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第一戦:紅一点は人妻戦士

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第一戦:紅一点は人妻戦士

電子工学を専門とする林巧がプログラミングしたLINEへのメッセージを受け取った宇佐美洋助は、市役所庁舎を飛び出した。非正規パート扱いなので、有休も出しやすく急な用事にも対応できる。給与は激安だが。彼が向かう先、それは悪の秘密結社ジェノサイドのメンバーが暗躍する場所だ。ジェノサイドとはこの国の人口を減少させ、やがて衰退化させることを目論むシンジケート。ありとあらゆる智謀を巡らせる構成員を擁するこの組織が、今、国内最大通販会社『ジャングル』の倉庫で暗躍しているという通報が入ったのだ。行ってどうするか? なぜなら、彼は戦隊ヒーローなのだ。とはいえ、TVで放送されている今が旬のリア充イケメンではない。中年ばかりが集まったローカルヒーロー・ミドレンジャーなのだ。かといって洋助、別に正義感から闘いに身を投じているわけではない。就職もまともにできない喪われた20年の世代、日々の生活にも疲れている。その彼の目的は…。

「ああ、洋助君、おはよ! 出動ね、頑張りましょ」
と、水色の愛車ムーブから、高校時代と変わらぬ柔和な笑みを見せてくる女性、間嶋順子だ。
「ああ、順子か」
「さ、早く乗って。ここからじゃ、随分時間、かかっちゃうもの。大事な闘いを前にスタミナ消費しちゃだめよ。若くないんだし」
「け、若くないのはお互い様だろ」
悪態をつきつつも、ほんのりいい香りの漂う室内、助手席に身を沈める。右側でハンドルを握ると、微かに日々の生活に疲れた様子は伺えるが、机を並べていた頃と変わらない甘酸っぱさを感じずにいられない洋助だ。
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