黒瀬愛奈の決心
「愛奈」
「え?」
「どうしたの? もう昼休みだよ」
「嘘ッ!!」
その言葉に私は驚き、顔を上げると教室にかかっている時計を見る。
すると確かに長針と短針は確かに昼の時刻を示していた。いつの間にこんな時間になったのだろう。某奇妙な冒険の第五部にキングクリムゾンというスタンドがいるが、そいつの能力を食らったような気持ちになる。
だが、スケールは段違い
愛奈が呆気に取られていると、目の前の席に座り、こちらを向いている私の親友、藍子がケタケタ笑い始める。彼女はまさに優等生と言った見た目で、おかっぱ頭に眼鏡をかけている。ポニーテールで活発な私とは正反対
だが、気が合った。
藍子は昼ご飯のサンドイッチをつまみながら話しかけてくる。
「どうしたの? 調子悪いの?」
「え、そんなことないけど……」
「絶対おかしいって、だって移動教室にも気が付かずずっとそこに座ってポケーッとしているしね」
「嘘ッ!! なんで教えてくれなかったの!?」
「教えたよー。聞いてなかったけど」
「…………」
できればもっとちゃんと教えてほしかった。
ハァと小さくため息を吐きながら、仕方なく机の上でお弁当を広げる。なんだか目の前でおいしそうにサンドイッチを食べている藍子の姿を見ていると、おなかが空いていることに気が付いたのだ。
お箸を出してお弁当を食べ始める。
藍子はその間も話を続ける。
「どうしちゃったの? 何かあったの?」
「うーん……それが……」
「何? 恋でもした?」
「―――ッ!?」
「え?」
図星を突かれて顔を真っ赤にし、驚く私
藍子はその反応を見て、驚く。まさか自分の予想が当たっているとは思っていなかったのだ。
だが、次の瞬間には気を取り直すと興味津々と言った様子で話を続けようとする。
「え!? 嘘!! 本当にあの愛奈が恋をしたの!?」
「う、うるさい!!! 静かにして!!」
「あ、ごめんごめん!! でもまさか愛奈が誰かを好きなるなんて思ってなかったから」
「……ン、謝ってくれたならいいよ」
私はそう言ってから卵焼きを口に運ぶ
運びながら、あのオナホの姿を思い出す。
今日は水曜日
最後にオナホの姿を見てからもう三日も経つ。
いい加減限界だった。
あの人(?)に会いたい
会いたい気持ちがどうしようもない
欲求不満
それに、これではあの人との関係が一歩も前に進まないではないか
愛奈が密かに焦っていた。
どうにかしなくては
誰でもいいから相談したい気分だった。
「ねぇ、藍子」
「何?」
「私さ、好きな人に会えないんだけど、どうしたらいいと思う?」
「え、そんな事?」
藍子はキョトンとした顔をする
私は眉をひそめて、真剣に悩んでいるアピールをする。
それを見て藍子はあっけらかんとこう言った。
「別に会いに行けないわけじゃないでしょ?」
「う、うん……」
「じゃあこっちから積極的にいかなきゃ」
「え?」
「せっかく愛奈はかわいいし、元気いっぱいなんだから、ドンドン行けばいいと思うよ」
「そ、そう?」
「そうそう」
うんうんと頷く藍子
そのアドバイスを受けて、私は前々から考えていた作戦を実行することにした。
その作戦とはつまり
兄のオナホを盗むのだ。
これしかない