江頭2時40分
クールに何でもこなす彼女に初めは憧れていた。この人にできないことなんてないんじゃないんだろうかなんてそんな風に思っていた。でも段々と嫌になってきたんだ。この人には感情がないんじゃないんだろうかって。もちろん彼女は笑う。嫌な時には嫌だとはっきり言う。それでもあまりに完璧なそれは、中途半端にしか生きていない僕には眩しすぎた。会う頻度は少しずつ落ちていって、それでも月に一度くらいは会っていた。
その夜の計画はこうだった。夕方から女子会があるという彼女を夜中前に誘う。
「今から会おうよ」
案の定食いついてきてくれた彼女に素面の僕と酒を飲ます。そうすればベロベロになった彼女の隙が見れる。そうすればもう一度心から好きになれると思った。待ち合わせ場所に来た彼女は案の定赤ら顔。もう勝ったも同然。そう思った僕だったけれど駄目だった。飲んでも飲んでも彼女はかっこよくなっていくばっかり。どんどん崩れていく僕は「帰ろう」って言った。
部屋に着いた僕は少し乱暴に彼女を脱がせた。電気も消さずに。やったこともないのにブラジャーを片手で外してみたりして。黒タイツだけになった彼女は、正直滑稽だった。
「江頭2時40分みたいだ」
僕の言葉に彼女は冷静なままだった。
「2時50分だよ」
僕は吹き出してしまった。冷静な口調とその格好のギャップがあまりに愛おしかった。
「好きだよ」
僕はそう何度も囁きながら彼女を愛した。思い出しては吹き出しながら、久々に心から彼女を愛したんだ。