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ライラ

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 関遥香の人生は空虚なものだった。
 

まず、彼女は母親の愛を知らずに育った。 物心つく間に母親は死んでいた。 なので、遥香は必然的に父親とともに生活することとなった。 それでも父親は新しい恋や仕事が忙しく、遥香にはあまりかまってやれなかった。
 そのため、遥香は一人で暮らすことが多かった。 そのためか、暗く、本を読むのが好きな典型的なぼっちへと育っていった。 そんな遥香に友達ができるはずもなく、学校に通うようになってから彼女が一人で過ごす時間は長くなっていた。
 遥香はそれで良かった。


 一人でも生きていけるのだと、一人でも楽しめるのだと思っていた。
 思っていた?

 否、そう思い込んでいた。
 そう思い込んでたった一人に寂しさから目を逸らしていたのだ。
そんな彼女が自分の心に気が付くまであまり時間はかからなかった。
 

ある日の夜、遥香は酔った父の世話をしていた。 その頃から彼女は父親を血縁ではなくただの物として見ていた。 家に来るだけの他人、自分を世話してくれるだけの他人だと、そう考えていた。
 空になったビール瓶を片付け、コップを洗う。
 半分眠った父親にタオルケットをかけてあげる。


 するとその時、父親が言った。
 「お前のかあさんはなー、お前の弟のせいで死んだんだ、知ってたか? 体の弱い人だったからな、弟を産むとき、弟と死んだんだ。 弟の名前は彼方って名づけるはずだったんだ。 知らないよなー」
 それを聞いたとき
 遥香は反射的に固まった。
 それは母親が死んだ理由に驚いたのではない。 それよりもっと衝撃的なことがあった。

 自分に
 弟がいた?

 その日から、遥香は夢想するようになった。
 もし、自分に弟がいたら
 もし、いたら
 


 どんな顔だったのだろう。
 どんな性格だったのだろう。
 どんな子供になっただろう。
 どんな生活になったのだろう。
 どんな楽しい人生になったのだろう。


 たぶん自分はこんな人間になっていなかっただろう。 母親がいてもそうだが、弟がいたらもっと劇的に変わっていただろう。 一緒に遊んでくれる、自分に頼ってくれる。 そんな存在が自分に身近にいたとしたら、だったら私は……私はっ!!!


 こんなのにならなかったんじゃないだろうか?

 遥香はそう思った。



 でも過ぎ去ったことはどうすることもできず、死んだ人が生き返ることもない。 自分に弟はおらず、母親もいない。 放任主義の父とひたすら一人で過ごすだけの自分がここにいるだけのことだ。
 その時、遥香は自分の心に気が付いた。
 それは自分の心境ではなかった。
 心の形だ。

 ぽっかりと穴が開いている。
 何にも埋めることのできないあまりにも大きく、手のつけようのない心の穴


 遥香はどうしても心の穴を埋めたくなった。
 しかし、埋めることができないことは重々承知していた。
 だからこそ、心の穴がより一層大きく感じた。







 ある日のこと遥香は父親に押し倒された。
 驚いたことには驚いた。 でも、そこまでびっくりするほどのことでもなかった。 何となくだが気が付いていた。 中学校に上がってすぐ、いや、上がる直前だっただろうか。 父親の視線に何となくいやらしいものを感じていた。
 それに、最近ストレスが溜まっていたらしい。
 相当イライラしていた。



 机の隣に押し倒される。 ドスンという衝撃が襲ってきて、背中に鈍い痛みが走る。 父親の荒い息が顔にかかる。 さっきまで酒を飲んでいたせいかすごく臭い。 顔をしかめるも頭に血が上っている父親は気が付かない。
 腕を伸ばし、遥香の着ているTシャツを無理矢理脱がせて来る。 すごく嫌な気分だったが特に抵抗する気にもなれなかったのでされるがままにする。 Tシャツは父親が部屋の隅に投げ捨てた。
 するとあまり大きいとは言えない乳房が露わになる。 セットで千円だった下着は、ホックを外すのが面倒だったのか前で引き千切られた。 小さな桜色をした乳首を見つけた父親は真っ先にそこに吸い付いてくる。
 まるで赤子が吸い付くように、時折少し強めに噛みながら。 あまり気持ちよくはない。 というかまだ違和感しかない。 父親は息を荒くしながらこちらの胸を揉んでくる。 するとちょっと快感を感じる。
 しかし、そこまでの物ではない。
 ちゅぱちゅぱとしばらくの間、吸い付くのを止めない。 やがて遥香は少し感じてくるようになり、「ん……」という甘い声を上げるようになる。 父親もそれを察すると余計に鼻息を荒くする。
 ふと気が付くと太ももに何かもっこりしたものと、ベルトの冷たい感触を感じた。 何となく、というか完全に嫌悪感を感じていた。 が、拒否する気はなかった。
 次に父親は自分の短パンに腕を突っ込んできた。 ただでさえゆるゆるだった腰のゴムが無理矢理腕を入れたせいで完全に伸びきってしまう。 そしてパンツの内側に指を滑り込ませると、陰部に指を突っ込む。
 「あ……」


 いきなりのことなので声が出てしまう。
 もちろん遥香だって自慰の経験はある。 が、当たり前のことに処女であるし、まだ陰毛だってそこまで生えていない。
 しばらくの間、特に何も感じなかった遥香だが、やがてクチュクチュいう音が聞こえ始める。 それに合わせて遥香の声も「んぅ……」とか熱を帯びたものになっていく。
 それに、父親は興奮が最高潮に達したらしい。 ズボンのベルトを外すと自分の陰棒を露出する。 すでに完全に勃起しているそれは、亀頭を天井にしっかりと向けていた。
 それを見て、遥香は少し驚く。 こんな大きいものが本当に入るのだろうか
 決して期待しているわけではない。 見れば見るほど不快感に襲われる。
 父親は引き裂かんばかりに短パンを脱がし、パンツも足に引っかける程度まで下ろすと、すぐに亀頭を陰部にあてがう。
 そして次の瞬間


 ズブリという音がして、陰棒が膣口に沈み込み、そのまま処女膜が引き裂かれた。
 「んあぁぁぁぁぁぁ!!」
 濡れてはいたが、挿入するのに完全とは言えなかった。 そのため、鋭い痛みが襲ってくる。 血が太ももを伝って行くのを感じる。 
 しばらく父親は腰を振り、陰棒で執拗に子宮口をついてくる。 そのたびそのたび遥香の口から甘い声が漏れていく。 心では何も感じていないが、体は否応に反応してしまう。 痛みはゆっくりと薄れていき、沈み込むような快感が全身を包みこむ。
 パンパンとたたきつけるような音がうるさい。
 「あっ!! あっ!! あっ!!」
 声が漏れてしまう。 嫌なのに声が漏れてしまう。


 ゴリッと亀頭が子宮口を突き上げるたびにどんどん快感に飲み込まれていく。
しばらくの間、父親は腰を振り続けたが、やがて限界が訪れる。
 ドピュッという音がしてドロリと何かが膣に吐き出される感触がする。 精液だ。 すごく気分の悪いものが下腹部にたまっていく。 どうやら溜まっていたらしく、しばらくの間射精が続く。 背筋をゾッとしたものが走り抜ける。 今までの気持ちよさがうそのようだった。
 

  結局、遥香は絶頂を向けることができなかった。
 また、危険日であることを父親に伝え忘れてしまった。
 一通り欲望を吐き出した父親は「ふぅ……」とため息をつき、賢者モードに入ったあと、どこかへと行った。
 陰部から少し精液を垂れ流しながら、遥香は天井を眺め続けた。 その後、疲れのあまり、遥香は眠ってしまった。



48, 47

  




 結論から言おう。
 遥香は妊娠した。 キットか何かで確認したわけではない。 感覚といって正しいのか、分からないが遥香はそれが分かった。 自分の子宮で卵子に精子が到達したのだ。 新しい命が生まれたのだ。


 遥香は一つ、決めた。
 この子の名前は彼方にしよう。
 死んだ弟が私に宿ったのだ。
 遥香は何か充実するものを感じた気がした。



 嘘だと言ってほしかった。
 遥香は絶望していた。 心の穴が際限なく広がっていく感じがする。 
 父親に言ったのだ。 自分が妊娠したことを



 そうしたら
 殴られた。 蹴られた。 激しく罵倒された。 押し倒されて、下腹部を集中的に踏みつけられた。 ゴッゴッという音がして、胃の中から何かがこみ上げてくるのを感じる。 実際、少し吐いた。
 父親は一通り遥香を痛みつけるとそのままどこかへ消えた。
 遥香はしばらくの間、床に倒れこんでいたが少し便意を感じた。
 なのでトイレに行った。


 すると、
 すると………



 うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!







 そんな時だ
 彼に会ったのは
 「ねぇ? 魔法少女にならない?」
 「…………」
 「もし君が敵に勝ったら、もう一度、彼方君と幸せになれるよ」
 「――ッ!!」
 「本当のことさ、君は幸せになれる」


 考えることなどなかった。
 遥香は一瞬の間もなく頷いた。


 「おめでとー、君は空虚の名を持つライラの天使を背負った魔法少女だ」

 前ならイラッと来ただろうが、今となってはどうでもいい。
 彼方と一緒に戦うだけだ。
 遥香はそう思った。




 胸に大穴が開いた。
 何となくだが、遥香は分かっていた。
 最後の力を振り絞ると、自分の腹を抱えるようにして動く。 あの少年が殺されたことはとても悲しかった。 子供に罪はない。 この女は誰でも容赦なく殺してしまう。 最低な人間だと思う。
 しかし、その最低女を止めることができなかった。
 

 それはとても悲しいことだった。
 遥香はふと思った。 このまま彼方と死ぬのも悪くない。 だが、疑問がふつふつと湧いてくるのを感じた。 
 この女は自分と彼方を殺してまで、何がしたいのだろうか
 最後の力を振り絞り、遥香は言い放った。


 「世界を滅ぼしたいんなら、好きにしたら?」



 一矢報いた気持ちになりながらも、遥香はふと思った。
 果たして、自分は何のために生まれてきたのだろうか?
 その疑問の答えが出てくる前に、遥香の首は落とされ
 すべては終わった。






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