◆ケーゴ
翌日、俺達には個室が与えられた。独房というのだろうか、簡易ベッドとトイレがあり、出入口は鉄格子から鉄扉に代わって、プライバシーが保たれている。
そして、衣服だけは帰ってきた。
思いっきりオナニーをしてから、パンとスープと揚げ物と豆で構成された朝食を食べる。看守の男曰く、「俺達のメニューと変わらない」のだそうだ。
腹が膨れると、ベッドに横になった。ここでふと、一時解散していた時にした「霧の谷の冒険」を思い出す。
一緒に冒険したのは、同世代の女子たちだ。
共に冒険した10日余りの間、ふとした瞬間に可愛く見えたり、性を意識してドキッとした場面はあったものの、緊張感を持って冒険を終えることができた。
ある程度気心が知れてきた頃のキャンプで、不意にねーちゃんの話題になった事があった。
会話の流れはこうだ。トラウマを抱え、失語症に悩むアンネリエが手持ちの黒板に文字を書いて俺に尋ねてきたのだ。
『ケーゴは、なんで冒険しているの?』
その時俺は、超一流トレジャーハンターへの憧れを語った。世界中を駆け回り、遺跡を巡り、謎を解き明かし、財宝を持ち帰るのだと。
アンネリエがあまりピンと来ていない表情でパチパチと手を叩いている最中に、ベルウッドが俺の夢を茶化してきた。
「はぁ。ケーゴはおこちゃまだねぇ。現実味が無いよ、現実味が!」
なれる訳ないじゃん!出来る訳ないじゃん!という横やりだ。まあ、普通の反応だろう。俺だって子供じみているとは思うが、ちょっとばかり腹が立った。全然戦えないのに強引に付いてきて、危ない場面では死んだふりをしたり、人を盾にして逃げ回っている彼女に対して、言いたいことは山程あった。
「じゃあお前はどうなんだよ!」
「アタシ?アタシはアレよ。ノーリスク・ハイリターンを求めて!」
ベルウッドは、堂々と薄い胸を張り、おでこを輝かせて踏ん反り返る。
名を成しそうな奴、強そうな奴、持ってそうな奴、人のよさそうな奴、それらに引っ付いて歩き、労せずして巨万の富を得る。どうだ凄い夢だろう!現実的だろう!、と。
そんな訳で、この大冒険で何か発見があったら、アタシの手柄とする!と暴れ出した。
お前はぜってー次の冒険には連れて行かねー!
「えーと……メルルは?」
リーダーとしての気遣いから、明らかに皆と距離を置いて座っている少女に話題を振る。
「ひ!?え?あ、はい。私は……その、この世の楽園とも思える故郷の外に、排泄物程の価値しかないニンゲンの世界があると、あの、どんなに醜悪な生き物であろうと、僅かでも言葉を交わせるくらいの知能があるのなら、きっと、お友達(?)とまでは、その、いいんですけど、この世界に住む生き物同士、いえ、生物としてのレベルは天と地ほども違いますが、一応、慈愛の心でもって接してみようかと……交易所に猿見物……あ、社会見学に……そこで、下郎さんに、あ、いえ、ケーゴ(?)に声を掛けられてしまったので……神はなんて残酷な試練を課すのかと恨みながらも、はい、ここに……」
お前がどーゆー奴かはよーくわかった。
またアンネリエが、カリカリと音を立てて、黒板に文字を書く。
『ケーゴは、何かずっと焦っているけど、それはそのトレジャーハンターになるためなの?』
驚いた。
そりゃ、少しばかり気は焦っていたかもしれないが、女子3人を引き連れている以上、急がせず、着実に冒険を進めていたのだが……しゃべれない事で、周囲の人間の顔色を伺う能力が磨かれているのか、彼女には俺の内心を見抜かれていたようだ。
「……強くならなくちゃいけないんだ」
ベルウッドが何か余計な茶々を入れようとし、アンネリエがその口に杖をガボッと突っ込んで阻止する。
「うごご!」
『つづけて』
「うん。この前まで年上の人達と冒険しててさ、力不足を感じたから……」
「ほ!ふぁ!うおえっ!」
『それだけ?』
「……その、俺にいろいろ教えてくれた人の中に、守りたい人がいるんだ……いや。俺より強いんだけどね」
ハハハと照れてお茶を濁すが、アンネリエは笑わない。
ベルウッドが杖の頭を吐き出すと、猛烈な勢いで会話に割り込んできた。
「ぶはっ!ぺっぺっ!ケーゴ!それって「コレ」だろ!あの!青い髪の!デカイ女!」
おでこ娘は「コレ」の時にボンキュッボンなジェスチャーをして見せた。
3人は女冒険者が広場に放置された事件を知っていて、俺が助け出すところをも見ていたのだという。
アンネリエは顔を赤くしている。
人間には興味ありません、といったメルルも「男女」の話となると首を思いっきりこちらに向けている。
「う、あ。お、おう!そ、そうだよ!」
しらばっくれようかと思ったが、初めて抱いた女性だ。それも何度も。「違う」と誤魔化す気にはなれなかった。
アンネリエが目を輝かせてパチパチと手を叩く。「一途」なのが受けているらしい。
「はぁーん。アレだな?身体が目当てって奴だろう!このスケベ!」
「ち、ちげーよ!」
ヒューヒュー言いながら鬼の首を取ったように騒ぐベルウッドは、不意に近くの茂みが物音を立てたのにビビって飛び上がり、ハタリとその場に倒れて死んだフリをした。そして何も起こらないのを確認してから「脅かしやがって……」と呟き立ち上がる。
俺はムキになって否定したものの、「愛」だとか「恋」だとかを飛び越えて親密になった事もあり、本当は身体目当てだったのではないかと真剣に悩む。
大いに慌てたアンネリエが、再びガリガリと黒板に文字を書き、バッ!と突き付けて来た。
『ケーゴは、その人が好きなんだよね?』
「ちがうよね。ケーゴはエロ女のエロエロ攻撃にやられちゃったんだよね。ププッ」
アンネリエの杖が呻り、昏倒したベルウッドは朝まで目を覚ますことはなかった。
愛だのなんだの、小難しい事はどうでもいい。アンネリエが言うように「好き」なんだ!と納得して、あの冒険から戻り、シャーロットを抱いて、それを再確認した。
うん。一緒に居てテンションが上がるし、楽しいし、好きだし、気持ちいいし、なんか文句あるか!
……今あの時の会話を思い出している理由は、自分でもぼんやりとしかわからない。
「オイ少年……ちょっといいか?」
看守が覗き窓越しに話しかけてくる。
なんだよ、と相手してみれば、ねーちゃんの話題だった。彼はまずシャーロットの容姿を褒め、それから身体を褒めて、ぶっちゃけ映画を見てから夢にも見たと告げてきた。
「お前、マジであの女と寝たの?」
「お。オウ」
「やっぱガチか~。フェイクなんじゃないかって意見もあってさ。スゲーなお前」
「スゴくねーよ。俺、ねーちゃんしか知らないんだ」
「それがスゲーよ。最初の相手がアレで、搾り取られる防戦一方じゃねーんだもんよ」
そういうものなのか。いや、実は俺自身も、並ならぬSEXの才能があるんじゃないかと思っていた所だった。
妙に砕けた感じに話しかけられ、持ち上げられたこともあり、気をよくして会話にのめり込む。
やっぱり男同士でするトークは下世話になるが、だからこそ女子とのトークよりも数段楽しい。
「に、兄ちゃんは違ったのか?」
「当たり前だろ。俺も筆下ろしは年上相手だったけどさ、もっと全然年増で、今の俺があの場にいたらぜってー止めさせたようなのが相手だったよ、見た目も全然好みじゃねーの。でも瞬殺だったもんな。何もできなかったよ。お前はいいよなー……」
これはねーちゃんを褒めているのだろう。羨ましがられて得意になり「へへっ」と笑って返すと、男は顔を寄せて耳打ちしてきた。
「で、どうだったんだよ。いや、見たからわかるけど、折角だから生の感想を聞かせてくれよ?よかったんだろ?」
「ねーちゃん、スッゲェ気持ちいいんだ。ちんこが溶かされたかと思った。なんかこう……受け身の達人みたいな感じで、その気にさせるのが上手いのかもな。声でかいし、愛液の量も凄いし……」
「全身汗で光ってたもんな。お前知ってるか?アソコの濡れが良い女は、汗っかきなんだぜ」
へーと感心する。言われれば思い当たる節がある。水気が多いのだろうか。
「匂いはどうだった?やっぱキツイのか?スケベな女はマンコが臭いっていうじゃん?」
言うのか?
んーと腕を組む。ねーちゃんの体は好きだが、アソコの匂いはどうか?と言われたら……。
「エロイ臭い……だよ。あのあと1日は鼻に残ってた。最初顔付けた時は驚いたけど、直ぐに慣れたし……みんなあんなんもんじゃねーの?」
身体はいい匂いだよ、と付け加えてシャーロットの尊厳を守る。
臭いフェチである自覚はないが、匂いを思い出すと実体験が脳内再生されてしまい、さっき出したばかりなのにまた「元気」になってきた。
「ねーちゃんは……やっぱスケベかな?」
「ヤバいね。あの女はヤバい」
ねーちゃんはスケベな女だと言われたのに、貶された気がしないのは何故だろう?
シャーロットを性の為だけの人格として扱っているようで凄く悪い気がするが、「いいだろう!」と自慢する気持ちも沸いてくる。
俺の感覚が異常なのだろうか?
「おい……映画観るか?」
「え?見れんの?!」
「ロンズデールさんがさ、ここだけの話だぞ……あの人スゲー性格悪いから、嫌がらせのつもりで映写装置整えてあるんだよ。で、見るか?」
「見る」
じゃあこっちに来いと言われ、独房の鍵が開かれて外に出る。脱走を警戒されていないのは、ねーちゃんを人質にとっているからだろう。
もう少し悩んだ方がよかったか……いや、自分の気持ちには正直であるべきだ。
俺は、あの映画を見ても、全然まったく微塵も、ねーちゃんを軽蔑していない。汚されたからもういらないだとか、興が冷めただなんてこれっぽっちも思ってない。
濡れ場の数々を鑑賞した時も「奇麗」と「エロイ」意外は……エグイと思う所があった程度で、彼女のイメージは保たれたままだ。
今またアレを見れると知って、股間のテンションはダダ上がりで自然と歩みがスキップに成った。
「なぁ、兄ちゃん」
「ん?なんだ?」
「俺さ……本当なら怒るべきだよな?」
「え~っと、そうか?」
「ほら、彼氏としては、彼女の尊厳が踏みにじられているんだし……」
「あー……そっちか。うーん。まあ、「見るな!」とは言いたくなるかな。「見ていいのは俺だけだ!」みたいなさ」
「!!」
その言葉は暗い迷いに光を差した。
「見たい」と思う事自体は、全然おかしな感情じゃないんだ!と己を奮い立たせる。
彼と並んで歩き、映写室に入ると、フォーゲンがポテチを手に座っていた。
隣に座り、食べるか?と差し出されたポテチを食べる。
看守がジュースを持ってきて隣に座った。
そして3人で大いに盛り上がった。
この映画が凄いのは、気になった所を止めたり、巻き戻したり、どうでもいいところは早送りできる事だ。
「ちょ!今の!も一回!!も一回だけ!!」
昨日見た時はガザミもいたからブレーキがかかっていたが、今は興奮した3人の雄しかいない。お気に入りのシーンを連続で再生しつつ、事後の部屋には兄弟同士のような一体感が漂う。
「ロンズデールさんが今日からこの子を虐めるんだとさ……性拷問だってよ。ヤバいよな」
「フッ……シャーロットでは到底抗えまい……」
俺も、直ぐメロメロにされるシャーロットの姿が容易に想像てきてしまって、「ねーちゃんはそんな拷問には屈しない!」とは答えてあげれなかった。
独占欲や所有欲から、それらを侵害されたことに対する怒りを覚えるが、そこを怒るのはあまりにも身勝手すぎると思って、それは伏せておく。
勿論チャンスが有れば、あのロンズデールの奴をぶちのめすつもりだ。ねーちゃんの分も一緒に、拳に乗せて叩き返してやろう。
「たぶんねーちゃんは……色々悔しいだろうけど、俺達に軽蔑されるんじゃないかって、それを一番気に病むと思うんだ。でも、俺は全然だよ。ねーちゃん好きだもん。どんな姿を晒したとしても、絶対に見損なったりしないさ」
それは、まったく嘘偽りのない本音だった。その時点では。
◆拷問 一日目
鳥の囀りが聞こえて目が覚める。
気怠く、熱っぽく、ゲーム開始の朝を最悪のコンディションで迎えることとなったが、どんな目に合っても3日の間凌げば助かる。そんな精神的余裕があるおかけで、顔を上げて前を向くことができた。
形式だけのノックの後、爽やかに微笑むロンズデールの顔をみる。
彼はカメラを背負った軍人を従えて入室し、撮影指示を出した後で再びこちらを振り返った。
「冒険者のお嬢さん、お目覚めですか?」
寝起きから最低の気分にされた私は、彼に背を向けて、足枷の鎖を引きながら鏡台に座り、髪をすきながらその存在を完全に無視する。
「ぐっすりとお休みになった様子ですね。さぞ気持ちが良く満足のいった自慰行為だったのでしょう!」
「うぐぐっ」
見られてるのは知っているし、覚悟の上での苦肉の策だったが、デリカシーゼロで直に言及されれば、やっぱり羞恥して頬が火照ってしまう。
何か言い返してやりたいが、黙って身支度を続ける。
「さあ、本日より性拷問を開始しますが、心の準備は宜しいですか?初日ですからね、少しばかり恥ずかしい思いをしていただく程度に留めましょうか。さあ、何が良いですかね!」
ロンズデールは、人を不安にさせる事に特化したような物腰と表情と口調をしている。本当に腹の立つ相手だ。
「……好きにすれば?」
私は余裕を漂わせ、イイ女を気取って項に手を差し込み、後ろ髪を持ち上げてから両手で横に広げるように流してみせる。
必ず耐えてみせる。こんな奴に屈したりしない。
「おやおや、一晩で元気になりましたね。何かいいことでもあったんでしょうか?」
「別に。考えれば考える程、アンタみたいなド変態のイヤな奴に屈する理由が無いって気付いただけ。だってそうでしょ?「たった30日」持てばいいんだもの」
ガモとの計画がバレているのかとドキリとしたが、咄嗟の挑発で切り返した。ロンズデールは涼しい顔をして「ハハハ」と笑っている。
「私もね、一晩考えたんですよ。貴女のような女性をどうやって壊そうかと……何しろ、外科的に手を加えてはいけないと、強く強くボルトリックさんがおっしゃってまして……出来ることが限られているのです」
ロンズデールはコツコツと部屋を回るように歩き出し、私はそんな彼を視界に捉えるために首を巡らせていく。
「まず、レイプは基本中の基本ですね。問題は相手でしょう。人であっても、醜悪な見た目をしているとか……は如何でしょうか?」
揺さぶりをかけているつもりなのは分かっている。昨日ガモが救いの糸を垂らしてくれてなければ、どれ程惨めな精神状態になっていたか想像に難くない。それだけに、彼に対して怒りが湧いてくる。いいでしょう、口喧嘩でもなんでも、受けて立とうじゃないの。
「ん?何?ええと、シンデールさんでしたっけ。つまりアナタが私を抱くって事?それは確かに鳥肌だわ」
やらしい目でこっち見ないでよ!気持ち悪い!汚らわしい!このスケベ!と付け加えてから、身体をガードするように腕を交差させて自分を抱いて見せた。
ピクピクとコメカミを震わせたロンズデールは、フフッと鼻で笑って平静を装っているが……おそらくは顔の傷にコンプレックスを持っているようで、そこを突かれた屈辱にブルブルと震えている。
「ああ、そうですねぇ。貴女が苦痛を感じるのであれば、それも候補に数えましょう。30日もあるのですから、全てのアイディアを試す事が出来るのです。となれば……人よりもまずより下等な生き物にレイプされるところから始めましょうか。例えば……犬などは如何でしょう?」
「なっ……!?」
ロンズデールが手を叩くと、黒短毛の大型軍用犬を引いた男性が入ってきた。その犬は既に何らかの処置によって興奮状態にあり、私と目が合うや否や跳ねるようにしてこちらに駆け出す。そのあまりの迫力に、私は悲鳴を上げて尻もちをついた。男性が両腕の血管を浮きだたせながらリードを維持して踏ん張ってくれたおかげで、涎をボトボトと落としながらハァハァと牙をむいているその犬の鼻先は私の30センチ手前で止まった。
チラリとそのバキバキに勃起しているペニスを見れば、ガモのよりもずっと長大で、へんな瘤が付いている逞しいもので……どんな調教を行ったのか、人間の女を性的に襲うように訓練されていることがハッキリと理解できた。
背筋が一気に冷える。
「おやおや。どうしました?顔色が優れぬようですね。さて、この後の段取りですが、人と犬が愛し合う姿など滅多に目にすることはできません。いくら無数のカメラで撮影し、後日それを公開するのだとしても、それだけでは勿体ない!そこで、この敷地の中庭に二匹の……おっと、一人と一匹のための檻を用意いたしまして、そちらに入っていただき、心ゆくまで真実の愛に陶酔していただく事に致しましょう」
彼は満面の笑みを浮かべておぞましいセリフを吐き出し続け、絶句する私の顔を覗き込む。
「犬の次は馬。馬の次はオークを予定しています。さあ、この先は貴女の頑張り次第ですよ!もしどうしても人間の男性に愛してほしくなった時には、大声でおっしゃってくださいね!」
新たに3数名の部下が入室し、私を押さえ、ドレスに手をかけてくる。抵抗を試みるが、単純な腕力差に屈して脱衣させられてから犬と揃いの首輪をはめられた。
「さあ、四つに這ってください。今から犬とSEXするのですよ。貴女自身が犬に成り切らなくてどうするのですか!」
「誰がそんなっ!やめて!触らないで……!」
腕を引かれ、頭を掴まれ、ぐぐぐ……と四つに手を付かされてしまい、屈辱に歯噛みする。
ロンズデールは私を眺め、わざわざ1周半して後方で立ち止まった。
「良い眺めですねぇ。君も御覧なさい、この突き出された大きな尻を。実に無様です。しかし、何か心に迫るものがありませんか?古代人が巨大な尻を豊穣のシンボルとしてあがめた理由が分かる気がしませんか?」
「くっ……!」
変態男になんと蔑まされ笑われようと、私は傷付かない。ケーゴが好きだと言ってくれたし、フォーゲンだって、ガモだって、きっと……!
「いやいや、しかしこれは犬ではなく、馬から始めるべきだったかもしれません」
ロンズデールの言動に、その場にいた男性4人が声を上げて嗤った。私にできることは、頬の火照りも構わず、全然平気な顔をして、頭を下げずに毅然と前を向く事と、絨毯を握りしめる事だけだった。
「いやいや。あんまり笑っては彼女が可哀想です。私は本当に良いお尻だと感心しているのですから。君、写真機を」
それから、ロンズデールは四つん這いの私の姿を後方から撮影し始めた。パシャリ!と耳に残るシャッター音が何度も何度も聞こえて、その度に光が浴びせられる。口を真一文字に結んで身を固くし、辱めに耐える。なんて幼稚な奴らだろう。
「君、ちょっと手を貸してください、彼女の尻臀を左右に開いて……そう、そうです!」
「あ……!」
より恥ずかしい所を晒され、写真に留められて、羞恥に脳が蕩けだす。
「腰を高く……下腹を持ち上げて……そう!そう!いいですよ!奇麗なマンコですね!」
シャッター音の一つ一つにきゅううん!と下腹が緊張して答え、視線を集めた膣が震えた。
「ああ、いい写真です。凄くいい写真ですよ。でも、これではこの素晴らしい裸体の持ち主が誰なのかがわかりませんね。お顔も撮りしましょうか!」
頭を掴まれ、頬を掴まれ、首を捩じるように強引に肩越しに振り向かせられて、一枚写真を撮られる。
カメラのレンズに顔を向かされ、光を浴びてしまえば、カッと身体が火照り出して、次からは魅入られたように自分で振り返った姿勢を維持してしまう。
シャッターの音と、恥に汗ばんで震えた私の身体が出す吐息だけが室内に響く。
延々とそれを続けられ、そこに、愛液が滴り落ちてポタリポタリと絨毯を穿つ音と室内にいる男性陣の荒い鼻息が混じり始めた。
恥ずかしい。
すっごく恥ずかしい。
すっごくすっごく恥ずかしい。
淫感を我慢できなくなってきて、もぢもぢと滑る内腿をすり合わせ、お尻を振って男性を誘い始めてしまった。
火照ってどうしようもない下腹を、触ってほしい。このままじゃ自分でし始めてしまう。
腰がブルブルと震えだしたのを皮切りに、全身に変な病が回ったみたいな強直と痙攣が起こり出す。
「あん……っ」
身悶えして仰け反り、お尻を下げてはウン!と突き上げ、また下げてはウンッ!と突き上げて、褒めてもらった女性器をアピールする。
虐めてくださいなんて、口に出しては絶対に言えない。
そこにまた無情なシャッター音とフラッシュが浴びせられた。
「さ……わっ……て……」
堪え切れず、吐息に紛らわせて小さく呻く。言っちゃった後で、顔から湯気立たせる程恥ずかしい行為であるのを自覚したけど、誰にも聞こえなかったのか、シャッター音と、閃光だけが帰ってくる。
とても二度目は口に出せそうになくて、ひぃん!と泣いて、お尻を左右に振リ回していく。
「おやおや。どうしました?動かれると撮影ができません」
怒られてもお尻を振り続ける。今や、勢いよく腰を切って、それで揺れる尻肉の振動が膣やクリトリスまで微かに響き、ちょっとだけ心地よく感じる程になっていた。
「はぁ!あっ…あっ…あっ…!」
泣きながらお尻を必死懸命に振る。あちこちに愛液を飛沫させて、見えない誰かに犯されているような腰振りオナニーを続けながら、すぐそこでリードを持っている男性軍人に向かって、「助けて」と目で訴えた。
「仕方がありませんね。記録映像として毎日行う写真撮影はここまでとしましょう。では、今の貴女は犬なのですから、お散歩に行きましょうか」
「や、やんっ!!そ、それは……!」
こんな姿で誰がいるともわからない野外に出る!?
恐怖感で頭が少しだけ冷えて、理性が私に「ケーゴ達も見に来ていたらどうするの!」と懸命に訴えかけてきた。
身が凍り、動くのを拒否する犬のように首輪に抵抗する。
「だ、ダメ!ダメーーーっっ!!」
「何がダメなんですか?嘘はいけません。悦んでいるじゃあないですか」
また写真機が音と光を放つ。そして吐き出されたフィルムを突きつけられた。
私のソコは挿入を求めて充血し、開き、ドロドロに滑り光っている。太ももまでびっちょりだ。
それが自分の姿だなんて、到底認められない。嫌っ!と叫んで視線を切る。
「う、嘘よ!そ、そんなの嘘!」
「言う事を聞かないのであれば、試合放棄とみなしますよ?」
お尻を何度も叩かれながら、廊下に出る。
あんあんと泣きながら冷たい床をお犬歩きで進み、角を曲がったところで、少年兵の一団に出くわした。
彼らが「うわ!」と驚き、それに「きゃあっ!」と声を上げて固まってしまうが、尻を蹴られて促され、彼らの前を通過する。
歩く度に腰を大きく振らなければならず。乳房が揺れる。尻肉が揺れる。お腹の肉も揺れる。そんな姿を見られている自分を第三者の目で想像してしまい、少年兵10数人からの視線に貫かれて、愛液を股から溢れさせた。
手で覆い隠そうとして、また尻を蹴飛ばされる。
「あれって……映画の……」
「本物だ……」
「おっぱいすっげ……」
「尻デカッ!」
「なんだよ。デブなだけじゃん」
ケーゴと同じ年頃の彼らが私の身体を見てどう感じているのかが気になって、その一言一言を意図的に聞いてしまう。好意的な感想に混じり、時に辛辣な声が耳に届く。
「恥ずかしい所を見られてしまう妄想」は自慰の際に何度となくしてきた。そんな淫夢を見ることもしょっちゅうだ。
妄想の中でだけなら、すっごく昂って、気持ちよくなるのだけど、実際にそんな状況下に置かれて、想像じゃ到底たどり着かない異常な精神状態になる。恥ずかしすぎて、全身をビンタされたような痛みを感じる。汗が噴き出て、毛が逆立って、心臓がバクバクと鼓動する。
ショック死だってしかねない。
それなのに、それが、恥ずかしいのが、気持ちいいのだ。
「あぁあああーーーんっ!いや!だめ!しんじゃうーーーーーぅ!」
エッチな気分に囚われて、皆の前でお尻を振って甘える。こんな快楽を知っちゃったら、もう以前の私には戻れない。そんな恐怖が沸き上がったけれど、直ぐに吹き飛んでしまった。
「やれやれ……まだ散歩は始まったばかりだというのに。仕方ありません、ここで課外授業と行きましょう。ええと、君たちは?」
「は、ハイ!今期から配属され、1週間前から研修中の123期性、15名であります!!!」
な、何!?課外授業って!
不安と期待に胸を揺らしながら、その場で震え続ける。
「女性の身体を知る者はいますか?」
ドッキンと心臓が跳ねた。顔を上げて少年兵全員を見上げれば、彼らは一人残らず顔面を紅潮させ、軍服のズボンを突き上げる程に勃起しながら「いません!!」と返事した。
「わかりました。では女性器の造りについて学んで頂きましょう。次の訓練先にはロンズデールに特別講習を受けて遅れたと言えばいいですよ」
「ハイ!」と返事を揃えた彼らは、ロンズデールに招かれ、私の後方に陣取り、屈みこむ。
「外性器には個性がありますが……御覧なさい。まずはこの豊かな大陰唇です。ぷっくりと膨れているでしょう。外部からの衝撃から性器を守っているのだと言われています。指で押してみなさい」
数名がそこに触れ、ぐにぐにと押し込んで、感嘆の声を上げる。愛撫と勘違いした身体が悦んで小陰唇が腫れて、一層その口を開いた。
「柔らかいですか?エアバッグのようなものです。そう、彼女は肉付きが良いので、通常個体よりもモリっとしています。誰か、強めに蹴とばしてみなさい」
バシン!と股間をけり上げられ、身体が跳ねる。
「いたぁい……」
すすり泣いて抗議するがもう一人が調子に乗ってまた強めに股間を蹴り上げてくる。
「ひぃ!!」
「これが大陰唇の防御機構です。ですから陰毛が茂るのですね。さて、より効果的に打撃を加えるなら、それを開かせればいいのです」
少年兵が二手に分かれ、私の足を左右に開かせる。そして、一人がつま先を立ててメリッ!と私の股間を蹴り上げた。
「あぎい!!」
ガツンと恥骨まで響く痛み。四つん這いを維持できず、両手で股を押さえて床に転がる。残酷で正直な子供たちは私の醜態を見て興奮気味に笑った。
「ほら。まるで効果が違うでしょう。さあ、彼女が腹を向けてくれたので、正面から見てみましょう。男女が愛し合う場合、この向き合った状態を正常位と言います。そして大陰唇につらなるのがこの恥丘です。手をどかせてください」
鼻息荒い男の子たちが私の腕を引く、やだ!だめ!と下腹を隠し続けるが、また蹴とばすぞ!と脅されて手をどけた。
男の子たちと顔を向い合せながら、濡れた股を広げて見せている。こんなんじゃ100人中100人が私を痴女と罵るだろう。
一人だけ優しい子がいて、私の赤く腫れた大陰唇をそっと撫でている。それが気持ちよくて、腰をくねらせた。
「なんだよこのモリマンw」
「そうです。もりあがっているここは、やはり外部の衝撃から性器を守っています」
今度はロンズデールが何も指示しないのに、ムカつく顔してる馬鹿男子が手刀を振り下ろした、鈍痛と衝撃に「うっ!」と呻く。
そしてまた優しい子が撫でてくれる。彼の顔を見る。うん、犬のような顔をしたかわいい子だ。私はその子だけを見て瞳を潤ませ続ける。
「さて……一見して目に付くこのビラビラが小陰唇です。基本的に閉じていて、尿道や膣内への雑菌感染などを防いでいます。グロテスクですか?彼女のはすこし大きいですが、十分に奇麗な形をしていると思いますよ」
「ロンズデール教官!」
ムカつくガキが手を上げ、発言の許可を求める。
「はい。なんでしょう?」
「この女のビラビラは閉じていません。これでは……ここや!ここが!守れません」
「あっ!あっ!」
まさに甲皇軍の申し子ともいえるクソガキが、「これ」「ここ」の時に爪の手入れをしていない不潔な指で、尿道口と膣口を強めに突いた。膣口は彼の指を勢いそのままに第二関節まで飲み込んで、ぎゅん!としゃぶるように締め付ける。
「はい。指はそのまま、彼が先ほど指示してくれたのが尿道口。そして今指が入っている所が膣口です。主にペニスを入れる用途で使用します」
今の説明のどこにギャグがあったのかまるで分からないが、男の子達は大いに笑い合った。
「そして、小陰唇が開いているのは、彼女が性的に興奮しているからです。閉じていては性交は出来ません。ですから、女性の身体は興奮するとここが腫れ、開き……そしてこのように滑液を分泌します」
「へぇ~」との声が上がる中、クソガキは得意な顔をして指でピストンを始め、私は両手で口元を覆って喘ぎが漏れないように必死に責めに耐えていた。
粘調度の高い愛液が掻き出され、指を抜いた彼は皆に糸引くそれを見せる。
「ハハハ。そうです。滑液で溢れているでしょう?彼女の場合は、誰かに開発されたか、自慰に励んだのか、膣中の感度を高めているようです。では皆さん、全員必ず一回は指を差し込み、中を触ってあげてください」
「ひぅ!あ、待って……あ、あ!」
心の準備が出来ないままに、代わる代わる指を差し込まれ、刺激されておもちゃにされる。悔しいとか悲しいとか、自分が可哀想だとか、そんな負の感情が高まって涙が出てくるが、それらよりももっと大きいのが羞恥と性快感と、言葉にできない幸福感だった。一人目から仰け反り、悶え、叫び、喘いで、潮を吹いて、全身を痙攣させた。
一巡を終えた時には、私は足をM字に立てたまま仰向けに倒れ込んでいて、呼吸は咳き込むほど荒く乱れ、視界は霞み、平衡感覚がくるって浮遊感の中を漂うほどにトリップしていた。呼吸が喉につかえて、なんどかおえっと吐きそうになる。
「さて、ここで少し手違いがありました。実のところ、膣はそこまで強力な性感帯ではありません。ですから、当初の予定は「そんなに気持ちよさそうではないでしょう?」と進む予定だったのです。彼女がこんなに淫らに感じるとは……予想外でした」
またどっと笑い声が起き、私は彼らの前で顔を覆った。
「さて、話を戻しましょう。ちゃんと感じさせようとした場合には、ここを責めます」
ロンズデールはその細長い指をしならせ、陰核をバチン!と弾いた。「ひぃ!」と声を出してしまい、反射で腰が浮いて、愛液を拭き散らす。
彼は指でソコを摘まみ上げ、クリクリと指の腹で転がして擦り、クイッと小さく引っ張ってから責めを終える。
子供たちの前で飛び跳ねて感じ、涎を垂らして全身を痙攣させ、呼吸困難に陥ってからパクパクと魚の様に口を動かして、またプシャッと潮を吹いた。
「この潮吹きも、恐らくは誰かに膣内を開発された名残でしょう……勿論、男を悦ばせようと彼女自身が身に着けた可能性も否定はできません。生まれつきの体質の可能性もあります。では、最後にクリトリスを舐めてあげましょう。臭いかもしれませんが、希望者はいますか?」
臭い、と言われてハッとなり、顔を上げて少年たちを見る。3人程を除き、殆ど全員が手を挙げていて、その中にはあの優しい子もいる。一歩前に出て、ハイ!ハイ!と過剰アピールを続けているのは、例によってムカつくクソガキだ。
ロンズデールは「この後も散歩があるので彼女が昇天してしまっては困りますから、舐めるのは一人だけです」と余計な前置きをしてからクソガキを指名した。
彼は私の両膝に手をかけて座り、ぐっと開かせてから、恥丘に平手打ちをする。
ケーゴだってそんな事しない。なんでお前ごときが得意そうな顔をして、好き勝手するのか。
「へへっ……」
彼は周囲の仲間を見回した後、ガバッと股に顔を埋めた。
子供のころからこんな下品でいいのかと思うほどに顔面で舐めるように、ねっとりと鼻を淫裂に擦りつけてくる。
「うわっ。臭っw」
そして、彼は鼻をつまむオーバーアクションで私を嘲った。かあっと赤面しながら足を閉じる。
「じ、じゃあやめてよ!馬鹿っ!」
「おい!お前らこの……このブタ女を押さえつけろ!!」
抵抗しようにも、さっきのリンチで身体に力が入らない。
腕を押さえられ、足を広げさせられ、そのドサクサであちこちを触られる。
「あああーーーっ!!!」
一人二人ではない手によって弄られて声を上げ、クソガキにクリトリスをキスされ、吸われ、舐められだした頃には、もうすっかりトンでしまっていた。
「あっ!じ、じょうず!んっ!ひぃ!あ、あ!あ!あ!あう!んんっ!はぁ!うんっ!き、きもちいい!きもちい!や、やあ!やめないで!はう!い、イッちゃう!イッちゃううう!!!」
腰を上げて彼に股を擦り寄せて甘えながらオーガズムに達し、もっともっとと懸命におねだりする。周囲には精の匂いが漂っていて、男の子たちの何人かが射精しているのはわかっていた。そんな彼らと繋がりたくなり、犯されたくなって泣き叫ぶ。
「お、おちんちん!おちんちんいれて!」
はぁはぁと、その場にいる全員の中で一番に息を乱しながら、自分で陰唇を広げて膣口を見せる。恥ずかしいのが気持ちいい。
「こ、ここ!ここに!ね?おねえさんに、皆のおちんちんをいれて!!」
「ハハハ。上出来です。さて、今回の講習はここまでとしましょう」
「ひぇ!?」
これから!ってタイミングで、ロンズデールが手をたたいて終了を宣言し……、これ以上訓練に遅れないようにと少年兵達を急かして、赤い顔を並べた彼らは「ありがとうございました!」と声を張り上げ、恥ずかしさから逃げるようにその場を去っていった。
「ええ!?」
ショックのあまり、一人で「くぱぁ」をしたままフリーズする。
ロンズデールは写真機を手に、私に向かってまたフラッシュを焚いて、我に返った私は大慌てて足を閉じる。
「困りますよ。彼らはまだまだ子供なんですから……ちんちんをお強請りするなどと……」
「は、はいっ。す、すいませんっ」
全身が羞恥の炎に包まれ、必死に手団扇でパタパタと仰ぐ。神経の乱れから大量の汗が吹き出してきて止まらない。
「やれやれ……今の貴女は犬のペニスにも大悦びで喘ぎそうですね」
「うぅ……!」
本当に悦んじゃいそうで自分が怖い。
再び散歩が再開され、私はいつのまにか、後ろを歩いている男性四人に見せるためにお尻を振って歩いていた。
その後も何人かとすれ違い、遂に建物の外に出る。
火照った全身にぶわっと吹き付けられる外気で、アクメしそうになる。
「ほら、御覧なさい。あそこに檻が設置されていますね。もうあんなに観衆が集まっていますよ」
「はぅ、あっ……ああんっ!やああっっん!!!」
言われるがままにその光景を見てしまえば、否応なしに檻の中で沢山の男性に見られながら犬とエッチする自分を想像してしまって、私は叫び声を上げながらオーガズムに達し、そのまま無様にも意識を失った。
「一日目もまだ午前中だと言うのに……やれやれ。これでは見世物にもなりませんねぇ。君、集まっている連中にショーの中止を伝えてきてください。多少の文句は出るでしょうが、この記録をボルトリックさんに渡して編集してもらい、上映会に変えさせることとしましょう」
◆ガモ
俺はロンズデールに呼び出された。
まさかシャーロットが喋ったのではあるまいか?と多少緊張したが、その時はその時だ、ヤツの首を掻き切るなりして消えればいいだけの話なのだと腹を決めて彼の部屋に入った。
ロンズデールは、何か満足がいく拷問を行ったのだろう、嘗てないほどに嬉しそうな笑顔で要件を伝えてきた。
どうやら裏切りがバレた訳ではなさそうだ。
「やあ、済まないが急ぎの用事なんだ。昨日の夜から先程までの、この映像を編集して欲しい。ボルトリックさんには宜しく伝えてください」
フィルムを手にボルトリックの部屋を尋ねる。
彼は軍のツケで呼んだプロの女3人とベッドを共にしていたが、ロンズデールからの仕事だと聞いて飛び起き、女共を蹴飛ばして追い払う。
「今日の夕方までには上映出来る形にして欲しいと言っていました」
ボルトリックは「かなわんなぁ」とボヤきながらも、馴れた手付きで編集作業へと入る。
俺たちは慎重だ、この部屋も「監視」されている可能性を考えて、「裏切り計画」の相談は一切しない。
共に映像を見ながら、昨晩の自身の演技に違和感がなかった事を確認する。
シャーロットの奴は、美味いこと自慰に見せかけて鍵を手にして仕舞い込んだようだ、が、その後のオナニーは、これ本気だろ。
「まったく……毎度毎度よくやるもんだ」
「ホンマになぁ……」
俺とボルトリックは同時にズボンを脱いで、作業を続けた。
画面の中のシャーロットを見ていると、実際には抱いたことのない女であることを忘れそうになる。
「この女は俺のものだ」とまでは言わないが、何かこの女に関しては、甲皇軍の連中よりも、「権利がある」気がするのが不思議だ。
共にダンジョンを攻略したからだろうか。
あのパーティーが異様にアットホームだったからだろうか。
情が移ってしまっているようだ……情けない。
このまま本当に犬に抱かれてしまったのかと、多少の喪失感をもって眺めていたが、幸か不幸か、シャーロットが現場を目にしただけで嬉ションのように愛液を漏らして失神してしまったために事なきを得ていた。
軍人たちが、目覚めた後の自慰防止のために手枷足枷を嵌め、シャーロットをベッドの上に放置する所で記録映像は終わった。
「なんやこら!金返せ!」
獣姦を期待していたボルトリックがエキサイティングしている。
仮にそうなっていたとして、それはそれで興味があったが、ホッとしている自分が居た。
そして思った。
「これは3日も持たないであろう」と。
◆ケーゴ
俺は独房の中ですることがなく、筋トレに励んでいた。今のこの時間も強くなるために使うんだ!
何セット目かの腕立て伏せを終えた所で、ガンガンと扉が打ち鳴らされ、扉下部にある小窓が開き、食事を載せたトレーが差し込まれる。
いつの間にかもう夕食時になっていた。
「おい。少年。飯だぞ……そして、今日の午前中の「映画」が届いたが……一緒に見るか?」
答えは勿論イエスだ。ねーちゃんがどんな目に合わされているか、気になって仕方がない。
冒険の映画とは違って、あまり楽しむ気になれないものであろうと、覚悟していたが、「やめろ!」と叫びたくなるような悲痛な映像だった時は、もう「機」を待っては居られなくなるだろう。
映写室に移動する。
「フッ……」
例によって人差し指と中指を揃え立てたポーズのフォーゲンが座っていて、俺はその隣に腰掛けて、夕食を食べながら上映開始を待った。
映写が始まる。
ねーちゃんはドレスを着ていた。綺麗な姿だったので、すこしだけ気を楽にする事ができた。
「あ、ガモ!」
夕食を届けに来たガモが、ねーちゃんにちょっかいを出す。
許しがたい裏切りに、腸が煮えくり返ったが、師匠は「ほう……」と言いながら目を細めていた。
その後、催淫剤入の夕食を食べたねーちゃんが例によってオナニーを始めると、俺の中の怒りは何処かに飛んでいったが、映画にはねーちゃんが可哀想になる場面がいくつもあった。
犬とSEXをしろと脅され、犬をけしかけられ、肌からにされて首輪を嵌められ……全部とんでもない虐待で、また怒りが戻ってくる。
「ロンズデールの野郎……!」
「フッ……これは捨て置けんな」
「ああ、こりゃ酷い」
フォーゲンは勿論、軍の兄ちゃんも俺の意見に同意してくれた。
ロンズデールの奴は絶対に許さん……中身が出るまで腹を殴り続け、血反吐を喉に詰まらせて窒息死する様を撮影してやろうか!
「くそ!!!」
肘掛けを叩いて、画面のロンズデールを睨みつける。彼はねーちゃんの屈辱的なそれを写真に収め出している。
「おまえなーっ!!」
返せ!と叫んで席を立ち、なだめられてまた座る。ポテチを貰って、それをバリバリと頬張り、またどかっと座った。
絶対に絶対に許さん。五分刻みで解体して、豚の餌にしてやる!
「うあああ!ぜってー殺す!!」
叫びストレスを発散し、画面を睨む。と、ねーちゃんに変化が現れた。
恥ずかしがっているのはわかる。そりゃそうだ、すっげぇ恥ずかしいだろう。
カメラが顔を映せば、瞳を濡らして、息を震わせ、「あっ」と色っぽい声を上げ始めている。
「ん?」
カメラが引き、全身を収める。肌が濡れてキラキラと光っている。汗ばんでいるんだ。そして震えている。
視点が回り込んで、ロンズデールが見ているものと同じものを映す。
シャーロットの……。
おマンコは……。
濡れていた……。
ドロッドロのぐちょっぐちょんだ。
ねーちゃんが、身悶えしながら「触って」と強請りだす。
まさかの展開に、俺の中の怒りがまた全部性的興奮に変換されて、別にロンズデールのクソサイコ野郎を応援するわけではないが、健全な視点に切り替えて映画を見ることにしてしまう。何事も勉強だ。
甘えて泣くねーちゃんの誘惑を退け、ロンズデールは「お散歩」を敢行する。なんって酷いやつだ!まったく信じられない!これからどうなるんだ!?
フォーゲンと軍の兄ちゃんが隣でズボンを脱ぐ。
万が一に備えて、俺もそれに倣った。
「大丈夫か!?これ本当に大丈夫か!?」
とんでもない格好で廊下へと踏み出したシャーロットを見て、師匠が素の声を出している。
「いや、でもねーちゃん結構持ってるから、うわ!?」
最初の曲がり角を曲がった所で、早速少年兵の一団とエンカウントした。ねーちゃん持ってなかった。
もし俺が……ねーちゃんを「犬の散歩」させるとして……こんな場面になったらどうするんだ??
リアルに想像してしまう。俺は首輪を彼女の首付け、散歩に行こうぜ!と誘うのだ。誘い方はどうしようか?そうだ!夜にしよう。深夜だから誰も居ないから大丈夫だと説得すれば、シャーロットは顔を真赤にしながらも何故か言うことを聞いてくれるだろう。うん。興奮する。
そして宿を抜け出し……。
「うおお!?」
シミュレーションで路地裏に入り、そこで、アンネリエとメルルとベルウッドに見つかる場面を想像してしまい、焦って妄想を終了した。
俺がこれほど恥ずかしいのだ、ねーちゃんがまともな精神でいられるはずがない!
「ねーちゃん!逃げるんだぁ!!」
思わず映画の中のシャーロットに指示を出すが、彼女が逃げ出せるはずもなく、その場でロンズデールは女性器勉強会を開きだした。
まったく読めなかった展開だ。
「そうきたか……!そうきたかァ……!」
同世代の奴らがねーちゃんを雑に扱っている場面場面で怒りがピークに達するが、勉強会の内容そのものはためになるものであった。
映画は終了し、隣では一足先に賢者モードとなったフォーゲンと兄ちゃんが、遠くを見ながらタバコに火をつける。
「うわあ!ちくしょう!ちくしょーっ!!」
俺は脳裏に焼き付いてしまったねーちゃんの痴態に抵抗できずに、乱暴に自慰をして果てると、そのまま冷たい床に身を投げだした。
「フッ……お前は悪くない……」
「なぁ……師匠……」
「フッ……なんだ?」
「神はどうして男と女を創ったんだろうな……」
「そうだな……」
裸の賢人二人がボソボソと気怠げに言葉を交わす知的空間となった映写室の扉が不意に開く。
そこには「僕にも見せてよ」と言わんばかりのホワイト・ハットが立っていた。
もちろん二週目も見た。
仕事があるからといって軍のにーちゃんが抜けた後、機械の操作を覚えていた俺達は自発的に三週目を上映する。
三回目にもなれば冷静により深く映画を観察することが出来た。
そこで、フォーゲンがこっそりと耳打ちして、「ガモが何かをしている」と教えてくれた。
本当だった。よくよく見ると、微妙な違和感がある。ねーちゃんの表情が、それを肯定している。ガモは裏切ってなどいなかったのだ!
上映会終了後、心地よい疲労感に包まれ、3人はのんびりと夜食をつついていた。
「フッ……どうやら「機」は近いようだ。ケーゴ、滅多な真似はするなよ?」
「わかった……」
「ところで……どうして甲皇軍はおっぱいを責めないのでしょうか……?」
「冷静さを失えば、それだけ仲間を窮地へと追い詰めることになる……いいな?」
「も、もう大丈夫だよ……」
「お姉さんは、乳房もばっちり開発されているのに……もったいないと思いませんか?」
ホワイト・ハットがマイペースに人の話を聞かない中、俺は初日の締めとして、決め台詞を繰り出した。
猥談で盛り上がるのはここだけの話で、ねーちゃんを助けた後は、彼女に対して紳士的に振る舞わねばならないからだ。
「たぶんねーちゃんは……色々悔しいだろうけど、俺達に軽蔑されるんじゃないかって、それを一番気に病むと思うんだ。だから、俺達はねーちゃんをそんな目で見ないように、ホラ、ええと。うん。いやまぁ、実際ぜんぜん、ねーちゃんはねーちゃんだし、俺はそんな目で見てないけどね!」
それは、少しの優しい忖度を含んだだけの、99%嘘偽りのない本音だった。