姫とであう。
俺は部屋を出た。
多くの意味で堪えられ無かった。
坊さんはいい。じじいだし事情を知ってるようだし。
だが俺は違う。まだ何も知らない若い男の子なのだ。
自宅の床の間で不意にストリップが始まって平気でいられるか。
襖を閉めてもまだばくばくする。
床の間に戻ると姫は青い裸体のまま坊さん相手に談笑している。隠すところを隠すつもりは無いようだ。
視線を合わせないように妹のジャージを差し出した。
「あっはっは。ああ。失礼した。うん。着れば良いのだな。うん。
ところでご亭主。わたしはあなたを何とお呼びしたら良いか。」
青い姫は妹のジャージを着ながら聞いた。
「ご子息。姫がお尋ね...」
「おまえはもう良い。わたしがご亭主にたずねている。」
ご亭主は俺で、俺は名前を尋ねられたのだ。
ジャージは着て貰わないと困るが着たことを残念に思っている
ことに後ろめたさを感じながら胸の膨らみに目が行く。
下腹部の陰りが頭の中にちらつく。
あのジャージの下には何も着けていない。
化学繊維やファスナーが直接肌に触れている感触をどう思っているのだろう。
胸のふくらみ。衣擦れ。
いろいろ、ほんの少しだけ、日常から掛け離れていて妙な気になる。
「ご亭主いかがかな?」
はっとする。
姫が面白そうにこちらを覗き込む。
あからさまに好奇に満ちた目を向け待ち構えている。
まいったな。
「イチロー。イチローです。」
「イチロー。ああ。イチロー様。
わたしを初めて目にしたものは誰でも戸惑うものだ。
わたしは、イチロー様のものになるため生まれた。
まだアカンボウだが既におんなでもある。
文字通りイチロー様の色に染まろうぞ。」