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15・3号室の新たな住人

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夕方になり、僕たちは打ち合わせを終わらせると一階の桜子さんの部屋を訪ねた。

「お邪魔します」

「はーい、さぁどうぞ、どうぞ」

桜子さん達の部屋は二部屋ぶち抜きで僕の部屋とは作りが違う。

食卓に並べられたのはタケノコご飯にタケノコスープ、タケノコの煮物にタケノコのお刺身。それに鯛の西京焼き。

美味しそうな匂いが湯気とともに立ち上がっている。

「「「「「いただきまーす」」」」」

澪奈さんは一口食べるなり
「お!……美味しい……!」と絶句した。

エリナも
「ヤ、ヤバいヤバイ!
箸が止まらないよ」

パクパク、ムシャムシャ

やはり桜子さんの料理は世界一だ。

「こんなに大人数で食べるのって久しぶり、やっぱりいいわね」と桜子さん。

僕もまったく同意見だ。

澪奈さんとエリナも
「そうね、ここのところずっと忙しくて一人で外食だったし」
「あたしも……」とうなずいた。

楓ちゃんが
「もう! 本当に社交辞令を真に受けて来るんだもん!!ホント大人なんだから空気くらい読んでよね。
今晩はお兄ちゃんといたかったのに」と拗ねた声をあげた。

桜子さんが
「こ、こら楓! 失礼でしょ!」とたしなめる。

「ママだって、お兄ちゃんの為にお料理作ったのに」

「楓! 止めなさい」

「ママ、本当はお兄ちゃんの事好きなんでしょ! あたしだってお兄ちゃんがパパになって欲しいもん」

え!? そんな!
僕なんてのは弟とか甥っ子くらいにしか見られてないと思ってたけど……いやそれでも光栄だけど……けどまさか桜子さんが僕の事を好きだなんて!?楓ちゃんの先走りでしょ!

「んぐぐぐ」

桜子さんは楓ちゃんの口をふさぎ泣きそうな顔になって
「…牧野さんごめんなさい、楓が変な事を言って……
あわわ冗談で口が滑っただけ、牧野さんもこんなオバサンなんかイヤですよね……」と言う。

え? ああ…冗談だったんだ、そりゃそうか…真に受けてしまって恥ずかしい…

「そ、そんな事無いですよ、桜子さんはまだ若いしキレイだし癒されるし、出来たら桜子さんみたいな人と結婚したいなと思ってます」

桜子さんは顔を真っ赤にしてうつむいて
「ホント……ですか?」と聞いた。

突然エリナがバンと箸を置いて
「決めた!あたしココに引っ越す!
まだまだ打ち合わせあるのに、いちいちカミナリマガジンに行くのもここに通うのも時間の無駄だし。
ここに住んで集中して作業した方が効率的よね!
牧野先生の部屋以外空いてるようだし、いいでしょ?」と言った。

ダメだよ!
と言おうとしたけど桜子さんの経済状況を考えると部屋は埋まった方がいい。

生活だってずっと楽になるだろう。

桜子さんは
「え? あ、ありがとうございます…」

「ダメ! 」と楓ちゃん。

エリナは
「ねぇ、楓ちゃん『プリプリぷりんてる』って知ってる?」

「知ってるよ、今一番流行ってるアニメだし。あたしも見てるよ」

「あたしあのキャラデザやったの」

「うそ? だってあれウサロックって人……」

「あたしがそのウサロック」

「う……うそだー」

「ホント。ほら見て」

エリナはipadを取り出した。

「ほらこれがアイデアスケッチで、これが第一稿、これが改定稿で、こっちが決定稿」

「ホントだ! え?じゃあお兄ちゃんの小説、ウサロック先生が描くの?」

「そう。完璧に仕上げたいから牧野先生と打ち合わせをいっぱいしないといけないの。だからここに住むと丁度いいの」

「そっか……じゃあしょうがないか。
でもお兄ちゃん取らないでよ!」

「んーそれは約束できないにゃ」

澪奈さんが
「……あたしも部屋借りようかしら」

桜子さんが
「ごめんなさい、いま3号室しか空いてなくて、2号室5号室は配管が悪くなってるから修理する予定なんです」と申し訳なさそうに言った。

「ん~それじゃしょうがないわね」

え…! ちょっと待って! 3号室って僕の隣部屋じゃないか!
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