徒歩五分。別府駅前の築5年、1Kアパートがたったの家賃五万。東京でこの条件で家探すと顔が青くなるような家賃だからなぁ、羨ましいなぁと感心しつつ備考欄の居住者共同の温泉付きの文字に首を傾げていた。別府駅周辺で昼飯を済ませ商店街を練り歩いていたぼくはいつもの癖で現地の賃貸事情をチェックしていた。そして周りを見渡すとシャッター、シャッター、やってるのかやっていのかわからないお土産屋さん。うん、時期が時期だから活気がない。おまけに雨が降ったりやんだりでとにかく蒸し暑い。あぁ、この汗を流したい。このまま宿へ直行しよう。
で、たどり着いたのは大分香りの博物館。別府大駅から宿まで歩こうと思ったら途中にあったので吸い込まれるように館内へ。朝のダッシュ、昼の練り歩きで更に汗臭い僕がここにくるのは必然だったのかもしれない。
内容としては結構な数の香水がコレクションされているのと香水や香りの歴史、香りにまつわる話をまとめているのと、アロマセラピーや香水作りを体験できるみたいで、ちらっとみた香水作りの体験コーナーはそこそこの人で埋まっていた。
目玉の香水これくしょんも、好きな人やマニアが来たら喜ぶんだろうなぁという感じで知識のない僕にはさっぱりでそれよりも香りにまつわる話とか原材料とかのほうが興味がそそられた。特に印象に残っているのは、香水の材料に獣が使われていること。
香水なんて、香草(ハーブ)となんかよくわからない化学物質からできてるんでしょ?というガバガバ知識だったのでまさか、まさかあんな一日中野山を駆けずり回ってる臭そうな奴らからあんないい匂いのするものが作られてるとは……
ビンがよっつありそれぞれ動物の毛とか骨が詰められていて(詳しい動物名は忘れた)匂いを嗅げるようになっていた。恐る恐るビンを開けて1つずつ匂いを嗅いでいく……臭い!!!(怒)
となんだかんだ満喫。おまけコーナーには漫画コーナーがあって(なんでマンガ?)と思っていたら、WEB漫画で有名なあの““裏サンデー””の漫画投稿企画に入賞した人が別府大学の生徒さんで、その絡みなのかなと。いやよくわからないけどさ。
一通り館内を見て回りさ~って目的地目指して歩くぞ!と思ったら思いっきり雨。甦る去年の記憶。財布の中に一万円しかお金が入っていないのに何故か歩きで琵琶湖を一周しようとした夏の記憶。残金残り三千円、これ以上使ったら夜行バスが発車する南草津まで電車でいけないという絶望の中、歩き初め三日目の朝に降った雨。心が折れて東京に帰ろうと決めたあの日。僕は一切の迷いもなく宿に電話をかけて送迎を依頼する。居場所を告げるとさすがの宿の人も驚きの声をあげたが、全然行けるということなので甘えさせて貰った。
送迎の車に乗り込み次の目的地へ向かう僕。だがまだ終わりじゃない。今までは全部前座だ。一日目のメインイベント鉄輪温泉地獄巡りがこれから始まるのだから……