【武装親衛隊】
※厳密に使用せず、創作の参考程度にお使いください。
戦時中、カデンツァによって創立された武装組織。皇族に属する親衛隊と同様に「親衛隊」の名を冠しているが全くの別組織である。
軍の大半が外征し、戦争が長引くと甲皇国内部にも厭戦の雰囲気が流れ始めた。これを取り締まる為に軍と政府は憲兵隊や秘密警察などを動員したが、しかし小規模な組織では限界があり、国内各地では取締り後も反戦活動が行われていた。
ただでさえ長く続く戦争である。継戦をするには国民の関心が必要であり、こういった反戦活動は皇国政府と軍にとっては常に目の上の瘤であった。
この取締りを行うべき編成されたのが武装親衛隊の前身である親衛隊「執行部」こと親衛隊特別行動隊および秩序保安警察である。
これの編成を命じたのは当時軍部を掌握していたユリウス皇太子であり、隊員は親衛隊から選抜からされた者……特に皇族への忠誠心が高い者が当てられた。
隊の長には当時既に秘密警察で実績を上げていたカデンツァが当てられ、彼女の統率の元に特別行動隊は国内各地の反戦活動を取り締まり、捕まった反戦派の人間は悉く強制収容所に送られるか処刑された。特別行動隊の取り締まりは徹底しており、捕縛者の中には反戦派と言われる乙家の者だけでなく、甲家の者も多く含まれ、また皇族も一名強制収容所に送られている(安否不明)。
この「活躍」のおかげで国内の反戦派は一掃され、国軍はその全力を戦争に向ける事が可能になったのであるが、しかし一つ大きな問題を残す事になってしまった。
それはカデンツァと特別行動隊そのものである。
特別行動隊長就任当時のカデンツァはまだ皇位継承という野心を表には出しておらず、ユリウスの「忠実な下僕」であり、そのためユリウスは彼女を特別行動隊の指揮官に当てたのであるが、特別行動隊という武力を得て反戦派と一緒に自分に敵対する勢力を一掃したカデンツァはその欲望と皇族に対する敵意を剥き出しにした。彼女を危険視していた皇族の一人が強制収容所に送られたのはまさにそんな時である。
そしてユリウスがカデンツァの暴走を止めようとした時には既に遅かった。彼女は「外征軍の後方支援のため」という名目で特別行動隊の勢力を拡大していき、時には出世や好待遇を餌に軍から人材を引き抜いて急速な勢いで膨らんでいた。
そして「ユリウスの忠実な下僕」であると他の皇族に認識されていたカデンツァの暴走は、主人であるユリウスが制御できるだろうという事で皇族たちも見過ごしていたのである。だがもはや忠実な下僕は忠犬ではなく狂犬へと変貌していた。
拡大した親衛隊特別行動隊は外征軍の後方支援を名目に戦地まで出て来ると、亜人に対して排他的であった国軍でさえ引くような野蛮な行動を各地で行い「移動虐殺部隊」という異名を持つまでに至った。
だがそれと矛盾するように特別行動隊は亜人に対して寛容であり、皇族に忠誠さえ誓えば亜人であっても迎え入れるという側面も持っていた。そのため皇軍初の「他国籍軍」という側面を持つ。
これはカデンツァの「皇族丙家、乙家でない者は人に非ず」という性質によるところが非常に大きい。彼女にとっては一般兵も亜人も大して差はなかったのである。それよりも彼女の関心は如何にして自分の勢力を拡大するかにあった。
亜人の迎合によってさらに拡充された特別行動隊はもはや軍であっても止める事は出来ず、遂に軍の一個軍団まで膨れ上がるとカデンツァは特別行動隊を「軍組織」に格上げする事を宣言。ここに「武装親衛隊」は誕生した。
元は親衛隊の一部隊であったものが分離し、巨大な別組織として独立した形だ。この時既に武装親衛隊は一個軍団の兵力を有していた事は述べた通りである。
以下、編成当時に有していた師団。
・第一武装親衛隊「髑髏(トーテンコープス)」装甲師団
特別行動隊時代より行動していた隊員を多く配置した武装親衛隊の精鋭部隊。武装および規模は国軍のソレに匹敵する。
・第二武装親衛隊「プリンセス・カデンツァ」装甲師団
カデンツァの近衛隊から選抜された兵士を中心に編成された実働隊。現在でもカデンツァの護衛にはこの師団から選抜された者が当たる。
・第三武装親衛隊「警察」装甲師団
秩序治安警察を主に編成された部隊。師団長は秩序保安警察時代から引き継いだファイサル。
・第四武装親衛隊「甲皇国英雄ガロン・リッタール記念」装甲擲弾兵師団
武装親衛隊になってから編成された完全に一からの師団。装備は第一、第二からすると大きく見劣りするが、それでも軍と同様の装備といって差し支えない装備を有している。規模はやや小さい。
・第五武装親衛隊「髑髏英雄」義勇兵師団
義勇兵として参加した亜人を中心に編成された師団。意外な事に武装親衛隊の各師団の中で一番の数を誇る。各級指揮官には親衛隊員を配し、そのうえ政治将校を派遣して亜人たちに徹底的な洗脳教育を施している。そのためカデンツァに対して狂信的な集団となっているが、半ば使い捨てのような扱いを受けているので装備は悪く、損害も常に大きかった。
・独立武装親衛隊「ライヒスフューラー」航空隊
ZB-29運用の為の航空部隊。空軍のような戦闘部隊ではなく、カデンツァの座乗艦「グラーフ・ツェッペリン」の運用のみを行う。護衛などの戦闘面ではあくまで空軍に依存する。
これら武装親衛隊の師団は精鋭であるだけでなく、狂信的故に任務の達成率も極めて高かったが反面、惰性で戦っている兵士の多い国軍とは非常に相性が悪く、いざこざを起こす事も多々あった。
この問題の為に軍上層部は武装親衛隊を「火消し部隊」として扱うようになっていった。武装親衛隊は名目上は軍の指揮下にあったので、勢力拡大を防ぐという意味でも武装親衛隊は常に激戦地に投入される事になり、そのためその損害は常に甚大であったが戦果は赫々たるものがある。
しかし「移動虐殺部隊」という特性は特別行動隊時代からそのまま引き継いでいた為に「彼らが通った道は全て焦土と化している」と言われるまでに徹底した破壊行為も繰り返しており、敵だけでなく味方からも忌避される存在であった。
またゲリラの多い地域では「三光作戦」と呼ばれる作戦が行われた。これは殺し尽くす、焼き尽くす、奪い尽くすという三本立ての作戦である。まさに武装親衛隊の本質を表している作戦であった。
そんな残虐極まりない武装親衛隊であるが、縮小は意外にも呆気ないものである。
亜骨大戦末期、アルフヘイムが禁断魔法を使うと魔法の影響下の中で一番影響の受けやすい場所に展開していた「甲皇国英雄ガロン・リッタール記念」装甲擲弾兵師団はほぼ消滅、近隣の「髑髏」装甲師団および「髑髏英雄」義勇兵師団も再編成不可能なほどに甚大な被害を受けた。
また本国に帰還していた為に「プリンセス・カデンツァ」装甲師団と「警察」装甲師団は被害を免れたが、この直後に行われた継戦クーデターに失敗した際に「政府に従わない危険思想集団」と認定されて両師団の半数以上が強制除隊を命ぜられた。くわえて停戦に伴う軍縮は戦闘組織である武装親衛隊にも命ぜられ、両師団は全盛期の三分の一以下の兵力になり、装備していた武装もそのほとんどがホロヴィス隷下の部隊に転用された。
こうして武装親衛隊の最盛期は終わりを告げたのである。
残った「プリンセス・カデンツァ」装甲師団改め歩兵師団と「警察」装甲師団、そして「髑髏」装甲師団と「髑髏英雄」義勇兵師団の生き残りはその一部を皇国に残し、現在はカデンツァと共にミシュガルドに上陸している。
つまり武装親衛隊の大半がミシュガルド上陸をしている事になるが、逆にいえばそれが可能になってしまうほど小規模な組織になってしまっているという事だ。
そして一度犯した過ちを二度繰り返すほどユリウスは間抜けではない。これからも武装親衛隊が増大していく事はないだろう。カデンツァもその事は理解しているらしく、現在では武力よりも乙家などに取り入って政治力での権力拡大を目指しているようだ。
そのため、先にも述べたとおり武装親衛隊が増大していく事はこれからないだろう。
まさしく「奢れる者も久しからず」という言葉を体現した組織であるといえる。