襲来
ある日、王国に一体の巨人が現れた。
彼は約七十コラル先にある壁を破り、その向こうにある魔族の住む国と王国の間に横たわる砂漠からやって来た。国の中心にある王宮に向かって真っ直ぐ道を進んだ。集まる騎兵隊を蹴散らして、一時も止まることはなかった。
巨人はこの地に伝わる伝説に出てくる『ゴリアテ』と呼ばれる怪物であることが分かった。
何千年も前、魔族も王国もなかった時代に突如出現して世界の全てを踏み潰し、焼き尽くしていった。斧や楯を持つ個体もおり、軍隊のように隊列を組んで蹂躙していったらしい。それらは世界の全てを平らにした後、どこへともなく消えていった。
その後、生き残った人々が王国を築き、同じようにどこからともなく現れた魔族が砂漠の向こうで国を作った。
この王国はずっとその魔族との闘いに明け暮れていた。
不気味な姿をした魔族たちはどういう訳か王国に攻撃を仕掛けてきていた。捕まえ、拷問をかけた結果、魔王とやらが支配しているらしく人間を奴隷にするために侵略をしているらしかった。
王国はその魔族に対するべく、古より伝わる聖剣を使う勇者を使った。
勇者は死ぬたびに交代し、やはり王国を守るために戦い続けた。
また魔族からの侵略を防ぐために壁を築いた。
ここ数十年は王国は平和だった。
その平和はゴリアテの手によって、終わることとなった。
そのゴリアテに対して、一人の少年が向かい合った。
彼こそが十年ぶりに現れた勇者だった。