窓の外は今日も殺風景。仄明るい夜は都会である証明だ。緑の一つでもあれば気分的にも違うんだろうけど、この街にそんな余裕はない。革新左派が政権を手に入れてからというもの、ゲリラ的なテロが続いている。保守系だったはずのテロリストが自らを革命党と呼ぶようになるくらいには時が流れていて、街の住人はもはや慣れていた。命の価値は、時代によって変わる。
窓の外を猛スピードで白イルカが縦切る。きれい。またテロが起こったのだろう。内政が混乱するこの国では、警察の権力が次第に肥大化してきている。軍より警察のトップの方が偉いだなんて内輪揉めを認めるようで恥ずかしいと彼氏が言っていた。そんなことより目の前のハンバーグの褒め言葉を考えろと思った。優雅に空を泳ぐ白イルカ隊員のように私も彼氏を乗りこなせたら。希望を抱くと同時に無理だなと悟った。誰かを思い通りにするなんて、あまりに傲慢に思えた。