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死闘:ミシュガルド・タートルズ

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◆ボルトリックの迷宮 B2F 最奥の間 ミシュガルド・タートルズ戦

『どうした?無抵抗では、つまらんぞ?安心しろ、上位種様の子を産み続けてもらう大事な身体だ。傷付けはせん』

両手を広げ迫ってくる敵に威圧されて後退する。
お尻が、踵が、そして背中が壁につく。
最早満足に武器を振るえる間合いではなく、亀男相手にそのまま壁ドン状態となる。
顔に鼻息がかかる。
顔を寄せてくる相手を睨み続ける事にすら、渾身の気力を必要とした。

『おや?雌の匂いがするな?』

その手が伸びてきて私の太腿に触れ、内股をなぞって下腹部へと到達する。
嫌っ!と相手を突き飛ばす。亀男はわざとらしく後ろによろめいて3歩下がる。

「舐めるな……!」

戦斧を斜め下からスイングして、身体をひねり、頭上までふりあげる。

「死ねええええええっ!!!」

大上段から兜割りに振り下ろされる、渾身の一撃。
頭蓋よ砕けよと、相手の脳天を捉えた。

そして。

「あああっ!!」

悲鳴を上げたのは、私の方だった。
殴打の衝撃は、その力の及ぶ最も弱い所、相手の頭部でも、戦斧でもない、私の腕に響き、握力を失った手は戦斧を落とした。

『愚かだな。まあよかったではないか。非力が幸いし、骨折には至っていないようだからな』

紳士的な動作で私の腕を取り、撫で労わってくる。

「うう……」
『さあ。武器を手に取れ女戦士よ。まだまだ心に希望があるのだろう?上位種様が必要としているのは身体だけだ、脳も、精神も、お前には最早必要ない。その精神が砕けるまで抗い。そして絶望し、心を閉ざすまで、私が面倒を見てやろう』

本当は、もう心が折れかけていたが、簡単に白旗を上げる訳にはいかない。

「ふざけるな……!」

亀男の身体に何度も何度も斧を振るっては弾かれる。
息が上がり、腕を上げる事も困難になる。
そうましても僅かなダメージを与えることすらできない現実を思い知らされ続け、ついには自らの意志で斧から手を離し、膝から崩れるように座り込んだ。

皆の勝利を信じたいが、これではガザミの攻撃はもちろん、フォーゲンの刀でも……。

私が勝つ道はない。
でも、なんとか皆だけでも助けたい。逃がしたい。

「……上位種って、お前達ってなんなの……?」

『我々の情報を引き出し、仲間に叫び伝えたいか。フフフ。良いだろう。我らは古代ミシュガルド上位者(オーバロード)様に作られし僕(しもべ)。我らの先祖は、体内にアダマントを有したミシュガルド原生生物だが、我らは骨格のみならず、表皮や筋繊維にまでアダマントが編み込まれた、巨人の打撃にも、ドラゴンの牙にも炎にも負けぬ身体を授かっているのだ』

眼の前の敵は、古代ミシュガルド上位種が戦闘用に生み出した種族。
最悪の予想と現実が重なってしまう。
抵抗する気力が更に逃げていく。

『我らの情報に、弱点などがあったか?突破口は見つかったか?叫んで皆に知らせるが良いぞ。ハハハ。より絶望を深くしたか?まだ耳は塞ぐなよ?我らの使命は、オーバーロード様の子孫を残すための子産み女を「造る」ことだ。分かるか?我らの手により、お前はこの先、死ぬまで求め、孕み、産む。それだけの人生を送ることになる』
「……馬鹿ね。そんな事になるなら私達は死を選ぶ。お前たちの思い通りになどならない」
『己を知らぬ愚かな下位種の女よ。上位種様は貴様らを知り尽くしておられる。我らの性器や体液は、お前達を虜にするように造られている。ましてお前のような……』
「あっ!ダメっ!!」

彼はそこで言葉を区切り、再び私の下腹へと手を伸ばし、下着に指を滑り込ませて陰核に触れてくる。
ほんの少しソコをなぞられただけで腰と膝が抜けそうになる。
彼の言葉が嘘ではないと本能的に実感してしまう。
腰を揺すりながら、くちゅくちゅした淫猥な音を聞く。

『下賤で淫らな女が、どうして抗えると思うのだ?』
「あっ……くっ。ん。はっ……」
『どうした?死ぬのではなかったのか?』
「くっ……ああっ!」

抗えない。
コイツに屈してるんじゃなくて、ずっとずっと身体が変だったのだ。
その所為なのだと自分に言い聞かせつつも、彼を拒絶できない。
はっ、はっ、と息を乱しながら腰を寄せつつ、罵られ続ける。

『尻を寄せてなんとする?』

パァン!と尻臀を叩かれる。その力の殆どを音に変えるような叩き方だ。
そら!そら!と掛け声と共に、お尻を酷く叩かれ、その度に大きな破裂音が広間に響く。
皆に聞かれるのが恥ずかしく、羞恥に頬が触れないほど熱くなる。

『お前のような淫乱は上位種様の御眼鏡に適わないかもしれんな。そうなれば、この巣で死ぬまでハチチ酒を生み続けて貰うとしよう』
「はぅ…ん!はぁ……は、ちち…しゅ?」
『我らと共生関係にある蟻達が、お前達から乳汁を出させて搾り取る。それを主材料として蜂蜜などと合わせて作る酒だ』

乳が出るように改造されて、蟻達に飼育される。聞かされるだけで目の前が暗くなる。
私の表情に絶望を感じ、サディスティックな亀男は満面の笑みで木筒を取り出した。

『これがハチチ酒だ。我らはコレを飲むほど強くなる。お前からハチチ酒を造った時は、お前にも飲ませてやろう。良い出来なら優しくしてやってもよい』

愛撫から開放され、その場に跪く。
身体中を支配しようとする淫感を抑え込もうと、自分自身を強く抱きしめる。

「集中」する

「…………!…………!?」

ホワイト・ハットを見る。
それから、それぞれが絶望的な戦いに挑んでいるガザミ、フォーゲン、ケーゴ、ガモも。
(モブナルドは自ら壁にもう一度ハマり直して死んだふりをしているので無視)

やるしか無い。皆が助かるのなら、死んでもいいのだと思ったばかりなのだ。躊躇する理由はない。急がなければ手遅れになる。
彼の忠誠が本物であれば、糸口とすべきは「上位種様」だ。

「ふふっ……よく言うわ。上位種様?お前たちみたいな悪趣味な生き物を作って、女を改造して、なにそれ。ただの下品なスケベじゃないの」

意を決して、彼らの大事な主を罵る。
亀男は顔面を真っ赤に紅潮させ、眼球の血管が切れる程に目を見開いた。
その顔めがけてばきゅーん、と指鉄砲で弾くポーズ。そして余裕のウィンクを決める。

「図星?そんな奴らに作られたアンタ達なんて、皆が倒してくれるでしょう。ふふっ。バッカみたい。ドラゴンにも巨人にも負けないはずのカメさんが、人間に負けるなんて。上位種さん、実は大ボケなんじゃないの?」
『如何に無知で哀れな下位種の女とて、我らが主を侮辱する事は許さん。お前は、己を知る必要がありそうだ』

挑発は成功した。後は、チャンスが来るまで耐えるのみ。



鎧を割かれ、衣服を剥ぎ取られながら、女戦士は唇を噛みしめた。

◆ガモ

「徒手で俺のナイフと戦おうなどとは舐めた相手だ」
『なかなかの動きです。見かけによらず有能ですね』

力は敵のほうが数段上だろう。直線的な機動力、反射速度もまた、相手が勝る。
しかし、この無駄に筋肉を付けた巨体だ。小回りが効いてない。
懐に潜り込んでの超接近戦で攻めたてれば、こちらが止まらない限り先手を取り続けられる。攻めに転じるチャンスなど与えん。
即ちそれが最大の防御にもなる。

俺のナイフは、突く、刺す、斬る、薙ぐ、掻き切る、引っ掛ける……全ての動きで相手の血管系を狙う。
そして刃に仕掛けた神経性の毒が、敵の動きを奪うのだ。

『困りました。これでは攻撃を躱すだけで手一杯です』
「黙って死ね」

俺の攻撃は、ひたすら最速手を出し続けているように見えて、詰将棋の様に手順を測っている。

首、脇、手首の3箇所の急所に限定し、ランダムに攻撃を散りばめる。
これを繰り返すと、敵の脳や体に防御動作パターンが刷り込まれ、奴は知らぬ間に同じ攻撃には同じ動作を返すようになる。
時には目を狙い、フェイントを織り交ぜることで敵のその動作を僅かに遅らせていく。
こうして敵を操り、その動きを完全に予測する。

読み通り、敵の防御をこちらの手数が上回る瞬間が訪れる。
焦った奴は、誘いだと知らずにククリナイフを振り下ろす俺の手首を掴んできた。
体格で勝る相手は、これで敵を封じた気になるものだ。

『やっと捕まえましたよ』
「詰みだな」

指先の動きだけでくるりとナイフを回し逆手に持ち帰ると、ヤツの手首の撓骨動脈を切り上げる。
失血死が先か、毒によりショックを起こして死ぬか。

『なるほど、それを狙っていたのですね。勉強になりました。ですが敵を侮ってはいけません。下位種の戦士よ』

確かに切り裂いたはずの手首。
だが、そこには僅かな傷筋しか付いていなかった。

そんな馬鹿な!?
俺のナイフはドラゴンの鱗から作られた特注品だぞ!?

「おのれ……!」

腕を掴まれたままだ。
つま先に仕込んだ毒針でのトゥキックを放つ。
苦し紛れだ。尻穴を狙ったが、この化物相手に針が通る保証はない。
交差するような軌道で伸びてきた打ち上げの拳が、俺の腹にめり込んだ。

背中まで衝撃が走り、鱗衣の防具が弾け飛び、数メートル後方の床に落ちた音を聞く。
内臓全てが踊り狂い、口からと言わず鼻からと言わず、骨や筋を突き破って飛び散った感覚があった。
掴んでから、渾身の一撃で殴る……こんな下等な戦術にやられるとは……。

「ゲボォ……」

こみ上げた血を泡と吐く。吐瀉物には胃液だけでない、腸液までもが含まれている。
口腔内に溜まったそれが再度逆流し、気管に詰まる。
死ぬ。

最後に目に焼き付けてやろうと生意気なクソ女の姿を見る。
案の定だ。武器も持たず壁際に追い詰められ、下腹を弄られながら満足に抵抗できていない。
化け物相手に悦んでやがる。まったく恥を知らない女だ。ククッ……。
そうだ、一言いってやらねば……。

「俺は元々……弓が得意なんだ……前衛なんかやらせやがって…………」



後衛として弓を使えば勝てていた。そんな感じの遺言を残してガモの意識は闇へ沈んだ。


◆ケーゴ

「うわ…あ…!!」

目を見張る程の熟練の技を見せていたガモが倒された。それも一撃でだ。
信じられない程の大量の血を吐き、ぐにゃりと倒れたハーフオークの戦士は、直ぐに痙攣もしなくなった。
アレを喰らって生きているはずもない、俺なら死んでいる。そう確信できた。

『やれやれ。子供を手にかけるのは好むところではないのですが』
「く、来るな!!」

魔法剣の理は射程だ。
バックステップをしながらやたらに魔力を飛ばしていく。
亀男は避けることもなく、直進してきている。
それなのに当たらない。
情けないことに、俺が震えているんだ。

「あっ!ああーあっ!あんっ!」

ねーちゃんの悲鳴が聞こえる。
視線を外した途端に目の前まで詰められそうで怖かったが、見ないわけにはいかない。
ニタニタと笑う男に、力で押さえつけられて、性的な暴力を振るわれていた。

“ケーゴ。頼りにしてるからね”

あの囁きが今も聞こえる気がする。

今できる戦い方は、兎に角攻撃を続ける事だ。
ダメージはゼロでは無いはずだ。
絶望してる場合じゃない!
勝ち筋が見えなくても、出来ることは全部やって、ねーちゃんを助けるんだ!
トレジャーハンターになるんだ!

「ふーっ!ふーっ!」

懐の薬を乱暴に取り出す、
殺されたら、そこで終いだ。何も惜しむことはない。
聡明薬に覚醒薬。今全量飲んでやる!!!

薬包紙ごと口に放り込む。咀嚼して飲み込んだ。
一包は粉薬だったので、激しく咽る。

「俺が……!お前らを倒………ヴ?!!」

視界がマーブル状に歪む。
猛烈な吐き気。
目玉が溢れるほどの頭痛。
何故かギンギンに勃起した。
そして、急速に身体が冷えるのを感じる。
血圧が下がるのを感じる。
あれ?
活力が湧いてこないぞ?
頭が冴えるどころか、なんか考えるのもだるいぞ!?
え?俺は天井を見ているのか?あれ?天井が近づいてくる?!
なんだ?
下の方に床に寝てカエルみたいに痙攣してる俺がいる!?
え?
おい!?
え?
おーい!どうしたケーゴさーん!?



ケーゴは幽体となり、自らの身体から離れつつあった。


◆ホワイト・ハット

300年以上生きてきた我が、今日これから死ぬかもしれない。
迷宮の奥に何かがあると思っていたが、古代ミシュガルド上位種の遺産とは因果なものだ……。

一口分にしかならなかった母乳で補充した魔力は多くはない。
奴らを倒せるほどの大魔法……候補はいくつかあるが、そのどれも使えそうにない。
甘く目算しても、精々中級魔法を2発分の力しかない。

「まずいですね……」

そして、ガモは一撃で戦闘不能となり、ケーゴは雄々しく服毒自殺をして、今や敵と1対1で対峙している。
一歩一歩、泥床を踏みしめ接近してくる敵を見る。
悪あがきにしかならないが、回復魔法を使用し、倒れた仲間を叩き起こして戦わせるブラック企業作戦を展開するか……。

『諦めなさい。君も先程の少年のように服毒しますか?私はそれでも構いませんよ?』

ボクが口にするのは母乳のみと決めているので……と答えようとしたその時、「天啓」が下る。
パッ、とリーダーの女戦士を見る。
彼女は今、身体中を支配しようとする淫感を抑え込もうと、自分自身を強く抱きしめている所だった。

「……そうです。それでいのです……」
『服毒するのですか?』
「いえ……その提案はお受けできませんね……」

ホワイト・ハットには戦士に生まれた亀男の攻撃を防ぐ体術はない。
そして攻撃魔法を放っても、戦士を倒せないであろう。
そんな窮地に立たされた魔法使いには、裏技が2つ残されていた。

一つは、離脱の魔法で逃げ去ること。
もう一つは。バッ!とマントを靡かせ、術式を描き、ルーンを唱える。
湧き出た幻惑の霧が周囲を包む。目くらましだ。

「……我らが優秀なリーダーのおかげで、どうも勝ててしまいそうです。もし貴方が生き残ったのならば、上位種さんにヨロシクお伝え下さい……」

ホワイト・ハットは次なるルーンを唱え、戦場から姿を消した。


◆ガザミ

『何時でもいいぜ~』

ノーガードのまま、フットワークとも呼べない左右運動をしている亀男を睨みつけてやる。

「ふざけんなよ。お前がアタシに挑んできな」

確かに圧力は感じる。強敵だろう。だが、戦う前から飲まれはしない。

『うはっ!糞生意気な亜人女だな』

奴は左手を伸ばし、こちらに掲げたその手を蠢かせて力比べをしようと挑発してくる。
迷うことなくその汚たねぇ手に指を絡ませた。パワーで男に劣った事はない。
ぐぐぐ……と力を籠める。
幾ら力を籠めようともピクリともしない。動くはずもない巨大な岩山を相手に必死に押し込んでいるような手応えの無さだ。
額に汗がにじむ。
じわりじわりとヤツの指が拳に食い込んでくる。

「ぐあ……!」

途端に劣勢にされ、咄嗟に両手を使って抵抗する羽目になる。
屈辱だ。片手に対して、アタシは両手を使い、なお膝をついている。

『オォ?なんだ?もう泣きが入るのか?』
「……くう!」

手首が軋む。脇腹の痛みが無かったとしても、パワー差は歴然だ。
力勝負を諦め、フッ……と力を逃がすと倒れ込みながら、奴の、その目障りな股間めがけて蹴りを放つ。
柔いモノが潰れた感触こそ無かったが、身体を浮かすほどに蹴り上げ、クラッチを切って離れた。
跪くであろう相手の顔に渾身の一撃を見舞おうと拳を握る。
しかし。

『なんだそりゃ。そんな普通の雌みたいな真似されると萎えるな~』

ダメージを感じさせない亀男に愕然とする。

「ふ、ふざけた野郎だ……」

呼吸を整えて格闘戦に移る。
構え、ステップし、誘い、牽制し……。
いや、余裕ぶっこいてるアホが相手だ、誘いも牽制も必要ない。
思いっきり踏み込む。

「オラっ!」

憎たらしい顔めがけてクローを振るう。
信じられないことに、敵は躱さずにそれを頬で受け止めた。

火花が散ったかと思う硬度だった。
クローの根元に痛みが走る。ヒビが入った感覚だ。
敵は……薄っすらと血をにじませた頬を掻いている。
猫が負わせるひっかき傷、程度のダメージだ。

『ん~?なんか雌ってのはアレだな。哀れだねぇ』
「テメェっ!!!」

防御もせず笑っている敵に、肘や膝を全体重を乗せて打ち込む。
眉間、コメカミ、人中、顎先、喉、鳩尾、下腹部、股間。
急所とされる所を的確に狙う。
しかし、殆どダメージを与えられていない事は、割れて血を流す自分の拳がよくわかっていた。

『あー。こりゃダメだわ。無駄だ無駄だ。さっさとアッチを始めるか』

亀男は股間をメリメリと盛り上げ始める。
オイオイ、アタシに何をしようと?
とんでもない化け物だ。これじゃシャーロットの奴は一溜まりもないだろう。
同僚の女戦士を見れば、裸に剥かれて恫喝され、怯えて足を開き羞恥に唇を噛んでいた。
さっさと助けに行かないとヤバそうだ。

「何勝った気になってんだよ。この単細胞が。まあ仕方ないから認めてやるよ。本気出さないとヤバい相手だってな」

ケーゴから貰った秘薬を取り出す。聡明薬に覚醒薬だったか。まとめて口に放り込む。

視界が広がる。
敵の呼吸までもが視覚できるようだ。
さっきよりもずっと小さく見える。
揺らぎかけていた戦意が奮い立つ。
全身に力が漲る。
最早脇腹、そして拳の痛みなど感じない。

ガザミは狂戦士化の扉を開いた。
やれる。今のアタシならどんな敵であろうともブッ倒せる。

「殺す前に教えておいてやる。アタシの名前はガザミ様だ」

側頭部への渾身の蹴りは、亀男の動体視力と反射速度を超えて「クリーンヒット」し、その巨体をよろめかせた。
その顔をカチ上げるアッパークロー!
爪が折れて体液が流れるが、構わず撃ち抜く。
今度の一撃は、ヤツの皮膚を切り裂き血を流させていた。
内蔵を狙った脇腹への回し蹴り。

『ぐぁ……テメェ。調子に─』

反撃の姿勢を整えようと歪むその顔に頭突き。
今、アタシは明らかにコイツより速い。
苦し紛れのパンチにカウンターを合わせて、文字通り鼻っ柱を砕く。
そして連打だ。アタシの腕ごと吹き飛ぶんじゃないかと思えるほど、遠くを撃ち抜くパンチが、連打で打てる!
一撃一撃ごとに、負荷に耐えられない身体が崩れていくのを感じるが、その痛みが心地よく感じるほどの高揚感。それは性的絶頂にも似た快感だった。

「イッちまいな!!!」
『おおぅ!?』

弓を引くようにギリギリと力をためた拳を、奴の鳩尾に深々とめり込ませる。
両者の足元から風が立ち上り、泥床に波紋が広がる程の深い深い衝撃。
胃液を吐き、背を丸めた亀男の膝が落ちる。
踏み止まり、組付こうとしてきた所に、カウンターの膝を突き立てた。
膝蓋骨が砕ける。しかし、奴の顎も砕け散った。
ついに亀男は前のめりに倒れ込んだ。
追い打ちとばかりにその頸部を踏み砕く。

「全部見えてんだよ……」

ハハっ。と高笑いをした後、ガザミも真後ろに倒れ込んだ。
いや、ダメだ、起き上がらなければ。あの馬鹿とガキんちょを助けなければ。
しかし、身体が意志に答えないばかりか、その気力も萎えつつある。

出し尽くした。そんな感じだ。

「……上に戻ったら……肉と酒を死ぬほど奢らせないとな……」

意識が遠のく。

『……いいや。お前が行くのは地下だ』
「!?」

辛うじて頭を持ち上げ見ると、亀男が謎の木筒を手に、ゆっくりと立ち上がる所だった。

『やっぱりキクねぇハチチ酒は。俺の方もドーピングさせてもらったぜ』

敵のダメージは消え、その迫力が増していた。



ゲラゲラと笑う敵の顔を睨んだまま、ガザミは気を失った。


◆フォーゲン

『どうしマシタ?群れの雌を守って戦わないでもいいのデスカ?』

俺は歩法縮地を使い、敵との距離を外して戦闘を回避していた。
逃げているのではない。気を計っているのだ。
と言うのも、斬れるイメージがまるで沸いてこない。
隙はある。攻撃は当たる。
しかし、脳が予測している。刃物は通らず、愛刀が折れる、と。
何が悪いのか。
間合いか。呼吸か。角度か。膂力か。精神力か。

どんなに堅いものであろうとも、条件さえ整えば必ず斬れる。
それがセイゲン様の教えだ。

ともあれ、こんなヤバい敵を相手に正面から戦う訳にもいかない。
幸い、ケーゴやホワイト・ハット達の前衛として戦う必要はなくなった。
脚がちぎれるまで、息が止まるまで、逃げて逃げて逃げるのみだ(フッ……逃げるって言っちゃった)。

『なかなかに速いデスネ』

背後を取ったタイミングでも、踏み込めるイメージがわかない。
どうやらこちらの動きは全部見られているらしい。
亀男の周りを回るように連続で縮地を使いながら、時間を稼ぐ。
誰か早く戦闘を終わらせて助けに来てくれ。

頼りになる亜人女を見る。猛打爆発し、敵をボコボコに殴りまくっていた。
おお!流石だ!これなら直ぐにでも援軍が……。

視界に髪の長い女の様子も捉える。
早くも全裸に剥かれていて、敵の破廉恥行為を受けているようだ。
自ら求め、腰から敵に擦り寄っている。
思わずちょっと凝視してしまう。
若い娘さんが─。
あんなに乱れて─。

刹那、亀男が視界から消えた。

「あ」
『瞬歩デス。貴方のほうが若干速いようですガ。よそ見はいけませんネ』

声は背後からした。後ろを取られただと!?
背に浸りと掌が押し当てられる。

「フッ……ちょっとタンマ……」
『そしてお前は弱イ。期待したのに残念ダ』

発勁──。背を突き抜け、肺と心臓を諸共に貫き、胸から放出された浸透エネルギーは、着衣が渦を巻いて千切れ飛ぶほどの威力を見せた。

「がっ……!?」

剣士が最後に見たのは、自らが噴き出した鮮血だった。



フォーゲンの心臓は、止まった。
◆ボルトリックの迷宮 B2F 最奥の間 ミシュガルド・タートルズ戦

母乳から出来るというハチチ酒の話を聞いた時。
そして彼らがそれを所持してると聞いた時。
私には一つのアイディアが浮かんだ。

亀男達が古代ミシュガルド語で話しかけてきたあの時、ホワイト・ハットはこう言っていた……「感覚を共有します」と。
そして今も彼らと意思の疎通ができている。
これは、ホワイト・ハットを介して行っている会話なのだから、つまり今、私はあの子と何かで繋がっているはずだ。
私はその場に蹲り、身体の火照りと戦いながら精神を集中させた。

(ホワイト・ハット……!聞こえる……!?)

(大丈夫ですよお姉さん。聞こえています……)

繋がった!
私は彼にハチチ酒の存在を知らせ、尋ねる。

(母乳酒をいっぱい飲めたら、コイツらを倒せる?)
(どんなリクエストにもお答えする事ができます……)
(わかった。何とか奪い取って……)
(時間がありません。ボクに考えがあります……)

ホワイト・ハットは提案した。

(ボクが透明化の魔法を使い、張り付きます。お姉さんは、亀男がボクの気配には気付かないようにヤツの気を引き、もう一度ハチチ酒の木筒を取り出させてください。イザとなれば盗み取りたいですが、厳しいでしょう。その木筒をお姉さんが手に出来ればそれがベストです。はい、もうおわかりですね……)

サドっ気を極めたような亀男。私はこの手の男がしてくる辱め方を知っていた。

アレは思い出したくもない、いつもの酒場に甲皇国の軍服を着た連中が来て下品な大騒ぎをしていた時のことだ。
あまりにもストレートに喧嘩を売られ、速やかに売買が成立し、敗れ、散々な目にあった後、元甲皇国兵士を名乗る銀髪の青年傭兵に助けられた。
……まあ兎に角、この手の嫌な奴等の思考は経験済みだ。

彼らの主を罵倒し、注意をこちらに向ける。
どんな事になるにせよ、頭に血が上ってくれれば、すぐソコに来ているホワイト・ハットの気配を気取られることもないだろう。
鎧を壊され、服を剥かれて壁際に突き飛ばされる。
睨み返せたのは、心に希望があるからだ。

『手をどけろ……!』

胸と下腹をかばう腕を骨が歪む程に掴まれ、無理やりバンザイさせられる。

『足を開け……!』

噛みつかんばかりに睨みつけられ、私はがに股に脚を開く。

『お前はなんだ?これはどうしたことだ?私には理解できないな。我が主人を侮辱したときの様に、饒舌に、今お前がなぜ発情し、汚らしい女性器をヒクつかせながら愛液を漏らしているのか、説明してくれないか?』

何から何まで、あの時の憎たらしい甲皇軍の奴等の時のようだ。反論してやろうと思うが、いい言葉が浮かばない。

「すけべ亀」

シンプルに抵抗した。
亀男は指に唾液をつけると、それを潜り込ませて乱暴に入り口を掻き乱してくる。
古代ミシュガルド上位種が彼らに与えた体液の効果か、身体の火が一層激しくなり、一瞬で理性は吹き飛ぶ。
少しでも快感を得ようと、懸命に腰を動かした。湧き出た愛液が飛沫く。

「あぉ!あ!あう!お!あおぅ!ああああああーーっっ!」

『まったく。満足にしゃべる事も出来ないか。呆れたことだ』

彼は行為を中断する。もう少し続けられていたら、頭がおかしくなっていたかもしれない。

「はぁあ……う!」

ゾクゾクと背筋から震え、身体に襲いかかる淫感に負け、空に腰を振り続ける。

『続きをして欲しいのか』
「あう!う!」

泣きながら震え頷くしか無い。
求めに応じて彼は再び私の股を弄る。

「ああぁーーあっ!ああーーーーんっ!いいっ!す、すごくいいーーーーっっ!!!」

神が人間の女を悦ばせるために作った化物だ。
私じゃなくても、ガザミでも、誰でも、こんな快楽に抗えるわけがない。
涎を垂らすほどに脳まで痺れ、背筋が痙攣して身体の向きさえ自由にできない。

『困ったものだ。何か勘違いをしているのではないか?これは仕置でご褒美ではないのだぞ?』

そこでまた行為をやめられてしまう。
言葉責めも構わず、股を大きく広げ、自分で鼠径部の肉を持ち上げ、性器をさらけだす。

「はぅ!はぅう!はやく!きもちいいの!はやく!!」
『おお、なんという悲劇だ。斯様に淫らで下賤な女を上位種様に捧げなければならぬとは』
「あうう!おちんちんじゃなくてもいいからぁ!ゆ、ゆび!ゆびでいいからぁ!」
『作法も何もあったものではない。お前には教育が必要なようだ。少しは恥じらいの心を持て、下等な女戦士よ』

肩をすくめて全く似合わないキザなポーズを取ると、亀男は木筒を取り出した。

『お前は我らの指で弄んでやる価値もない。下等な、汚らわしい、愚かな雌だ。そうだな?』

「はぁ……!!」

ガックガクに抜けている膝。腰。視界は半分に歪み、世界の全部が光を乱反射させているように朧に見える。
彼に雌性器を広げて見せたまま、必死に頷く。

『そうだな?』
「そ、そうですっ!そうだから!はやくっ!」

焦らされ、堪えきれず泣いて喚く。大声で叫ぶ。

『我らはお前をなんと呼べばいいのかな?』
「し、シャーロット……!」
『お前にそんな立派な名前が必要か?』
「うぅう~!!め、メス豚です。わ、わたしは雌豚です!」

亀男はニヤリと笑った。
木筒を取り出し、こちらに差し向けてくる。。
そこに他の亀男達もやってきた。

『なんだこりゃ?オナニーしてる馬鹿女がいるぞ?』
『悪趣味デスネ……』
『これはなんとも。上位種様には相応しくないのではないか……』

複数の視線と嘲笑が降ってくる。
……ガザミ達は全員倒されてしまったのだ。
全員に覗き込まれる。
彼らの向こう、地に伏すガザミ、フォーゲン、ガモ…ケーゴ。
皆が皆、酷い怪我をしているように見えた。

(お見事でしたお姉さん。ボクらの勝ちです……)

ヒタリ、と子供の暖かな手が背中に触れた。状態解除の魔力が身体を満たす。

『良かったなメス豚よ。倒れた仲間の代わりに、我ら四人がその恥ずかしい姿を見ていてやるぞ。そら、コレでも使って惨めに自分を慰めるがいい』

木筒が投げ出される。
身体にぶつけられ、床に落ちた木筒を、飢えた犬が骨に飛びつくように拾い、蓋を投げ捨てて、股下に差し込む。
その様を見てまた嘲笑の声が飛んだ。
私の股下、お尻の直ぐ下から、喉を鳴らす音がする。

(なるほど……よい乳酒だ。娘よ。その労に報いて、特等席で彼らの滅びを見届ける権利を授けよう……)

「……皆を……」
『ん?どうしたメス豚よ?』
『何か様子がへんデス』

亀男の一人は気付いたようだ。この大広間にを満たしていく魔力の充実を。
私は傍にあった破れかけの衣類を拾って、肌を隠し、ゆっくりと立ち上がった。
ホワイト・ハットの解除の魔力により、身体を支配していた婬感は消えていた。
びしっ!と彼らを指で刺す。
死ね。と言ってやりたかったが、もっと大事なことを言う。

「お芝居はここまで。覚悟しなさい亀男」

そう。お芝居はここまで。そう。全部演技だったのだ。

演技だったのだ。

大広間のみならず、迷宮全体が震え出す。
事態を飲み込めていない愚鈍な亀達は、周囲を見回し、彼らが倒したと思っていた冒険者達が起き上がるのを目撃する。

「……あれ?アタシは……確か……」
「……拙者は不覚を取っていたのか………」
「今すげー怖い夢見てたよ俺……どんどん身体が舞い上がって……」
「お、俺は……死んだのでは……」

ガザミが、フォーゲンが、ケーゴが、ガモが。
全員が傷の癒えた身体を探りながら立ち上がった。
ホワイト・ハットの魔力に守られている私は、そのまま空気に飲まれて呆けている亀男達の間を横切り、死んだふりを続けているモブナルドの首根っこを捕まえ、ガモが管理していた資材と一緒に引きずって皆の元に行く。

「これはお前が?え?だって負けてたじゃん??」
「何のこと?ガザミが殴り倒されてたのは見たけど」

嘘じゃない。結果的に私は勝利者だ。
お口あんぐりのガザミを中心に、半径1メートル程の円を書く。
入って入って、とメンバー全員を呼び込んだ。

「ホワイト・ハット。お願い」

透明化の魔法を解除したホワイト・ハットが姿を現す。
その体は溢れ出る魔力で風と光を纏っていた。

『全事象演算終了……我は原初、我は終末、万事は此処より始まりて、是にて終わる』
『そんな馬鹿な……!?』

ホワイト・ハットを見て、凍りつく亀男達。
その驚愕の仕方が尋常ではない。
あれ?と思った。
魔法少年は驚き戸惑う魔物を見て、犬歯を見せながら暗黒に微笑む。

『汝達を創造した者がいるなら、汝達を塵に帰せる者もいる……』

亀男達は蛇に睨まれた蛙の如く、動かない。
次の魔法で全てが決着するのだ。

「……魔法使いの少年よ。拙者の我儘を聞いて欲しい」

不意にフォーゲンが歩み出た。

『いいだろう。幻夢の剣士よ……』

フォーゲンもまた、ホワイト・ハットと感覚で繋がっている。心の内でやり取りが交わされたようだ。
円を外れ、亀男の前に歩み出た彼は、敵の一人を指し示す。

「フッ……失望させたままでは寝覚めが悪いのでな。俺に勝てば見逃してくれるそうだ」
『……いいでしょウ』

立会の申し出は受けられた。
フォーゲンは背の刀を鞘ごと持ち、居合に構えて腰を落とした。
亀男はハチチ酒を飲み、殻になった木筒を捨てる。

「……参られよ」
『尋常ニ!』

間合いを詰めた亀男は、身体の捻りで渦巻くような掌打を放つ。
風を巻いて交差し、背中合わせと成った両者は体を入れ替え再び向き合った。
いつの間にかフォーゲンの刀は振り抜かれている。

『お見事デス……』
「……悲しいものだ。より強い生物になるべく作られたお前達のもっとも弱い処が……その甲羅だったとはな」

背の甲羅から崩れるように亀男は倒れた。

亀男達は、原生生物の硬い甲羅故に上位種に目をつけられ、改良されていた。
表皮や筋繊維に甲羅の主成分を複雑に編み込むことで、弾力と硬度を備え、斬撃にも打撃にも強い無類の防御力を手に入れていた。
しかしその過程で、甲羅は置き去りにされ、元の生物としての強さ(弱さ)を残していたのだ。

甲羅こそが最も防御力が高い。そんな先入観から、想像もしていなかった。
フォーゲンは敵の亡骸に一礼し、静かな足取りで私達の所に戻ってきた。

「……露払いはすんだ。後は頼む」

そう言うと、どっかりと腰を下ろす。
あれ?コレってまさか。

「……少々寝る」

やっぱり寝た。


『おのれ!!おのれぇええええ!!!』

破れかぶれとなり、残りの3匹がこちらに特攻を仕掛けてくる。
先頭を走ってくるのは、私を散々コケにしてくれたアイツだ。
ばーかばーか!

「ホワイト・ハット!やっちゃって!!」

彼の魔法帽子をぽんぽんしながらお願いする。

『娘よ。魔力解放後、迷宮は崩れるだろう。そして我の魔力もまた尽きる。その時はまた母乳を捧げるが良い』
「考えておきます」

吸乳鬼の身体から魔力がオーロラ様に色調と空間を捻じ曲げて迸る。
ズン!と内臓が痒くなるくらいに振動が走り……。
光りに包まれるようにして、亀男達が足元から砂状に崩れだした。

それは結構ショッキングな映像で、死ぬまで蹴り続けても飽き足らないと思っていた相手の恐怖に凍りつく表情から目を背けた。

「ホワイト……!」
「大丈夫だよお姉さん。ボクは言ったでしょ。造れるものがいるなら戻すものがいるって……」

魔力が弾け、空気と光がもとに戻った大広間には、3匹の亀がもそもそと蠢いていた。

「……」

拍子抜けして拾い上げる。ケーゴが甲羅を叩く。

「これがねぇ……」

俺はこんな亀にビビッていたのか!と悔しがる男に子に向けて、同感の視線を送る。
にわかに信じがたいが、これは古代ミシュガルド上位種とやらの恐るべき魔力の証明と言うことになる。
そして、それを解除したホワイト・ハットとは……?
亀を拾い上げてしまい込む彼をまじまじと観察する。

「アダマントの研究に使えるので、持ち帰りましょう……」

どーみてもちょっと変な普通の子なんだけどな……。

「オイ、シャーロット。この円の意味は何だ?」
「あ、なんかホワイト・ハットが纏まれって言うから……?」

ぐらり!と身体が芯から崩れた。
疲弊していたし、立ちくらみのスンゴイヤツが来たのかと思ったが、ホールの端から始まっている泥状床の崩壊を視認する。
いえ、床だけじゃない。天井も。
見えない力によって守られていて、土砂には埋まらないけれど、濁音と共に黒い泥の豪雨が降る。
生きた心地がまるでしない。

「皆!固まって!」

咄嗟にできた指示はそれだけ。
隣の相手と腕を絡ませ、身を寄せ合う。
ぐぅぐぅ言ってるフォーゲンの襟首を掴む。
ガモはモブナルドに抱きつかれている。うん。お似合い。

そして遂に床全体が抜け、私達を中心にした360度の滝のように全てが流れ落ち始めた。

「下にまいりまーす……」

魔法少年のアナウンスが響く。
パーティーはそのまま、無限の闇に飲み込まれ、どこまでも落下した。



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