全てを失った少年
数日後
ゴリアテの去った王国で
一人の少年が絶望していた。
彼はゴリアテの襲来によってすべてを失った。家族は家ごと踏み潰され、彼はたった一人で荒廃した世界に放り出された。生きる術を失った彼は、同じ境遇の人たちと一緒に何とか日々を過ごしていた。
彼は何か食べられるものはないか、そう思い崩れ去った王宮の近くにまでやって来たのだ。
食糧庫が残っているのかも知れないと、か細い希望に縋って来たのだ。
しかし、空振りだった。
ゴリアテは何も残していかなかった。
少年は肩をガックリと落とし、フラフラと瓦礫の上を歩いていた。
帰ったら何も無かったと隊長に報告しなくてはいけない。与えられる食糧は歩合制、そのため何も持ち帰らないと何も与えられない。一日おなかをすかしたまま、ジッとうずくまっているしかない。
それは嫌だった。
もしそうなったとして
それは誰のせいだ。
答えは一つ
ゴリアテのせいだ。
思い出すだけで嫌になる。
その目には怒りの炎が灯されていた。
ふと、顔を上げてみると
瓦礫の中に埋まっている光り輝くものを見つけた。
少年は、何か言引き寄せられるかのようにそれのもとに向かい、拾い上げてみる。
その日
全てを失った少年は勇者となった。