黄金のリンゴのようにも見える。
虹色のナシのようにも見える。
そのキラキラの果実のあるところ、木漏れ日が射したかのように明るい。
暗い森の中なのに。
一人たたずむ少年をキラキラの果実のスポットライトが照らし出す。
若葉のような髪の毛を。
朝露のような涙目を。
少年リッターは手を伸ばすが、キラキラの実にはとても届かない。
「あんな綺麗な木の実を見つけたのに、いっしょに喜んでくれる人はいない。
あんな綺麗な木の実を見つけたのに、いっしょに採ってくれる人はいない」
「ここにいるぞ!」
やぶの向こうから旗が立つ。
黒地に白字の旗を振る。
迷子になったリッターを心配して探しに来た二人の友達。
マントとそろいの旗を振っているのがフリオで、活発な赤毛の子供だ。
「ここにいるぞ!」と言ったのがケーゴで、黒髪の頼りになるお兄さんだ。
「よーしリッター合体だー!」
言うなりリッターの背後から、股に頭を突っ込みフリオが持ち上げる。
肩車してみても、どうやら果実には届かない。
ケーゴが旗を手渡して、リッターは旗で果実をつっついた。
旗でつついてみても、どうにも果実は落ちてこない。
「よーし三体合体だー!」
言うなりフリオの背後から、股に頭を突っ込みケーゴが持ち上げる。
上からリッター、フリオ、ケーゴの三段肩車が完成した。
それでも果実まで少し足りない。
旗でつついても見たけれど、そろそろケーゴも限界だ。
バランス崩してクネクネと、立ち上がって踊るイモムシみたいになった。
ケーゴは足を踏ん張って、なんとか姿勢を持ち直す。
「誰か助けてー」
リッターの鳴き声は良く通る。
だけどここは森の中。
たまにうかつな冒険者が迷い込むくらい。
人通りなんてめったにない。
ところがリッターの声を聞きつけて、小さな女の子が歩いてきた。
こんなところになんで女の子が?
自分たちのことは棚に上げてリッターは疑問に思う。
よくよく見ると女の子の桃色の髪からは大きな動物の耳が生えている。
涼しげな水色の服のお尻に穴が開いていて、そこからふさふさの尻尾が生えている。
かわいいけども普通の人間ではない。
近づいてくる女の子にリッターは警戒した。
「あたしコゥルン。森の妖精だよ」
ところがコゥルンは自ら正体を明かした。
「もう無理。妖精でもなんでもいいから助けて!」
ケーゴが息を切らして言う。
コゥルンは組体操の補助でもするようにフリオに向かって手を伸ばした。
「違う! そうじゃない!」
真ん中でずっと支えていたフリオがつっこむと、とうとう三段肩車は崩れて三人尻もちをついた。
コゥルンはケラケラ笑っている。