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次回予告

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 「だ、誰か助けて!!!」
 一人の少女が路地裏で怯えている。
 さっきまで一人部活疲れの体を引きずって家に帰っている途中だった。 しかし、突然何かが現れて、少女の行く手をふさぐとそのまま追いかけてきたのだ。 その何かに少女は言葉にできない恐怖感を覚え、反射的に逃げ出した。
 そしてそのまま路地裏にまで逃げ込んだのだ。
 そこで、うっかり地面に捨てられていた缶を踏んでしまい、見事に転んでしまった。 起き上がろうとするものの、膝に鋭い痛みが走り、おまけに腕をついてしまい、うまいこと動かせなくなっていた。
 おまけに疲れも極限まで溜まっていた。
 逃げる元気もほとんどなくなってしまった。
 あとはただみすぼらしく助けを求めることしかできなかった。


 「助けて!! 誰か!!」


 当てもないのに叫び続ける。
 自分のことを追ってきているそれは名状しがたい形状をしていた、四つん這いになり、地面を這って進みながら八本の腕を交互に動かして高速で向かってくる。 何かは全身真っ黒で、路地裏の影に完全に溶け込んでいた。
 何かはまっすぐこちらにだけ狙いを定めていた。
 ヒタヒタヒタヒタと足音が響いてくる。 
 彼女は何かが放つ殺気に飲み込まれてしまいそうだった。 というか、もう生きている心地がしなかった。 何かは確実に自分の命を狙ってきている。 恐怖感がこれまでの人生で一番大きくなっていた。
 何かは腕を伸ばすと倒れこむ少女の足首をガシッと掴み込んだ。


 「ひぃっ!!」
 その手はやけに冷たく、死の感覚がした。
 もう助からないかもしれない。
 少女がそう思い、死の恐怖におびえ大きな声で叫ぶ。


 「キャーーーーーーーーーーッ!!!!!」


 何かがガバッと体を起こし、覆いかぶさろうとする。
 その腕がまっすぐ伸びて少女の首元を握りつぶそうとしてくる、


 次の瞬間


 ガン、ガンという銃声にも似た音が耳に響いてくる。
 それと同時に何かは「キシャ―ッ!!」という奇声を上げ逃げ出す。 何が起きたのか分からないが、自分の右足首を掴んでいた腕の力が抜けていくのが分かった。 それに覆いかぶさってきていた何かも離れていき、自由になる。
 少女が驚いた顔で離れていった何かを見る。
 するとその視界を遮るように別の何かがふわりと柔らかい着地して降りてくる。 そして、両手に握っていた長銃の先を何かに向けると、緊張を切らすことなくまっすぐ何かをにらみ続ける。
 どうやらその目の前に降り立ったなにかは人間のしかも自分と大して変わらない少女のように見えた、
 その少女は、きらびやかな、しかし、活動的なデザインをしたやけにフリフリの服を着ていた。  彼女の両手に持つ銃は今まで見たどんなものとも形が違い、やけに装飾が施されていた。
 そして何度か引き金を引き牽制とでも言わんばかりに弾を放ち、黒い何かを撃ち抜いていく。


 その間、その少女は優しい声で怯える少女に話しかける。
 「大丈夫?」
 「は、はい……」
 「ちょっと待ってね、すぐに終わらせるから」
 「え?」


 突然現れた謎の少女の呟きに目を丸くしてしまう。
 その時、また違う少女が現れる。 さっきと同じように上から降ってると、瞬く間に黒い何かに接近すると、手にしていた剣を振るい、右腕を数本切り裂いた。 目にもとまらぬ早業にただただ驚くことしかできない。
 しかし、黒い何かもただやられっぱなしという訳ではなかった。
 「キィィィィィィィ」という不気味な声で鳴いた後、残った左腕を長く伸ばすと、高速で動く少女に向けて伸ばした。 その先は鋭利なかぎづめのようになっており、それで少女を切り裂くつもりらしかった。
 それを見て咄嗟に叫んでしまう。


 「危ない!!!」
 「大丈夫よ、もう一人いるもの」
 「え?」


 その言葉に偽りはなかった。
 今にもかぎづめが少女を切り裂こうとするその瞬間、また別に誰かが現れると後ろから黒い何かに向けて攻撃をしかける。 振りかぶった両手には大きなハンマーのようなものがしっかりと握られていた。
 そして狙いを合わせると何の躊躇もなくそれを振り下ろし、黒い何かの脳天を潰す。


 「喰らいやがれぇぇぇぇ!!!」
 「キヒィィィィィィィ!!!!」


 ぐちゃりと言う嫌な音がして、黒い何かの頭部が半分潰れる。
 その後、「ギヒィィィ」などと断末魔の悲鳴にも似た何かを発していた何かだが、やがて力尽きたかのように地面に倒れ込んで、ピクリとも動かなくなった。 数秒後には体がゆっくり消失していく様子も見られた。
 突然現れ、逃げていた少女を助けた三人組は「やったわね」とか「いぇーい」とか「大金星」とか言いながらハイタッチをかわしている。 すごい親しい間柄のようで、水を差すのを一瞬ためらったが、少女は口を開いた。


 「あ、あの………」
 「あら、忘れてたわ。 ごめんなさいね、それでいったい何かしら?」


 最初に助けてくれた少女がそういう。
 少女は勇気を出して口を開くと、質問を飛ばす。



 「あなたたちは、誰ですか?」
 「私たち? ……そうね、私たちは……………」



 たっぷりと間を置いた後、こう言った。



 「魔法少女よ」








 魔法少女アリヤ The Fallen

 Coming soon

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