20・冤罪ですってば!!
ドアから出てきたのは中年のゴツい警察官だった。
僕は
「はい?何でしょう」と答えた。
「いま防犯対策で商店街を回っているところでして」
「はぁ。それは……ご苦労さまです」
「キミ、少女の口を塞いで何をしようとしておる?」
「あ、これは人前で言ってはいけないことを言いそうだったので…」
「まさかとは思うが拉致しようとしたのでは?」
「まさか!そんな事しませんよ!
僕達は知り合いなんですから、ねぇ楓ちゃん」
「うん!」
「キミ、ドアの前での話を聞いてしまったが、このお嬢さんがパパとかセック…何とか言っていたけど、どういう関係ですかね?」
「え? パパってこのコは…あー!!違う違う、違います!!パパ活とかそんなんじゃ無いんです!
この子はアパートの大家さんの娘さんで、たまたま散歩してたら出会って一緒に歩いているところなんです」
「お嬢ちゃん、この人の言うことは本当?」
「そうよ」
「じゃあなんで手を繋いでいるの?」
「あたしが繋ぎたかったから、あたしから頼んだの。悪いの?」
警察官は僕をにらんで
「それで、君は手を繋いだと」と言う。
「……はい……ゴクリ」
「キミ交番までいいかね? 店先では何ですからな」
僕と楓ちゃんは駅前交番まで連れて行かれ、取り調べを受ける事となった。
警察官は書類を広げ、ペンでコツコツと机を叩きながら
「最近、この地区で連続少女つきまとい事案が発生してね。
言葉巧みに声をかけ、手を引いたり 体に触ろうとしたり、勝手に写真を撮ったりする男がいるんだ。
目撃証言によるとキミと年格好が一致するんだ」と言った。
「そりゃ年と背格好が同じ人なんて沢山いますよ!他に何か特徴は無いんですか?」
「話し方にクセがあるようだが、それは誤魔化せるな」
「僕は普段付き合いのある娘さんと一緒に歩いていただけなんです!もう帰して下さい!」
「普通はこんな大きな娘さんと手を繋ごうなんてしないと思うがね」
「そりゃ小さい頃から手を繋いでたから、その……習慣でつい。
ほら、僕のスマホのアルバム見て下さい。楓ちゃんとは小さい頃から遊んでたり…」
警察官はスマホを確認すると机の引き出しにしまい
「コレは重要な証拠だ。預かっておこう」と言い、書類に何やらメモしながら
「幼女の頃から興味を持って手なずけていたと……」と呟いた。
「スマホ返して下さい!!それに曲解しないで下さい!」
「しかもキミは定職に就いていないそうじゃないか、平日昼間っからフラフラ歩いて少女のお供かね?」
うぐ……ちゃんとした職についていればまだ社会的信用もあったんだろうけど……しょぼん。
警官は
「で、今日はこれからどうするつもりだったのだ?」と尋ねた。
「だから…このまま一緒に家に帰るつもりだったんですよ」
「つまり自宅に連れ込もうとしたんだな」とまたメモを取る。
「だから大家さんは同じアパートで暮らしているから、帰る場所は同じなんです!」
「お嬢ちゃん、お兄ちゃんの部屋にはよく遊びに行ったりしてるのかな?
隠すとお兄ちゃんの立場は悪くなるよ」
「ま……まぁ……極たまに…くらい」
本当はちょくちょく来てるんだけど……
「そうか、やはり普段から安心感を与え飼い慣らしていたか。
署の方で調べさせてもらうよ」
楓ちゃんは立ち上がって
「もう!警官のクセに人を見る目が全然無いのね!
お兄ちゃんが黙っているから言わなかったけど、この牧野ヒツジさんはホムセンジョーカーをやっつけた#イケメン格闘家なの!
本当だったら警察から感謝されてるの!!!!」
「なに……!!!
た……確かに似ている……キミ、本当かね?」
「はい……僕です」
「なぜ、名乗り出なかった?」
「あれは足がもつれてひっくり返った所にたまたま犯人が突っ込んだだけで、別に倒すつもりは無かったので。
それに一緒にいた友人を無事に家に帰すことに頭が一杯だったんです。
直接的な被害者もいないようだし僕が出て行っても、意味が無いかなと思って」
「ふむ、なるほど。
その件は一時おいておこう」
楓ちゃんが
「おかないでよ!」と叫ぶ。
「キミ、だからといって少女つきまとい犯の疑いが消えたわけではないぞ」
楓ちゃんが泣きながら
「もー!!この無能酸味パウダー臭警官!!爆発的に職質センスゼロの税金ドロボー!!そんなんだからいい年して交番勤務なの!!お巡りさんと呼ばれていいのはイヌと三十歳まで!!このザ・老害!!紅林刑事!!冤罪魔め!!」と机の上の物を警官に投げつけた。
か…楓ちゃん……!?