インターネッツ……それは、あらゆる可能性が存在する場所。ある者は新たな生命を生み出し、またある者は破壊を繰り返す。
その、無限に広がる世界で、また今日も一つの物語が紡がれる……。
芝刈り代行人の一日
朝早くに芝刈り代行人は目を覚ます。まだ星空が見える頃だ。小太りのおばさんが犬の散歩を始めるよりも早く、芝刈り代行人は家を出る。
芝刈り代行人はハンディ芝刈り機を軽々と肩に担ぎ、徒歩で移動する。ほうれん草を食べるとが異様に肥大してしまう某船乗りを彷彿とさせる太い腕が、今日も何処かで振るわれようとしていた。
芝刈り代行人が依頼にあった現場へ着いたのは、学生が学校へ行き始める頃。この時間帯はまだ芝が少なく、短い時間で作業が済む。
「ギィガwwwwwドォリゥwwwwwwwブレェイクォwwwwwwwwwwwwwwwwww」
「グレンwwwラガンwwwwwクwソw面w白wえwwwwwwwwwww」
「後番はメイポっすかwwwwwwwwメイwwwwwwwポwwwwwwっをwwwwwwwwwwっうぇwwwwwwwwwwwさすがwwwのw俺もwwwwwwギwガwドwリwルwブwレwイwクwをwwwwww使わざwwwwwwるwをwwwっうぇwwwwww得なwwwwっをwwwい」
芝を現在進行形で生やしまくっているのは、魔王の手先である。魔王の活動エネルギーであるダークマターをばら撒き、それを感染させ、新たなダークマター供給源を作り出しているのだ。
そして、それを刈るのが芝刈り代行人の仕事。
「ちょっと芝を生やしすぎですよ……刈りますよ……」
「ちょwwwwwまwwwwwwwwww何コイツwwwwwwwwww芝刈るなよwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
「芝刈り人キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!! 魔王の手先涙目wwwwwwグレンラガン終わった俺も涙目wwwwwwwwwwwwwwww」
芝刈り代行人はハンディ芝刈り機を地面へ降ろし、ぐいっとハンドルを引っ張った。それと同時に、ハンディ芝刈り機が唸りを上げる。
「うは……おk……。“w”が“…”に変わってく…………。み…な…ぎ…っ…て…き…た……」
「ギガ……ドリル……ブレイク……」
ハンディ芝刈り機が地面を一撫でするたびに、アルファベットが記号へと変わってゆく。
つまるところ、ダークマターのアッパーなテンション具合をダウナーな三点リーダに置き換えることにより、ダークマターのエネルギーを相殺、魔王の行動を制限することが出来るのである。
芝刈り代行人は、こうやって世界を守っているのだ。陳腐な表現で言うところの、勇者・英雄なのだ。
「芝刈り……終了……です……。草の生やし過ぎには……気を……つけて……ください……」
辺りを見渡し、芝が無くなったことを確認した芝刈り人は、またも軽々とハンディ芝刈り機を肩に担ぎその場を後にする。
――ここはニュー速VIP、諸悪の根源。芝刈り人は芝を刈るため芝刈り機を肩に背負い、今日もゆく。