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2017年10月19日「アムネシアガール」

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2017年10月19日更新作品から


「アムネシアガール」http://amnesiagirl.nobody.jp/



 

 ななみ先生作品。
 タグ付けして更新して頂いていたので本作の感想を書こう。
 まず「アムネシア」が聞きなれない言葉だったのでネットで検索したら以下のような文章を見つけた。

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 Amnesia (アムネジア) とは、「物忘れの多いこと」を指す古典ギリシア語アムネースィアに由来する言葉で、現代では主に「記憶喪失、健忘(症)」を意味する。英語での発音は北米音でアムニージャ、英音でアムニーズィア。主に記憶喪失を題材とした創作物の題名等として、内外問わず広く用いられている。

 ───

 ストーリーを読む限り、主人公の田辺皐月が失われた幼少期の記憶を取り戻していくのがストーリーの根幹となっているので、やはりこの意味のようだ。
 
 記憶喪失の少女が記憶を取り戻していくストーリーというと、それだけならどんな繊細な少女漫画的なドラマかと思われるが、実際には陰惨で血生臭い内容だ。
 ただ、本作は多面的な要素を持った漫画で、一言では語り尽くせない。
 既存の商業作品を例に出せば、「八つ墓村」や「AKIRA」の影響が特に強いと感じた。ミステリアスでサスペンスホラーで超常バトルやガンアクションもあったりで、本当に盛り沢山な内容だ。色々な要素を詰め込んでグツグツに煮込んだ感じというか、読後感としては事務所のリクライニングシートに深く腰を埋めるぐらい、面白かったんだけど疲れた。この魅力的な世界に没入するのは危険だ。
 総じてみるととても「映画的」である。
 というのも、物語を様々な人物の視点・俯瞰的な神の視点・時系列から多面的に見せてくれる。
 主人公となる田辺皐月よりも、警察の大内や梶浦、教師の水野らの方が良く動くし、大神やおぶうや「もう一人のサツキ(柊皐月)も謎の根幹について説明してくれるので、主人公が記憶を取り戻していく過程以上に、読者自身も大河ドラマを見ているかのように追体験的に様々な事件の謎を追いかけることができる。ちょっと入り組んだストーリーとなっているが、この構成力や見せ方は素晴らしいと感じた。

 また、絵的な画面構成でも趣向を凝らしてあり、中でもお気に入りのシーンがあって、十三話で保険外交員に扮したおぶうが教職員を一コマ一殺で銃殺していくシーンや、十六話でユウが不良少女たちを超能力で爆殺するシーンなど。内臓が飛び散り、血みどろなシーンなのに、スタイリッシュで美しくさえ感じた。

 気になったのが、似た容姿の人物が多かったこと。
 柊姉妹に、篠崎眞紀子、おぶう、水野先生、柊美登里と。黒髪の女性が多すぎる。
 ちゃんと年齢や髪型や顔の特徴も描き分けはされているので混同することは少ないが、画面がゴチャゴチャしている時はちょっと混乱することもあった。ただ、これが物語の謎が見えていない序盤だと「この包帯ぐるぐる巻きの女が冒頭のサツキでは…?」などと読者をミスリードさせる効果もあったりと、上手く作用していたように思う。

 また、登場人物のドロドロ加減も面白い。
 明らかにおぶうの子供は純平との子供だろうし、水野先生はユウの子供を身ごもっているのか?と感じさせるシーンもあった。このあたりの伏線が回収されることを期待したい。単におねショタが描きたかっただけではないだろうし。

 現代の時間軸は恐らく平成十八年だし、例の凄惨な事件が起きたのも平成六年のようだが、旧安盛村関連の話はまるっきり昭和か戦前の雰囲気だ。
 黒幕的な組織であるミフネ会が戦前から生き残っているということだが、こんなのが警察・学校関係に密かに影響力を及ぼしているとかちょっと怖すぎる世界である。多分だがこの世界は現実世界以上に、自民党がめちゃくちゃ強いんじゃないだろうか。憲法とかとっくに改正されてそう。
 ミフネ会の思想に染まった人物がどこに入り込んでいるか分からないという怖さ、善良そうに見えた人物が悪辣な表情を見せ立場を翻してくる描写が多くあり、サスペンスホラーテイストが素晴らしい。
 物語はいよいよクライマックスとなるようだが、まだ明かされていない伏線や謎も多数あり、それらが最終話だけで語り尽くせるのかが気になるところだ。

 さて、ここまで取り留めなく、思いつくまま感想を書いていったが、それだけ語り尽くせない様々な要素がある漫画だ。
 少々暗いしホラーだし話は分かりにくいところもあるが、それを補って余りある魅力があると思う。
 未読の方や、途中で連載を追いかけるのをやめていた方は、完結前だし今からでも間に合う。
 ぜひ一話から通してご覧になって欲しい。
 きっと新たな発見があるだろう。





以上です。
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