ノスタルジーおじさん(2022/08/31)
おじさんは覚えているよ
その昔
今はもうなくなったデパートの屋上の
全てが小さな遊園地の片隅で
百円玉で三分間
どこにも行けない上下運動を繰り返す
宇宙ロケットにまたがって
どこまでも広がる青い空を見上げた日々を
あの頃と何も変わっていない
まるで成長していない、この少年は
もう少しでつぶれそうなラブホテルの一室で
全てが小さな己のちんぽこをおっ勃てて
二万円で六十分
どこにも行けない上下運動を繰り返す
素股がしごいたロケット発射はコンドームに命中する
ふと気が付くと、またがったデリ嬢は
あの屋上で見た
コインを入れれば自動で動く
四足歩行のパンダに変わる
懐かしき電子音の通りゃんせは響かずに
壊れたテープのように繰り返し
少ない語彙でちんぽの硬さを褒めてくれる
上を見上げると、低い天井にシミを見つけるが
それはよく見るとゴキブリだった
失われた三十年とは言うけれど
俺たちそもそも、何も手にしてないじゃないか
賢者の頭脳でそんな悟りを得るけれど
睡魔が襲い、パンダが口を避けて頬にキス
寝る前にホテルを後にして
翌日までは車中泊
明日は朝から、あり着いた日雇い仕事
虚空に精を散らすため、日々労働に精を出す
どこにも行けないロケットを動かすためのコインを稼ぐ
三十年後はどうなっている
ちんぽは勃つか
俺は死ぬのか
そんな確実な絶望すらも
今はまだあまりに遠く
近視の両目にぼやけて映る
ああ
幼い頃の青い空は
もう二度とは見れないなぁ