34・しーくれっと2ch『新都社板』
運転手の弓川さんに送ってもらい、アパートに帰ると僕の部屋に灯りが点いてる。
ガチャ
ドアを開けると、桜子さんと楓ちゃんとエリナが座っていた。
「牧野さん!」「お兄ちゃん!」「ダーリン!」
三人が叫んで僕に飛び付く。
「え?どうしたんです?」
桜子さんが泣きながら
「牧野さん!!!
どうしたじゃ無いですよ!
スマホも置いて朝からいなくなるから、心配して。
あと一時間して帰らなかったら捜索願い出そうって皆で決めた所だってたんですよ」
ギャー!!!そうだった……
「すすすすすスミマセン……ご心配かけて。
そ、その朝……スマホ忘れて出て……
えーと……友達とバッタリ出会ってつい遊んでしまって」
「お兄ちゃん、放っとくとすぐモテるから心配しちゃう、もういい加減にして!キライ……ウソウソ大好きだから!」と楓ちゃんが僕を抱き締める。
エリナは
「ダーリン……急にいなくなって怖かった……」といつものハイテンションは鳴りをひそめさめざめと泣いている。
「本当にゴメンね」
「ところで友達って男?女?」とキッと鋭くにらむ。
「オ、オトコ……デス……」
うぐ……つい嘘をついてしまい心が痛い。
でもこの状況で藤咲希春と二人でいたと言うと何をされるか分からない。
もう希春とは会わないと決めたんだ。
このくらいの嘘なら……
クンクン
エリナは僕を匂う。
「ふむこの匂いはディオールのメンズ・フレグランスか」
さすが野生のエリナ……送ってもらった運転手さんの匂いが移ったのか。
ホッ
「でも……女の人の匂いもする。
若いコと中年女性の匂い……」
「い、いや~人混みの中にいたから……
それじゃないかなハハハ」
ズキン!
心に激痛が走った。
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同時刻
ここは新都社最深部とも言えるアンダーグラウンド。
しーくれっと2ちゃんねる『新都社板』
音声配信機能を使って誰でもネットラジオが出来る巨大電子掲示板である。
ラジオからは甲高い中性的な声が響く。
「……でさーでさー、それでその友だちはずっと藤咲 希春を追っかけたけど見失ったんだってよー。
スゴすぎない?」
550: 新都社作家氏 : 22:10:26 ID:527D
ウソつけ、藤咲 希春がそんな所にいるわけない
「マジだって。
友だち超ファンだし古参だし。
見間違えるわけねぇって。
たぶんテレビの撮影とか?
知らんけど。
あー生で藤咲 希春みてーー!!!」
551: 新都社作家氏 : 22:11:14 ID:MRB4
新都社ラジオなんだから何か自作の話するかレビューでもして
「うるせぇなレビュー厨が!
『雲海フーガ』しかアツいの無いんだし。
どーせみんな10日で5万コメとか凄すぎてやる気なくしてんだろーが。
他の作品なんてフーガに比べたら読む価値ねーから。
ほいレビュー終了」
552: 新都社作家氏 : 22:12:10 ID:85gmP
ナメてんなコイツ。
そういや昨日ツイッターで更新報告したら牧野先生からいいねしてもらったよ(自慢
553: 新都社作家氏 : 22:12:31 ID:PjCa
羨まけしからん(白目
554: 新都社作家氏 : 22:13:02 ID:85gmP
スクショあげたらプチバズった自慢(本日二度目
「はぁー!?
牧野センセーとか受賞するまでフォロワー全然いなかったんだろ。
ったくオメーらバズったら手のひらクルンクルンとか糞ダセェつーの」
555: 新都社作家氏 : 22:14:11 ID:Dp52
じゃお前フーガがバズる前から知ってたのか?
「うっせぇ!!クソが!
お前らなんてどうせロクに作品書かないワナビー野郎ばっかだろ」
556: 新都社作家氏 : 22:36:47 ID:Dp52
煽るだけで新都社の話題しないなら俺寝るわ、これからは藤咲板で語ってクレメンス
557: 新都社作家氏 : 22:39:15 ID:7Der2
もーせっかく新都社が注目浴びているんだから盛り上げてこうぜー
「いやフーガがヒットしているだけで新都社自体が伸びてるワケじゃねーし。
それより藤咲 希春の新曲の話なんだけどさー」
558: 新都社作家氏 : 22:43:37 ID:7Der2
藤咲 希春もこんなバカがファンだと大変だな
559: 新都社作家氏 : 22:52:11 ID:PjCa
ファン民度が低すぎて藤咲 希春を見る目変わっちゃうな
「はあ!?
うっせぇ!バーカ!!!
くそー!!もう止めてやるよ!!」
ブチッ
560: 新都社作家氏 : 22:59:14 ID:7Der2
はーやっと消えたか……
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