよい音が響く。
 アリスは何の躊躇もなく剣を振り下ろすと敵の首を切り落とした。 ゴロリと首の転がる音と、ブシャッと血の吹き出す音が聞こえてくる。 だが、アリスはそれを見ることなく背中を向けると死体から目を逸らす。



 あまりにも呆気なさ過ぎた。



 あまりにもつまらなすぎて拍子抜けしていたのだ。



 これがスパラグモスの最後なのか




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 そんなことをボーッと思っていると、クライシスが叫んだ。



 「アリス!! 危ない!!」
 「え―――ッ」




 グサッという音が胸から聞こえてくる。
 鋭い痛みが突然胸に生えたレイピアの切っ先と共にアリスを蝕む。 口に血の味が広がり、否応なしに端からこぼれていく。 ドクンドクンと心臓の脈打つ音がやけにうるさく耳元に響く。
 アリスは驚きのあまり目を見開くと、ぎこちなく首を後ろに回す。


 すると
 目の端に
 魔法少女の姿が映った。



 「私は、死にたくない」
 「…………ウガァッ!!」



 アリスは醜い叫びをあげて全身を無理に動かすと敵少女を振りほどく。 どうやらギリギリのところで急所は外したらしい。 実際、左肺の端、心臓ギリギリのところを敵少女のレイピアは貫いていた。
 敵少女はレイピアを抜くと、重力波を発生し後ろに飛ぶ。


 魔力を集中させ水をいやしたアリスは、それでも胸元を抑えつつ口から血を吐き出しつつ叫ぶ。
 「なんだぁ!! 死んだんじゃないのかぁ!!」
 「言ったでしよ、私は死にたくないの」
 「知るかぁ!!!」


 アリスは今度こそとどめを刺そうと、大剣を二本顕現すると地面を蹴って敵少女に向かって行く。 いったい何が起きたのか分からないが、今のアリスには猪突猛進する以外の選択肢はなかった。
 敵少女もレイピアを構えると迎え撃つ体勢をとる。
 そして、アリスに向かって喋りかけた。

 「ねぇ、あなたはどうして生きてるの?」
 「!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?」




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