“まにむけぷけうえれ”があたしに言ったのは、もうすぐ新都町がなくなっちゃうっていうこと。
むかしむかし、江戸時代くらい、町に食べ物が全部なくなっちゃったとき、みんなは神様にどうにかして欲しいってお願いしたんだって。
その神様は「未来がなくなっちゃってもいいなら助けてあげる」ってみんなに言ったんだって。みんなよくわからなかったけど、とっても喜んで助けてもらったんだって。
その神様が“まにむけぷけうえれ”らしいんだけど、あたしは“まにむけぷけうえれ”が神様なのは嘘だとおもう。だって、あたしの知ってる神様はおじいさんの格好だから。たぶん“まにむけぷけうえれ”は悪魔なんだと思う。気持ち悪い格好をしてして嫌なことをするから。
“まにむけぷけうえれ”は新都町を全部なかったことにしなくちゃいけないから、忙しい。今日の新都町を消した後は昨日の新都町を消しにいかなくちゃいけないみたい。
「明日の新都町を消しにいかなくてもいいの?」って聞いたら、明日の新都町はもともとないらしくって、一番先っぽの未来の新都町が今日の新都町らしいの。
“まにむけぷけうえれ”の言うことはいつも難しくてあたしにはわからない。わからないけどあたしが嫌なものから順番に消していってくれた“まにむけぷけうえれ”のことは結構好き。
パパとママとを消した時はちょっとだけ寂しかったし、おもしろいテレビもパソコンも全部きえちゃったけど、「よりしろに贈り物だ」って言って消さないで残してくれたゲームがあれば退屈もしないし、昨日にいくと昨日のパパとママがいるからまあいいかなと思う。
赤い世界でぐるぐるしながらどんどんどんどんどんどん。
3歳のあたしを消した頃から赤い世界が多くみえるようになった。そして私の右の触手の一本が深淵の黒と赤の縁をなぞる。
そろそろだ、時間と意識が蜷局をまくかの如く固く締める様に圧縮する。
その後は、ぐちゃぐちゃのあたしは私と“まにむけぷけうえれ”