独りぼっちで寂しがりや
行きずりの見知らぬ男と寝る
実は彼女は生まれた瞬間に
忌み子として当然のように捨てられた
涙を流す間もないまま
独りで生きていく術を考えた
何時からか泣けるようになったのは
誰かに恋をしたからだろう
淡い恋心は踏みにじられて
その相手は非業の死を遂げた
それでも人に恋をし続けたまま
もう10人は殺しただろう
一人ぼっちで寂しがりや
その上何だか臆病になった
なぜなら彼女の愛する人は
いつも非業の死を遂げるから
誰かを失う事に耐えるより
独りでいる事の悲しみがマシ
そう言い聞かせて生きてきたのに
愛する人が出来てしまった
「私のような忌みられてしまった女は
悲しみと不幸を呼ぶ女は
当たり前に人を好きになるのなら
その人のために死ねばいい」
泣きながら自分をどれほどにも
傷つけた
気を失うまで
目を覚まし血みどろの中で佇む
まだ生きている
終わらない現実はまだまだ続く
どれほどに悲しみを積み重ねただろうか
気が遠くなるような時間を経て
彼女の愛した人間は全地球人口にも及んだ
もはやこの世に人間は彼女を除いていない
しかし彼女は不思議と子どもを身ごもった
さらに時間が流れること数万年
地球は彼女の子孫で埋め尽くされた
全世界を覆いつくした彼女の子孫たちは
この世界の成り立ちを調べ始める
調査の手は日本、中国、インド、ロシア、ヨーロッパ
世界各地におよび
そしてついに彼女の存在にたどり着いた
その時付けられた便宜上の名前は世界中に浸透して行き
いつしか彼女は違う名前で呼ばれ始めた
多くの科学者、研究者、宗教信仰者から一般の人にまで
彼女はただ「イヴ」とだけ呼ばれるようになっていた