綺麗だね、とその子は言った。私の花を見てそんな風に言う人は初めてだった。
私は病気だった。病気の定義なんて曖昧なものだからと医者は言ったが、人が望まない症状を抱えている時点でそれは病気だと私自身が思った。
大変じゃない、とその子は聞いた。私の花を見てそんな風に言う人はたくさんいた。身体に害があるわけじゃないから。私はいつものように答えた。そうじゃなくて葉も花も曲がってないから、とその子は言った。誰も気づかないと思っていた私の努力をその子はたったひと目で見抜いた。
下ばかり見ていた私は、やっと彼女の顔を見上げた。綺麗だね、と私は言った。彼女を見てそんな風に言う人はきっとたくさんいる。ありがとう。彼女はきっといつものように答えた。当たり前の笑顔が、世界で一番尊いものに思えた。