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〜後日談〜

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 後に、キッチンカウンターの下で 座り込んだ状態で意識が戻った時に 手に持っていたピンクの半透明のクリアファイルは、ダンスの曲の歌詞が書かれたプリントに、振り付けを書き留めていた紙を入れていたものだと思い出した。
空っぽになったそれを手にしていた時は、なんか見たことあるファイルだなー…としか思わなかったし、長らく思い出せずにいた。
中身は今も見つかっていない。おそらく、記憶をなくした状態の時に自分が捨てていたんじゃないかと思う。
  なぜなら・・・

 父が亡くなる前から通っていたダンススクールは厳しめで、次々と新しい曲の振り付けを覚えなくちゃいけないので、大変だった。
覚えてしまえば とても楽しいのだが、覚わるまでは、神経がキュウキュウと縮む思いだ。
このピンクのクリアファイルには、振り写し途中のメモ書きをした歌詞のプリントを入れていて、覚え終わるとブルーのポケットファイルに入れ替えていた。
振り写しが完成したブルーのファイルの方は今も中身が残っているが、書きかけの、これから覚えなくちゃいけないプリントだけがない。

記憶を失くし、苦しい本心のままに行動した私が、私の知らない間に捨てたらしい・・・・・
そう思う事象がもうひとつある。

保険証券が保管してあったファイルからも、証券がなくなっていた。
空っぽになったファイルポケットに、油性マジックで意味不明な走り書きがしてある・・・・・

度々来る追加の契約の勧誘やら、保険内容の確認書類の保管やらで、以前から嫌気が差していた。
保険なんか入らなければ良かったと思うくらい 面倒臭くて…
そんな私の本性が暴走して捨ててしまったんだろうなー…と、思う。
こんな変な走り書きをするのは、狂った私しかいない。
 知らぬ間に増えているものは、いつもの自分と変わらないセンス、好みの物ばかりだった。
ただ、似たようなバッグや服は普段買わないようにしたり、本当に使うかどうかを考えてから買うようにしているのに、むやみにカワイイ物が増えちゃってるな〜と、感じる。
こういう買い方は普段の私らしくない。
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 記憶をなくしている間は、理性を失った言動をしていたようだ。

旦那が言っていた…自分に都合の悪い事は忘れる・・・・・
息子が言っていた…個性が暴れる・・・

なんか、家族には迷惑かけたんだろうなぁ・・・色々…
当時のことを旦那、息子に尋ねても、「思い出したくもないなぁ」「うん」と、二人で頷き合っていた。
記憶がない時の 自分の様子を知りたいのに。

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