トップに戻る

<< 前 次 >>

なにも考えずありのままに

単ページ   最大化   

もう少し、ほんのちょっとだけでも自分に耳を傾けられればと思う。
だけれど僕は音をたてないように生きている。自分自身にも聞こえないような。
鼓動の音すら聞こえない暮れてゆく街角に。

解剖台の上でコウモリ傘とミシンが出会う。それは美しいのだろうか?
今どきロートレアモン伯爵を語ること、そのものがシュルレアリスムそのものなのかもしれない。

夜を旅して銀色の息。せっかちな人の蝶番。鍵を閉めて抱き締める。
呆然とした詩が追い詰めて
自分の空虚さを瞭然にして
安酒はきっと深く深く胸に
つまりは僕が見えるような
天上で歌う水無月とともに
112, 111

  

誰もが気怠いと思うような日の夕暮れには、天使が空を舞うらしい。
見たことがある人に言わせると、曲がりくねった街に少しだけ水が流れたような。そんな姿だそう。
よくわからない。
別に見たいというわけではないので、どうでもいいけれど、天使の生態は気になるところだ。
ため息を食べているのだろうか?僕のアルコール臭い息だと、きっと逃げていくだろう。

水無月が好きだ。前も書いたけれども、6月は僕にとって特別な月。
空に煌めく月も特別に見える。
ただただ欲しいものと、抜け出ていくものとの間のジレンマ。

天使の話をしていた気がする。
天使は幸福をてのひらに届けてくれるそうだ。
ますます僕のような人間には縁が遠い存在で、会うことはきっと無いだろう。
僕にお似合いなのは、いつも街の上を飛んでいる腐ったクジラだ。
生きていることは死ぬことよりもずっと難しい。こんなことはこれまで何回も書いた気がする。
じゃあなんで死なないのかというと、死ぬことが生きる辛さ以上に面倒だから、と言うほかない。
面倒臭さのおかげで僕は生きている。これも何度か書いたかもしれない。朧げな記憶だ。

ひどい鬱は酒で飲み干して三千里。
昨日は一歩を踏み出したから。
寒さは僕に底抜けの冬を告げる。
聞く耳は持たず。一等足を延ばすから。
114, 113

わこう 先生に励ましのお便りを送ろう!!

〒みんなの感想を読む

<< 前 次 >>

トップに戻る