作例:エルカイダの友情~キャッチ・ホールド~
エルカイダのメンバーは
今日も波打ち際で
出航の準備とやらをしているのか
どうなのかなんなのだ?
二人組が砂浜に落書きしてる
シルエットはうさ耳で長髪だが
背は低く、子供の様である
「クロア、今日もばっちり
日焼けしてるねえ」
「いや、それ元からだよね?
知ってるよね?
ところでシロイは白い肌が
赤くなっちゃわない?」
クロアとシロイは
黒兎人と白兎人の間に生まれた
ハーフの双子の兄妹、
見た目がそっくりだが白黒で
色がそれぞれ違ってる。
ここまではっきり種族の差が
あらわれるハーフは珍しいのでは?
二人はどうやら仲間と落ち合うために
待ってるらしいがこの暑い中
コートを着てるあたり、
雪国で生活してた過去があるのか?
「ウフフ、今日も快晴でバッチリ
とっても素敵な日になりそうね
って何よ、アンタたち、その顔は!?」
驚愕の顔をした白黒二人の前に
背の高い青紫色のリップをした
優男、いやニューハーフ
どこか船長みたいなのだけど
なんか今回は様子がおかしいし
見た目がいつもと違う!
かろうじて服のふちどりにキリンの
柄があるけれど
キリン亜人だったはずのその見た目が
大きく異なる擬人亜人!
キャッチ・ホールドだ!
「し、シロイ! 怪しい奴だ!
コラウドに知らせないと!」
「だめよクロイ! 間合いに
入ったやつは仕留めておかないと
こっちが不利になる! 連携して
魔法でたおすのよ!」
クロアとシロイは臨戦態勢だ!
「もー! なに勘違いしてるのお!?
おちびちゃんたち!
わたしよわたし! キャッチホールド
ほら、この舌を見たら分かるでしょ」
びろびろべろーん
キリンの舌は首ほどではないが
長く、伸びるのだ
といっても今の人型で首が
それほど長くないキャッチ・ホールドが
舌を伸ばしても
ただのべろべろ妖怪だが
「「キャッチ・ホールドだ!」」
クロアとシロイはそれで良かったらしい
「そ、あたしよ! あたし!
さ、大海原に漕ぎ出しましょ
はやくみんなを呼んできて
って、なに? 目を丸くして? 」
「「 首が短くなってるゥ!? 」」
いや、人になってるから首が
短くなるのは当然というか
人になってるのより首が
短くなってるのが大事なのか?
双子の価値観とは?
「どこ見てんのよ!
いくらあたしの瞳が
百万ボルトだからって
ってなにすんの、あっ、アアーっ! 」
「シロイ! 足をもっと引っ張って!
首を長く伸ばして元に戻すんだ!」
「クロア! 頭をもっとしっかり
引っ張って、首を長くしなきゃあ」
うんとこどっこいどっこいしょ
それでも首は伸びません
「いたいいたいいたい!
いたいわよあーたたち!
あっ、カトーチャ! 見てないで
たすけなさいよ! あー!!」
角の生えた単眼の娘が
茂みからのぞいていたのです
「まじまじもじもじいちもんじ」
カトーチャ・プリンは渾身のネタを
披露して、縦一文字に両の手を伸ばして
まじまじしながらもじもじ
恥ずかしそうに視線を外しながらも
大変なことになってるのを見て
仲間に加わりたいアピールをしたのです
「あ、あんたね!
この状況を見てしようもない
ジョークを決めてる場合?」
「カトーチャ! 良いところに来たよ!」
「そうそう、首を長くする良い
方法はないかしら? それっ!」
「あー! あーたたちなんで!?
あたしを投げるのよぉ!? 」
カトーチャ・プリンは、
飛んできたキャッチ・ホールドを
「キャッチ!」
アンド!
「ホールド!」
単眼ツノツノカトーチャ・プリンは
キャッチさんが白目向くほどに
青筋入ってる状態に
首をがっちり両腕でホールド状態にして
思いっきり締めあげた
スリーパー・ホールドである!
「あっ、がっ、はっ、助けて!
助けて双子ちゃん!
この子、マジだから!
ネタがマジだから! 助けて!」
「シロイー、キャッチが
苦しがってるよ!」
「クロア! はやく元に
戻してあげましょう! せいやっ!」
右足をクロアが、左足をシロイが
うんとこどっこいどっこいしょと
ひっぱると
がっちりとクビにホールドが決めてる
カトーチャ・プリンがぐいぐい
体重をかけて引っ張るので
キャッチ・ホールドさんの首は
伸びる、よりかは、しまる
「あーたたち!!
いい加減にしなさいよぉぉおぉー!」
キャッチ・ホールドは両手で
思いっきりカトーチャ・プリンを
投げ飛ばすとクロアとシロイにぶつけて
態勢が崩れたところを
両足を思いっきり閉じて
クロアとシロイがごっちんこ☆
「ぜぇぜぇぜぇ!
あーたたちね! 首が伸びるどころか
極まってたわよ!
やるにしてもやり方を
もっと考えなさいよ!」
「「考えるたって言ったって」」
残念そうに声を上げる双子のウサギと
うつむいて物憂げな表情なカトーチャ
「な、なによ! その表情は!
あーたたちはあたしを
極めかけてるのよ!?
あたしは悪くないのよ!」
クロアとシロイは顔を見合わせると
キャッチの後ろに回り込んだ
光り輝く単眼のカトーチャを見て
うんとこどっこいどっこいしょ
「や、やめなさいよー!
首を極めなければ
首が伸びるってもんじゃないのよ!
そんなにがっしり頭つかまないで!」
(ヤッベ! エルカイダちょー
ウケるんですけど!)
「あ、助けて! 助けてそこのギャル!
この子たち何をいっても聞かないの!
なんでもするから助けて!」
キャビーは喜んで戦列に加わった
花の15才エルフの初エルカイダ
デビューであった!
「「「「せーの」」」」
うんとこどっこいどっこいしょ
それでも首は伸びません
カトーチャの背中を抱きかかえる形の
キャビーが引っ張ると
カトーチャが両手でわしづかみにした
キャッチの頭がぐいぐい伸びるが
今度は二人の力との釣り合いが
双子のちからではうまくいかない
首に重心がきてるような気がしなくも
ないのだけど、うまくいかない
「いたい! やめて!
無理なものは無理なのよ!
そこのブロッコリーたち!
さっきから茂みに化けてないで
助けなさいよ!」
ブッコロリ・カリフロウと
ロマネスコ・カリフロウは
キャベジン系の種族で
植物っぽくて特徴的な頭や
肌をしてるがさすがに
この言われように頭に来た
切れるとしたら
やることは決まっていた
いや極まっていた
うんとこどっこいどっこいしょ!
それでも首は伸びません
双子をカリフロウの二人が持ち上げる
形で引っ張れば
案外つかむ力が極まっている
双子に根強いカリフロウ族の
力が加わってパワーマシマシに感じるが
今度はカトーチャとキャビーの方が
引っ張られがちになったのだ
これは危ういと思ったら
カトーチャとキャビーは
カリフロウWパワーに引きずられる形に
なり態勢が完全に崩れて
さすがにこれには
「ぐだぐだじゃない!
やることなすことグダグダ!
もーエルカイダ
はどうなっちゃうの!? 」
キャッチが苦言を呈したが
「海のものが陸に上がって
ずいぶんとお困りの様だな」
「え、エミリーちゃん!
仲間を連れて駆けつけて
くれたのね! あたしのために!」
―――――エミリー・マンネル
かつて戦時中には前線で指揮をとり
今もその時の仲間と共に
エルカイダの作戦行動に欠かせない
働きをしているエルフである彼女たち
隊の選択は?
「今こそ勝機!
全員配置につけ!
首をあげる、いや伸ばすのだ!」
うんとこどっこいどっこいしょ
それでも首は伸びません
元アルフヘイム軍人であった
エミリーたちエルフの作戦行動は
迅速であったが
いかんせん頭を引っ張るという部分で
難航し、せっかくの人員を使っても
結局、力を均衡させることに留まる
エミリーは悔しがった
「「「「つかれたー」」」」
すでに第一陣は疲労困憊であり
このままでは首を長くして
待っているエルカイダの主導者に
面目が立たない、と、その時
「縄で縛れば沢山で引っ張れるし
頭をがっちりとひっぱるほどに
締め上げる道具を使えば?」
獣人の巻角で人らしい特徴を多く残す
アレンくんは時々、拷問に関しての
知識を披露するが、それは彼が
あんなことやこんなことをされた
結果、興味がこんなことになって
しまったわけであり
エルカイダ
一同は責任を深く感じるのだった。
――――――その想いを引き継いで
うんとこどっこいどっこいしょ!
それでも首は伸びません
「あーたたた! あーたたち!
こんな大勢であたしを
いじめて、ひどい! ひどいわ!」
――――――
賑やかでそして一丸となって
ひたむきに頑張る姿に
徐々に人は動かされていくといいます
しかし
「…悪ふざけをしてる場合か」
ルビート・スタッグ、甲虫の亜人である
六本腕の彼にとってはこの状況は
面白くありません、何せ締まらないし
そもそも彼は復讐のために
エルカイダに入ったというシリアスな
いきさつがあるのですから
ということは!?
「そ、そうよ!
よく言ったわルビートくん!
あたたたち! 悪ふざけは
やめるのよー!!」
この流れを止める絶好のチャンスだ!
がんばれ! キャッチ・ホールド!
「あらん? ルビートくん
キャッチ・ホールドは今回の作戦に
欠かせない人員らしいから
仲間外れはだーめだめなのよ!」
ウオノコ・コツボが波打ち際から
飛び出した!
大きな胸の谷間を見せつける
ビキニのピンク髪ツインテの人魚
何を考えてるかわからないからこそ
真面目に考えてるものを
軽くあしらう余裕がある!
「そーれそーれ!
ルビートくん、がんばれがんばれ!」
ルビート君をよそに
ウオノコが加わった一同の手は再び
うんとこどっこいどっこいしょ!
それでも首は伸びません!
「舐めているのか!
黒騎士がこんなことを
望んでいるのだとしたら!
俺は! 俺は!」
ルビートは一同に手を貸さない
何が何でもこんなふざけたことにはと
そりゃそうです、だって
「ルビートくん! 助けて
死ぬ、体引きちぎれて死んじゃう!
あたしまだ死にたくなーい!」
でも助けないのもどうかと思うよね?
「――――――既に敗色濃厚にして
お前も一団を率いるものならば
生き恥晒すよりも」
剣を手にしたルビートはやる気だ!
「死んで報いて見せろ!
キャッチ・ホールド!」
「きゃああああああ!?!!?!??
なにとち狂ってんだこのクソがきぃ
引きちぎれそうなあたしを
真っ二つにする意味ってなによおぉ」
ルビートが走り出して
引っ張ることに夢中のエルカイダ一同は
誰もそれを止めることが出来ない!
キャッチ・ホールドの運命は!?
「やめなよ…」
「はっ!?
こ、コラウド!」
コラウド=パルタジェ=フンター!
ルビートでさえも振るう剣を止めて
その圧に従わざるを得ない相手
黒騎士の意思を伝える
黒騎士とエルカイダ団員との
実質的な仲介役だとすると
場は凍り付いた、そして
いつからそこにいた!?
普段、何も喋らないけど
寡黙だけれどなんか赤い帽子に
青いタイをして大剣を背中にしてると
圧が強い、そして!
「――――――ルビートくん
みんなと喧嘩しないで!
おうえん! おうえんするから!」
アクティ・ノディオは
コラウドの後ろから
補助魔法で縄を引っ張るエルカイダ
一同の身体強化を施し
力を増して
左右からの綱引きで
キャッチ・ホールドの体が
うんとこどっこいどっこいしょ!
「いやああああ!!!
ちぎれちゃううううううう!!!」
この光景もあってか
自らの進退を悟ってか
遂にルビートは剣を地に突き刺し
砂浜にどたっと胡坐をかいた
「いいだろう、ならばせめて
見届けさせてもらう
追って沙汰は受けるが
黒騎士の命が確かなものか
この愚行の先に何が残るか、な
クニー・アロー、狙い損だったな」
木の上に顔に影が入ったエルフが
引き絞っていた弓の弦をベンと鳴らして
降りてきた、ルビートを狙っていたのか
クニー・アローというそのエルフは
ルビートと同じく復讐のために
エルカイダに入ったのだが
ルビートほど勢いに任せて行動しない
冷静さをエルフは持ち合わせているのか
「――――――次は胡坐をかける
膝があるなどと思うなよ」
「騒がしいですね
久しぶりに皆さんと会えると思えば
苗木に出来る人が一人もいなくて
残念です」
「あらあ? ワトソニア
わたしが上げたのもう全部
盆栽にしちゃったの?
そういえばクニーも盆栽好き
だったかしらあ?」
ワトソニアと呼ばれるウッドピクスに
話しかけているのは
アルフヘイムでこと高貴とされる
上位種族エンジェルエルフの
ニツェシーア=ラギュリである。
が、このエルカイダにおいては
黒騎士を敬愛する一員に過ぎないが
彼女の趣味はワトソニアの
甲皇国人に自らの接ぎ木をして
苗木として故郷のアルフヘイム
に植えるということに連動してるもの
ようは死体漁りのような具合で
甲皇国人の部位を集めてるという具合
なのだが
「あんたたちのコレクションなんかの
話はどうでもいいのよ!
あたしを助けなさいよ! ニッツェ!」
うんとこどっこいうんとこしょ!
それでも首は伸びません!
「あはははははあ、黒騎士様が
あんたのことを頼むって言うから
ここにきたのは確かだけど
あんたみたいなのは
スカウトした覚えはないのよねえ
ねえ、ワトソニア?」
「そうですねニツェシーア
全員で捕縛してるこの状況を
察するに驚異的な僧帽筋
是非、私の故郷に首を生やして
いえ、苗木として植えたいところです」
「それは出来ん相談だな
そやつは新兵訓練用に使いたい
そら皆の衆、もっと腰をいれろ!
ケツで
地べたなめるくらいに姿勢を維持しろ
砲弾の爆風を喰らいたいのか?」
フメツ・バグダンツキ
アルフヘイムのドワーフにして
エルカイダ戦闘教官なれば
険しい表情とひげ面に工兵用の
決まった軍服が一式あると引きたって
この絶好の機会にうんとこどっこいしょ!
「いやあああああ!
正確に力が! 力が掛かって
全身がのびきっちゃうわあああ!」
それでも首は伸びません!
「教官殿
質問です、僕、挙手も出来ないんで
当然、この合同演習に
参加できないんですけど
この場にいるだけで単位もらえます?」
「ファル・モツェピ
お前にはどんな未来が見えている?
無い両腕の変わりに
頭でも働かせておけ!
貴様の分の墓穴くらいは掘ってやる」
童顔のエルフはちょんぼりアホ毛に
髪色は銀色が落ち着いたしっとりした
風合いで髪留めと変わったマントを
留めてる大きなボタンが
ファッションのアクセントになっている
生まれの良さをどこか感じるが
ファルの身の周りの世話をしてるのは
いったい誰なのだろうか?
「――――――未来予知ではこの後来る
ローさんが引っ張っても
トリノコ・ササミさんが引っ張ろうとも
高鳴真造さんがうんとこどっこいしょ
でもドン・キングたかし三世でも
それでも首は伸びませんし
神隠しのスアロキンなんかは
初めから諦めてるようですね」
「いってくれるな?
おれがそんなに手こずると? 」
――――――ロー・ブラッド
身の丈2m50センチの獣の亜人
全身に生傷を立たないその姿の中でも
特に両目に受けた傷により盲目で
あるが、嗅覚を最大限研ぎ澄ますことで
そのハンディキャップも補って
あまりあるというがその実力は
うんとこどっこいうんとこしょ!
それでも首はのびません!
「あ、あー!!
あんたみたいな怪力にやられたら
これ以上やられたら!
ってその物騒な鈍器締まって!?
黙って引っ張ってて! 」
そのあともファル・モツェピの
未来予知通りに事が運ぶ
――――――トリノコ・ササミ
うんとこどっこいうんとこしょ!
それでも首は伸びません!
「あたしハーピーって呼ばれるの
嫌いなんだけど足で一所懸命
引っ張ったのにこれってないわ
あ、考えたんだけど木に吊るして
下から全員で首引っ張ったら
伸びるんじゃない?」
両腕が鳥の翼である、ハーピーと
呼ばれるものによく似ているが
緑の長い髪を後ろで大き目の
三つ編みにしてまとめてひとつの
おさげにし、頭のサイドに赤い華を
あしらったり、白いビキニで
体のラインがとても魅力的で
胸の当たりが健康的で贅肉がないなのも
活発でよろしいね!
「そういえばヒヤシンスは
今回来ないみたいだから
総出でとはいかないけど
ちゃっちゃと済ませてしまいましょう」
――――――高鳴真造
うんとこどっこいうんとこしょ!
それでも首は伸びません!
「かさぶたはがれそう」
全身謎のかさぶた
食ったヒカリゴケの影響である
その異形の見た目から何か
学ぶことも多くあろうが
とりあえず落ち着き給え
「これいつまで引っ張るつもりだ?」
――――――ドン・キングたかし三世
うんとこどこいどっこいしょ!
それでも首は伸びません!
「でゅふふふ
キャッチ・ホールド殿は
どうして首が伸びないので
ござるか?」
「ああ、あんたみたいなでぶっちょに
首の長いことの大変さなんて
わからないわ! だから
引っ張らないでってばああああ!!!」
モヒカンサングラスデブヒャッハーの
ドン・キングたかし三世の嗜虐心が
うずいたのか、シーメールの
色香にやられたのかはしらないが
汗を噴出して全力で引っ張るその姿
ここまで長々と展開を引っ張ってきた
俺たちの青春はきっと報われるさ!
「キャッチ・ホールド
今日こそはこのイルカ
受け取ってくださいますね」
――――――スアロキンとサダクビア
「イルカ欲しいわ! 助けても欲しいわ!
イルカはイルカってカトーチャ!
あなたねこの限界状態で
とにかく私はいまの引っ張られてる
状態から抜け出したいのー!!!」
「じゃあこのイルカを両腕で
だきしめておいてください
今から引っ張りますから
決してそのイルカを離しては
いけませんよ!」
「やめて! スアロキンちゃん!
これ以上引っ張られたら!
あたし! あたし!」
うんとこどっこいどっこいしょ!
それでも首は伸びません!
全員沸騰しそうなまで尽くした
煮えたぎるような思いを
キャッチ・ホールドの首を
引っ張るために頑張ってきた
だけど何故足りない
何が足りないというのだろうか?
あと一息というところで
いまエルカイダのメンバー全員の
心が折れかけていた
ヒヤシンスは何故かいないから
関係なかったけど
(お願い折れるなら折れて!
私の首が折れる前に!)
誰もが諦めかけたそのとき
天啓が降りた
「うん、ぼくわかった」
コラウド=パルタジェ=フンター
今まさに黒騎士の意思を受けて
それを言葉で表した
そう分かったのだ
≪≪≪≪大切なのは心だと!≫≫≫≫
「諦めかけてた心!」
クロアの眼に火が宿る!
「二人ならやれるという想い!」
シロイの魂が煮えたぎる!
「全力で笑いを取りに行く向上心!」
カトーチャ・プリンは初心を思い出した!
「メイクを忘れぬ女ごころ!」
キャビーはメイクをし直した!
「妹への殺意!」
ブッコロリ・カリフロウは目が血走る!
「兄への崇敬!」
ロマネスコ・カリフロウは心穏やかに!
「部下からの絶対的な信頼!」
エミリー・マンネルは前線復帰した!
「きもちいいこと?!」
アレンくんは♂
「フン、見せてみろ貴様らの力を」
ルビートのシリアス強キャラ感!
「おっぱいたゆんたゆん!」
ウオノコ・コツボの胸の双丘!
「はちみつください」
コラウドの好きなものへの執着!
「うふふ、お肉がいっぱーい!がんばえ」
アクティ・ノディオの食人衝動!
「あいつの! 膝が! 無くなるまで!」
クニー・アローのあんちきしょうへの怒り
「伸びゆく木々の新芽たち!」
ワトソニアから芽吹く萌の覚醒!
「黒騎士様のため黒騎士様のため!」
ニツェシーア・ラギュリの妄信!
「爆発する工兵魂!」
フメツ・バグダンツキの爆発力!
「未来が、みえた!」
ファル・モツェピの未来への希望は!
「見えずともわかる! このにおいは!」
ロー・ブラッドの復讐への思いが滾る!
「キョニュウクウキョニュウノチカラ
テニイレル」
トリノコ・ササミの渇望!
「ダピカの糞野郎!」
高鳴真造の飲みの席でのフラッシュバック
「汗と涙と友情でゅふふ!!」
ドン・キングたかし三世の滝汗!
「キャッチ・ホールドさーん!」
スアロキンとサダクビアの献身!
全ての息が! 整った!
(※いっけねヒヤシンス忘れてた)
うんとこどっこいどっこいしょ!
「いやああ!?」
うんとこどっこいどっこいしょ!
「やめてえええ!」
うんとこどっこいどっこいしょ!
「ちぎれるぅぅぅ!」
うんとこどっこいどっこいしょ!
「だめ中身が出ちゃううう!」
うんとこどっこいどっこいしょ!
「いや、もう!」
うんとこどっこいどっこいしょ!
「みんなあたしをどうしたいのぉぉぉ!」
うんとこどっこいどっこいしょ!
(あ)
うんとこどっこいどっこいしょ!
(見えた)
うんとこどっこいどっこいしょ!
(光が)
うんとこどっこいどっこいしょ!
(そうよ、あたしこんなにも)
うんとこどっこいどっこいしょ!
(皆から愛されていたんだわ!)
うんとこどっこいどっこいしょ!
(あたしもう怖がらない!)
うんとこどっこいどっこいしょ!
キャッチ・ホールドの閉ざしていた
心が今開かれる
今まで色々と鬱屈していた日々の
積層、なんだかよく分からないけど
何年越しかに英霊召喚されたような
そんな感覚、誰かから忘れられたくない
そんな気持ちの発露がいま
ストレッチパワーが
首に
たまってきただろう!?
うんとこどっこいどっこいしょ!
「あたし!
がんばれえええええええええ!!
がんばれあたしぃぃぃぃ!!!!」
すべての息が揃った!
引っ張るもの引かれるものの心さえも
整った!
ここにエルカイダの精神極まれり!
今こそ来たれ!
新生! あたし誕生!
「わっ!? なに!?」
「光が! キャッチの首から光が!」
「いっぱいあふれ出していく!」
「の」
「の、の」
「伸びる!」
「伸びていくというの!?」
「本当にあったんだ!」
「キャッチ・ホールドの首は!」
「長かったんだ!」
「キリンさーん!」
「これが、心か!」
――――――お前ら全員首にすんぞ
いやちょっとよくわからんけど
とりあえず全員が
ほとばしる光から目を守って
目覚めたその時には
「おめでとう、諸君、エルカイダは
今日より生まれ変わった!
黒騎士がやってきた、
そうそこには!
元気に走り回るキャッチ・ホールドの
姿が!
「みたまえ! かの首を
かの首こそが我らの
友情の証に他ならず
他のどんな勢力でも
成し遂げなかった
絶対的な友愛の心に他ならない!」
「うふふふあははははは!」
「キャッチ・ホールド!
君の未来に栄光あれ!」
「「「「「おめでとう!! 」」」」」」
「やあねえ、
わたしってば
ただキリンの姿に戻っただけなのに
みんなの心をひとつに
しちゃうんだから
ほんと罪な愛の体現者よね」
ん? なあに?
ヒヤシンス?
鏡見ろって?
なによ、そんなことくらい
なんてことないわ、だってもう
なにもおそれることなんて?
「――――――
なによこれええええ!!!!???」
今日も波打ち際で
出航の準備とやらをしているのか
どうなのかなんなのだ?
二人組が砂浜に落書きしてる
シルエットはうさ耳で長髪だが
背は低く、子供の様である
「クロア、今日もばっちり
日焼けしてるねえ」
「いや、それ元からだよね?
知ってるよね?
ところでシロイは白い肌が
赤くなっちゃわない?」
クロアとシロイは
黒兎人と白兎人の間に生まれた
ハーフの双子の兄妹、
見た目がそっくりだが白黒で
色がそれぞれ違ってる。
ここまではっきり種族の差が
あらわれるハーフは珍しいのでは?
二人はどうやら仲間と落ち合うために
待ってるらしいがこの暑い中
コートを着てるあたり、
雪国で生活してた過去があるのか?
「ウフフ、今日も快晴でバッチリ
とっても素敵な日になりそうね
って何よ、アンタたち、その顔は!?」
驚愕の顔をした白黒二人の前に
背の高い青紫色のリップをした
優男、いやニューハーフ
どこか船長みたいなのだけど
なんか今回は様子がおかしいし
見た目がいつもと違う!
かろうじて服のふちどりにキリンの
柄があるけれど
キリン亜人だったはずのその見た目が
大きく異なる擬人亜人!
キャッチ・ホールドだ!
「し、シロイ! 怪しい奴だ!
コラウドに知らせないと!」
「だめよクロイ! 間合いに
入ったやつは仕留めておかないと
こっちが不利になる! 連携して
魔法でたおすのよ!」
クロアとシロイは臨戦態勢だ!
「もー! なに勘違いしてるのお!?
おちびちゃんたち!
わたしよわたし! キャッチホールド
ほら、この舌を見たら分かるでしょ」
びろびろべろーん
キリンの舌は首ほどではないが
長く、伸びるのだ
といっても今の人型で首が
それほど長くないキャッチ・ホールドが
舌を伸ばしても
ただのべろべろ妖怪だが
「「キャッチ・ホールドだ!」」
クロアとシロイはそれで良かったらしい
「そ、あたしよ! あたし!
さ、大海原に漕ぎ出しましょ
はやくみんなを呼んできて
って、なに? 目を丸くして? 」
「「 首が短くなってるゥ!? 」」
いや、人になってるから首が
短くなるのは当然というか
人になってるのより首が
短くなってるのが大事なのか?
双子の価値観とは?
「どこ見てんのよ!
いくらあたしの瞳が
百万ボルトだからって
ってなにすんの、あっ、アアーっ! 」
「シロイ! 足をもっと引っ張って!
首を長く伸ばして元に戻すんだ!」
「クロア! 頭をもっとしっかり
引っ張って、首を長くしなきゃあ」
うんとこどっこいどっこいしょ
それでも首は伸びません
「いたいいたいいたい!
いたいわよあーたたち!
あっ、カトーチャ! 見てないで
たすけなさいよ! あー!!」
角の生えた単眼の娘が
茂みからのぞいていたのです
「まじまじもじもじいちもんじ」
カトーチャ・プリンは渾身のネタを
披露して、縦一文字に両の手を伸ばして
まじまじしながらもじもじ
恥ずかしそうに視線を外しながらも
大変なことになってるのを見て
仲間に加わりたいアピールをしたのです
「あ、あんたね!
この状況を見てしようもない
ジョークを決めてる場合?」
「カトーチャ! 良いところに来たよ!」
「そうそう、首を長くする良い
方法はないかしら? それっ!」
「あー! あーたたちなんで!?
あたしを投げるのよぉ!? 」
カトーチャ・プリンは、
飛んできたキャッチ・ホールドを
「キャッチ!」
アンド!
「ホールド!」
単眼ツノツノカトーチャ・プリンは
キャッチさんが白目向くほどに
青筋入ってる状態に
首をがっちり両腕でホールド状態にして
思いっきり締めあげた
スリーパー・ホールドである!
「あっ、がっ、はっ、助けて!
助けて双子ちゃん!
この子、マジだから!
ネタがマジだから! 助けて!」
「シロイー、キャッチが
苦しがってるよ!」
「クロア! はやく元に
戻してあげましょう! せいやっ!」
右足をクロアが、左足をシロイが
うんとこどっこいどっこいしょと
ひっぱると
がっちりとクビにホールドが決めてる
カトーチャ・プリンがぐいぐい
体重をかけて引っ張るので
キャッチ・ホールドさんの首は
伸びる、よりかは、しまる
「あーたたち!!
いい加減にしなさいよぉぉおぉー!」
キャッチ・ホールドは両手で
思いっきりカトーチャ・プリンを
投げ飛ばすとクロアとシロイにぶつけて
態勢が崩れたところを
両足を思いっきり閉じて
クロアとシロイがごっちんこ☆
「ぜぇぜぇぜぇ!
あーたたちね! 首が伸びるどころか
極まってたわよ!
やるにしてもやり方を
もっと考えなさいよ!」
「「考えるたって言ったって」」
残念そうに声を上げる双子のウサギと
うつむいて物憂げな表情なカトーチャ
「な、なによ! その表情は!
あーたたちはあたしを
極めかけてるのよ!?
あたしは悪くないのよ!」
クロアとシロイは顔を見合わせると
キャッチの後ろに回り込んだ
光り輝く単眼のカトーチャを見て
うんとこどっこいどっこいしょ
「や、やめなさいよー!
首を極めなければ
首が伸びるってもんじゃないのよ!
そんなにがっしり頭つかまないで!」
(ヤッベ! エルカイダちょー
ウケるんですけど!)
「あ、助けて! 助けてそこのギャル!
この子たち何をいっても聞かないの!
なんでもするから助けて!」
キャビーは喜んで戦列に加わった
花の15才エルフの初エルカイダ
デビューであった!
「「「「せーの」」」」
うんとこどっこいどっこいしょ
それでも首は伸びません
カトーチャの背中を抱きかかえる形の
キャビーが引っ張ると
カトーチャが両手でわしづかみにした
キャッチの頭がぐいぐい伸びるが
今度は二人の力との釣り合いが
双子のちからではうまくいかない
首に重心がきてるような気がしなくも
ないのだけど、うまくいかない
「いたい! やめて!
無理なものは無理なのよ!
そこのブロッコリーたち!
さっきから茂みに化けてないで
助けなさいよ!」
ブッコロリ・カリフロウと
ロマネスコ・カリフロウは
キャベジン系の種族で
植物っぽくて特徴的な頭や
肌をしてるがさすがに
この言われように頭に来た
切れるとしたら
やることは決まっていた
いや極まっていた
うんとこどっこいどっこいしょ!
それでも首は伸びません
双子をカリフロウの二人が持ち上げる
形で引っ張れば
案外つかむ力が極まっている
双子に根強いカリフロウ族の
力が加わってパワーマシマシに感じるが
今度はカトーチャとキャビーの方が
引っ張られがちになったのだ
これは危ういと思ったら
カトーチャとキャビーは
カリフロウWパワーに引きずられる形に
なり態勢が完全に崩れて
さすがにこれには
「ぐだぐだじゃない!
やることなすことグダグダ!
もーエルカイダ
はどうなっちゃうの!? 」
キャッチが苦言を呈したが
「海のものが陸に上がって
ずいぶんとお困りの様だな」
「え、エミリーちゃん!
仲間を連れて駆けつけて
くれたのね! あたしのために!」
―――――エミリー・マンネル
かつて戦時中には前線で指揮をとり
今もその時の仲間と共に
エルカイダの作戦行動に欠かせない
働きをしているエルフである彼女たち
隊の選択は?
「今こそ勝機!
全員配置につけ!
首をあげる、いや伸ばすのだ!」
うんとこどっこいどっこいしょ
それでも首は伸びません
元アルフヘイム軍人であった
エミリーたちエルフの作戦行動は
迅速であったが
いかんせん頭を引っ張るという部分で
難航し、せっかくの人員を使っても
結局、力を均衡させることに留まる
エミリーは悔しがった
「「「「つかれたー」」」」
すでに第一陣は疲労困憊であり
このままでは首を長くして
待っているエルカイダの主導者に
面目が立たない、と、その時
「縄で縛れば沢山で引っ張れるし
頭をがっちりとひっぱるほどに
締め上げる道具を使えば?」
獣人の巻角で人らしい特徴を多く残す
アレンくんは時々、拷問に関しての
知識を披露するが、それは彼が
あんなことやこんなことをされた
結果、興味がこんなことになって
しまったわけであり
エルカイダ
一同は責任を深く感じるのだった。
――――――その想いを引き継いで
うんとこどっこいどっこいしょ!
それでも首は伸びません
「あーたたた! あーたたち!
こんな大勢であたしを
いじめて、ひどい! ひどいわ!」
――――――
賑やかでそして一丸となって
ひたむきに頑張る姿に
徐々に人は動かされていくといいます
しかし
「…悪ふざけをしてる場合か」
ルビート・スタッグ、甲虫の亜人である
六本腕の彼にとってはこの状況は
面白くありません、何せ締まらないし
そもそも彼は復讐のために
エルカイダに入ったというシリアスな
いきさつがあるのですから
ということは!?
「そ、そうよ!
よく言ったわルビートくん!
あたたたち! 悪ふざけは
やめるのよー!!」
この流れを止める絶好のチャンスだ!
がんばれ! キャッチ・ホールド!
「あらん? ルビートくん
キャッチ・ホールドは今回の作戦に
欠かせない人員らしいから
仲間外れはだーめだめなのよ!」
ウオノコ・コツボが波打ち際から
飛び出した!
大きな胸の谷間を見せつける
ビキニのピンク髪ツインテの人魚
何を考えてるかわからないからこそ
真面目に考えてるものを
軽くあしらう余裕がある!
「そーれそーれ!
ルビートくん、がんばれがんばれ!」
ルビート君をよそに
ウオノコが加わった一同の手は再び
うんとこどっこいどっこいしょ!
それでも首は伸びません!
「舐めているのか!
黒騎士がこんなことを
望んでいるのだとしたら!
俺は! 俺は!」
ルビートは一同に手を貸さない
何が何でもこんなふざけたことにはと
そりゃそうです、だって
「ルビートくん! 助けて
死ぬ、体引きちぎれて死んじゃう!
あたしまだ死にたくなーい!」
でも助けないのもどうかと思うよね?
「――――――既に敗色濃厚にして
お前も一団を率いるものならば
生き恥晒すよりも」
剣を手にしたルビートはやる気だ!
「死んで報いて見せろ!
キャッチ・ホールド!」
「きゃああああああ!?!!?!??
なにとち狂ってんだこのクソがきぃ
引きちぎれそうなあたしを
真っ二つにする意味ってなによおぉ」
ルビートが走り出して
引っ張ることに夢中のエルカイダ一同は
誰もそれを止めることが出来ない!
キャッチ・ホールドの運命は!?
「やめなよ…」
「はっ!?
こ、コラウド!」
コラウド=パルタジェ=フンター!
ルビートでさえも振るう剣を止めて
その圧に従わざるを得ない相手
黒騎士の意思を伝える
黒騎士とエルカイダ団員との
実質的な仲介役だとすると
場は凍り付いた、そして
いつからそこにいた!?
普段、何も喋らないけど
寡黙だけれどなんか赤い帽子に
青いタイをして大剣を背中にしてると
圧が強い、そして!
「――――――ルビートくん
みんなと喧嘩しないで!
おうえん! おうえんするから!」
アクティ・ノディオは
コラウドの後ろから
補助魔法で縄を引っ張るエルカイダ
一同の身体強化を施し
力を増して
左右からの綱引きで
キャッチ・ホールドの体が
うんとこどっこいどっこいしょ!
「いやああああ!!!
ちぎれちゃううううううう!!!」
この光景もあってか
自らの進退を悟ってか
遂にルビートは剣を地に突き刺し
砂浜にどたっと胡坐をかいた
「いいだろう、ならばせめて
見届けさせてもらう
追って沙汰は受けるが
黒騎士の命が確かなものか
この愚行の先に何が残るか、な
クニー・アロー、狙い損だったな」
木の上に顔に影が入ったエルフが
引き絞っていた弓の弦をベンと鳴らして
降りてきた、ルビートを狙っていたのか
クニー・アローというそのエルフは
ルビートと同じく復讐のために
エルカイダに入ったのだが
ルビートほど勢いに任せて行動しない
冷静さをエルフは持ち合わせているのか
「――――――次は胡坐をかける
膝があるなどと思うなよ」
「騒がしいですね
久しぶりに皆さんと会えると思えば
苗木に出来る人が一人もいなくて
残念です」
「あらあ? ワトソニア
わたしが上げたのもう全部
盆栽にしちゃったの?
そういえばクニーも盆栽好き
だったかしらあ?」
ワトソニアと呼ばれるウッドピクスに
話しかけているのは
アルフヘイムでこと高貴とされる
上位種族エンジェルエルフの
ニツェシーア=ラギュリである。
が、このエルカイダにおいては
黒騎士を敬愛する一員に過ぎないが
彼女の趣味はワトソニアの
甲皇国人に自らの接ぎ木をして
苗木として故郷のアルフヘイム
に植えるということに連動してるもの
ようは死体漁りのような具合で
甲皇国人の部位を集めてるという具合
なのだが
「あんたたちのコレクションなんかの
話はどうでもいいのよ!
あたしを助けなさいよ! ニッツェ!」
うんとこどっこいうんとこしょ!
それでも首は伸びません!
「あはははははあ、黒騎士様が
あんたのことを頼むって言うから
ここにきたのは確かだけど
あんたみたいなのは
スカウトした覚えはないのよねえ
ねえ、ワトソニア?」
「そうですねニツェシーア
全員で捕縛してるこの状況を
察するに驚異的な僧帽筋
是非、私の故郷に首を生やして
いえ、苗木として植えたいところです」
「それは出来ん相談だな
そやつは新兵訓練用に使いたい
そら皆の衆、もっと腰をいれろ!
ケツで
地べたなめるくらいに姿勢を維持しろ
砲弾の爆風を喰らいたいのか?」
フメツ・バグダンツキ
アルフヘイムのドワーフにして
エルカイダ戦闘教官なれば
険しい表情とひげ面に工兵用の
決まった軍服が一式あると引きたって
この絶好の機会にうんとこどっこいしょ!
「いやあああああ!
正確に力が! 力が掛かって
全身がのびきっちゃうわあああ!」
それでも首は伸びません!
「教官殿
質問です、僕、挙手も出来ないんで
当然、この合同演習に
参加できないんですけど
この場にいるだけで単位もらえます?」
「ファル・モツェピ
お前にはどんな未来が見えている?
無い両腕の変わりに
頭でも働かせておけ!
貴様の分の墓穴くらいは掘ってやる」
童顔のエルフはちょんぼりアホ毛に
髪色は銀色が落ち着いたしっとりした
風合いで髪留めと変わったマントを
留めてる大きなボタンが
ファッションのアクセントになっている
生まれの良さをどこか感じるが
ファルの身の周りの世話をしてるのは
いったい誰なのだろうか?
「――――――未来予知ではこの後来る
ローさんが引っ張っても
トリノコ・ササミさんが引っ張ろうとも
高鳴真造さんがうんとこどっこいしょ
でもドン・キングたかし三世でも
それでも首は伸びませんし
神隠しのスアロキンなんかは
初めから諦めてるようですね」
「いってくれるな?
おれがそんなに手こずると? 」
――――――ロー・ブラッド
身の丈2m50センチの獣の亜人
全身に生傷を立たないその姿の中でも
特に両目に受けた傷により盲目で
あるが、嗅覚を最大限研ぎ澄ますことで
そのハンディキャップも補って
あまりあるというがその実力は
うんとこどっこいうんとこしょ!
それでも首はのびません!
「あ、あー!!
あんたみたいな怪力にやられたら
これ以上やられたら!
ってその物騒な鈍器締まって!?
黙って引っ張ってて! 」
そのあともファル・モツェピの
未来予知通りに事が運ぶ
――――――トリノコ・ササミ
うんとこどっこいうんとこしょ!
それでも首は伸びません!
「あたしハーピーって呼ばれるの
嫌いなんだけど足で一所懸命
引っ張ったのにこれってないわ
あ、考えたんだけど木に吊るして
下から全員で首引っ張ったら
伸びるんじゃない?」
両腕が鳥の翼である、ハーピーと
呼ばれるものによく似ているが
緑の長い髪を後ろで大き目の
三つ編みにしてまとめてひとつの
おさげにし、頭のサイドに赤い華を
あしらったり、白いビキニで
体のラインがとても魅力的で
胸の当たりが健康的で贅肉がないなのも
活発でよろしいね!
「そういえばヒヤシンスは
今回来ないみたいだから
総出でとはいかないけど
ちゃっちゃと済ませてしまいましょう」
――――――高鳴真造
うんとこどっこいうんとこしょ!
それでも首は伸びません!
「かさぶたはがれそう」
全身謎のかさぶた
食ったヒカリゴケの影響である
その異形の見た目から何か
学ぶことも多くあろうが
とりあえず落ち着き給え
「これいつまで引っ張るつもりだ?」
――――――ドン・キングたかし三世
うんとこどこいどっこいしょ!
それでも首は伸びません!
「でゅふふふ
キャッチ・ホールド殿は
どうして首が伸びないので
ござるか?」
「ああ、あんたみたいなでぶっちょに
首の長いことの大変さなんて
わからないわ! だから
引っ張らないでってばああああ!!!」
モヒカンサングラスデブヒャッハーの
ドン・キングたかし三世の嗜虐心が
うずいたのか、シーメールの
色香にやられたのかはしらないが
汗を噴出して全力で引っ張るその姿
ここまで長々と展開を引っ張ってきた
俺たちの青春はきっと報われるさ!
「キャッチ・ホールド
今日こそはこのイルカ
受け取ってくださいますね」
――――――スアロキンとサダクビア
「イルカ欲しいわ! 助けても欲しいわ!
イルカはイルカってカトーチャ!
あなたねこの限界状態で
とにかく私はいまの引っ張られてる
状態から抜け出したいのー!!!」
「じゃあこのイルカを両腕で
だきしめておいてください
今から引っ張りますから
決してそのイルカを離しては
いけませんよ!」
「やめて! スアロキンちゃん!
これ以上引っ張られたら!
あたし! あたし!」
うんとこどっこいどっこいしょ!
それでも首は伸びません!
全員沸騰しそうなまで尽くした
煮えたぎるような思いを
キャッチ・ホールドの首を
引っ張るために頑張ってきた
だけど何故足りない
何が足りないというのだろうか?
あと一息というところで
いまエルカイダのメンバー全員の
心が折れかけていた
ヒヤシンスは何故かいないから
関係なかったけど
(お願い折れるなら折れて!
私の首が折れる前に!)
誰もが諦めかけたそのとき
天啓が降りた
「うん、ぼくわかった」
コラウド=パルタジェ=フンター
今まさに黒騎士の意思を受けて
それを言葉で表した
そう分かったのだ
≪≪≪≪大切なのは心だと!≫≫≫≫
「諦めかけてた心!」
クロアの眼に火が宿る!
「二人ならやれるという想い!」
シロイの魂が煮えたぎる!
「全力で笑いを取りに行く向上心!」
カトーチャ・プリンは初心を思い出した!
「メイクを忘れぬ女ごころ!」
キャビーはメイクをし直した!
「妹への殺意!」
ブッコロリ・カリフロウは目が血走る!
「兄への崇敬!」
ロマネスコ・カリフロウは心穏やかに!
「部下からの絶対的な信頼!」
エミリー・マンネルは前線復帰した!
「きもちいいこと?!」
アレンくんは♂
「フン、見せてみろ貴様らの力を」
ルビートのシリアス強キャラ感!
「おっぱいたゆんたゆん!」
ウオノコ・コツボの胸の双丘!
「はちみつください」
コラウドの好きなものへの執着!
「うふふ、お肉がいっぱーい!がんばえ」
アクティ・ノディオの食人衝動!
「あいつの! 膝が! 無くなるまで!」
クニー・アローのあんちきしょうへの怒り
「伸びゆく木々の新芽たち!」
ワトソニアから芽吹く萌の覚醒!
「黒騎士様のため黒騎士様のため!」
ニツェシーア・ラギュリの妄信!
「爆発する工兵魂!」
フメツ・バグダンツキの爆発力!
「未来が、みえた!」
ファル・モツェピの未来への希望は!
「見えずともわかる! このにおいは!」
ロー・ブラッドの復讐への思いが滾る!
「キョニュウクウキョニュウノチカラ
テニイレル」
トリノコ・ササミの渇望!
「ダピカの糞野郎!」
高鳴真造の飲みの席でのフラッシュバック
「汗と涙と友情でゅふふ!!」
ドン・キングたかし三世の滝汗!
「キャッチ・ホールドさーん!」
スアロキンとサダクビアの献身!
全ての息が! 整った!
(※いっけねヒヤシンス忘れてた)
うんとこどっこいどっこいしょ!
「いやああ!?」
うんとこどっこいどっこいしょ!
「やめてえええ!」
うんとこどっこいどっこいしょ!
「ちぎれるぅぅぅ!」
うんとこどっこいどっこいしょ!
「だめ中身が出ちゃううう!」
うんとこどっこいどっこいしょ!
「いや、もう!」
うんとこどっこいどっこいしょ!
「みんなあたしをどうしたいのぉぉぉ!」
うんとこどっこいどっこいしょ!
(あ)
うんとこどっこいどっこいしょ!
(見えた)
うんとこどっこいどっこいしょ!
(光が)
うんとこどっこいどっこいしょ!
(そうよ、あたしこんなにも)
うんとこどっこいどっこいしょ!
(皆から愛されていたんだわ!)
うんとこどっこいどっこいしょ!
(あたしもう怖がらない!)
うんとこどっこいどっこいしょ!
キャッチ・ホールドの閉ざしていた
心が今開かれる
今まで色々と鬱屈していた日々の
積層、なんだかよく分からないけど
何年越しかに英霊召喚されたような
そんな感覚、誰かから忘れられたくない
そんな気持ちの発露がいま
ストレッチパワーが
首に
たまってきただろう!?
うんとこどっこいどっこいしょ!
「あたし!
がんばれえええええええええ!!
がんばれあたしぃぃぃぃ!!!!」
すべての息が揃った!
引っ張るもの引かれるものの心さえも
整った!
ここにエルカイダの精神極まれり!
今こそ来たれ!
新生! あたし誕生!
「わっ!? なに!?」
「光が! キャッチの首から光が!」
「いっぱいあふれ出していく!」
「の」
「の、の」
「伸びる!」
「伸びていくというの!?」
「本当にあったんだ!」
「キャッチ・ホールドの首は!」
「長かったんだ!」
「キリンさーん!」
「これが、心か!」
――――――お前ら全員首にすんぞ
いやちょっとよくわからんけど
とりあえず全員が
ほとばしる光から目を守って
目覚めたその時には
「おめでとう、諸君、エルカイダは
今日より生まれ変わった!
黒騎士がやってきた、
そうそこには!
元気に走り回るキャッチ・ホールドの
姿が!
「みたまえ! かの首を
かの首こそが我らの
友情の証に他ならず
他のどんな勢力でも
成し遂げなかった
絶対的な友愛の心に他ならない!」
「うふふふあははははは!」
「キャッチ・ホールド!
君の未来に栄光あれ!」
「「「「「おめでとう!! 」」」」」」
「やあねえ、
わたしってば
ただキリンの姿に戻っただけなのに
みんなの心をひとつに
しちゃうんだから
ほんと罪な愛の体現者よね」
ん? なあに?
ヒヤシンス?
鏡見ろって?
なによ、そんなことくらい
なんてことないわ、だってもう
なにもおそれることなんて?
「――――――
なによこれええええ!!!!???」
今回の登場人物一覧
クロアとシロイ
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=18774&story=26
キャッチ・ホールド
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=19322&story=31
カトーチャ・プリン
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=19725&story=29
キャビー
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=19725&story=28
ブッコロリ・カリフロウ
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=18319&story=26
ロマネスコ・カリフロウ
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=19322&story=7
エミリー・マンネル
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=19032&story=11
アレンくん
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=19903&story=6
ルビート・スタッグ
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=19903&story=3
ウオノコ・コツボ
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=19032&story=1
コラウド=パルタジェ=フンター
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=18774&story=6
アクティ・ノディオ
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=19725&story=6
クニー・アロー
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=19322&story=20
ワトソニア
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=19322&story=29
ニツェシーア・ラギュリ
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=18319&story=27
フメツ・バグダンツキ
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=18319&story=28
ファル・モツェピ
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=18319&story=29
ロー・ブラッド
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=18319&story=31
トリノコ・ササミ
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=18774&story=41
高鳴真造
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=18550&story=44
ドン・キングたかし三世
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=19322&story=14
スアロキンとサダクビア
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=19725&story=20
黒騎士
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=18319&story=19
(ヴァーミリオン・ヒヤシンス)
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=18319&story=39
クロアとシロイ
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=18774&story=26
キャッチ・ホールド
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=19322&story=31
カトーチャ・プリン
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=19725&story=29
キャビー
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=19725&story=28
ブッコロリ・カリフロウ
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=18319&story=26
ロマネスコ・カリフロウ
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=19322&story=7
エミリー・マンネル
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=19032&story=11
アレンくん
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=19903&story=6
ルビート・スタッグ
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ウオノコ・コツボ
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コラウド=パルタジェ=フンター
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アクティ・ノディオ
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クニー・アロー
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ワトソニア
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ニツェシーア・ラギュリ
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=18319&story=27
フメツ・バグダンツキ
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=18319&story=28
ファル・モツェピ
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=18319&story=29
ロー・ブラッド
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=18319&story=31
トリノコ・ササミ
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=18774&story=41
高鳴真造
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ドン・キングたかし三世
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スアロキンとサダクビア
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黒騎士
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(ヴァーミリオン・ヒヤシンス)
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