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39・僕の逃避行!?

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ピンポン!ピンポン!

ドンドンドン!!

ドアを叩くにぎやかな音で目覚めた。

時計を見るとまだ朝6時前。

ガチャリ

僕は
「ふわぁ…………誰です?
こんな朝早く」とドアを開ける。

目にうっすら涙を浮かべた澪奈さんが立っていた。

「先生!ご無事で良かった!!
さっ、スマホと実印と身の回りの物を持ってついてきて下さい!」

僕はワケも分から無いまま言われた通りにすると、待っていたタクシーに押し込まれた。

ブロロロ

「な、なんなんです?
まるで拉致じゃ無いですか!」

「到着してから説明します!」

着いたのは湾岸エリアにある高級ホテル最上階のスイートルーム。

「澪奈さん、ここスゴい部屋ですね」

「一泊10万ほどですがセキュリティがしっかりしてて、すぐに使えるのがここしか無かったもので」

「じ、10万……! どういうことなんです?」

「まず新都社掲示板をご覧ください。
文春砲の一件で、牧野先生と藤咲 希春の殺害予告が書き込まれたんです。
犯人が逮捕されるまでここに身を隠して下さい」

僕は『言いたいこと書いて逃げたり雑談したりするスレ』を確認した。

「さ、殺害予告って……!
でも僕は一般人で無名だし、アパートに隠れていたら分からないでしょ」

「そんなの調べる方法なんていくらでもありますよ。
そうそう、それと。
この委任状にお名前とご住所書いて下さい。
転居手続きをして居住地を弊社の作家カンヅメ用マンションに移しますので」

「そんな……もうアパートには戻れないんですか?」

「いえ、あくまでも書類上の処置です。
犯人や関係者が役所勤めで住所が割れる、という事も考えられます。
無駄足かも知れませんが、何もしないよりかは良いので」

澪奈さんの相変わらずの手際の良さには感動すら覚えた。

と同時に心配で心が重くなって
「希春の方は?」と尋ねた。

「警察から連絡が行っているハズなのでもう対処はしているでしょう」

澪奈さんは一つ息を吐くと
「お腹すきましたでしょ?
朝食にしましょうか。
用心の為に先にルームサービスを用意したおきました」と明るい調子で言った。

澪奈さんはそう言うと部屋の隅から凝った装飾の付いた金色のワゴンを押してきた。

パカ。

半球状のフタを開けるとサンドイッチやオムレツの乗ったお皿が並んでいる。

「僕はいま食欲が無いので、もし良かったら澪奈さんどうぞ」

「いえ、あたしも牧野先生の事を思うと食事する気になれなくて。
でも後でいいので必ず食事は摂って下さい」

「はい」

僕は委任状を書いて押印し、澪奈さんに渡した。

「では、警察と役所を回ってきます!」とカバンに書類をしまうと立ち上がった。

ドアまで見送りに出る。

澪奈さんはクルリと振り返り
「食事しないにしても10時までにはワゴンをドアの外に出して置いて下さい。
それ以外に絶対にドアは開けないこと。
それと誰にも居場所は知らせてはダメですよ!
いいですね。
ルームサービスも頼んじゃダメです。
ホテルのスタッフが犯人という事も考えられるので」と注意した。

「は……はい」

そして僕を見つめ
「あの……ネットへの書き込みなので単なるイタズラでしょうし、犯人もすぐに捕まると思います。
でも……あたしすごく心がザワついてて……
ひょっとすると、もう牧野先生と会えないかもと思うと……」と急にポロポロと涙をこぼす。

バッ

澪奈さんは僕の体を急に抱きしめた。

ロケットなお胸が僕の胸板でつぶれてボヨヨンと盛り上がり、開いた襟元からおブラがチラリ。

白……

僕は慌てて
「だ、だ、大丈夫ですよ!!
言われた通りにしますので。
澪奈さんこそ僕なんかのために動いてくれてスミマセン。
よろしくお願いします」

「はい……で、でも……
もし……牧野先生に何かあったら……あたし……」

澪奈さんはそう言いながら僕の首に抱きついた。

柑橘系の甘く爽やかな香りが鼻腔をくすぐり、熱い涙が伝う。

お胸は這うようにムニュムニュと動き僕をまさぐる。

「み……澪奈さん……」

「す!!すみません!!
取り乱してしまって!!」と言って何度も頭を下げる。

「では……行ってきます。
あの……無事にこの件が終わったら……」と澪奈さんは顔を真っ赤にして言う。

「??はい??」

「あたしのことも本気で考えてもらえませんか……
きゃはーーー↑↑↑↑」

澪奈さんは小さく叫ぶとさらに真っ赤になって出ていった。

うーん、澪奈さんの思考に時々ついていけなくなる……


一人部屋に残された僕はあちこち部屋を歩いて回った。

リビングの隣は寝室でその先はバスルーム。

バスルームだけでも僕の部屋より広い……

ピコン!

希春からLINEが来た。

[ ヒツジくん、犯行予告があったけど大丈夫?
 ゴメンなさい、イヤな思いさせて ]

[ 悪いのは犯人なんだから気にしないで
 僕の方はカミナリマガジンさんの用意してくれた部屋に隠れてるから大丈夫。希春は? ]

[ いまプライベート用に借りている所に向かっている途中。
もうすぐ着くから、落ち着いたらテレビ通話にしていい?
ヒツジくんの顔を見て落ち着きたいの ]

[ うん分かった。待ってます ]

ぐー。

希春とのLINEで心が軽くなったのか、急にお腹が空いてきた。

テレビをつけて食事を摂る。

ワイドショーでは殺害予告の事を大々的に報じていた。

さすが国民的アイドル……

「ふう」

食べ終わると入り口のドアスコープを覗いて人がいないことを確認し、ドアを開けてワゴンを廊下に押し出す。

するとちょうど人が通りがかった。

慌ててドアを閉めようとすると……

「うそっ!? ヒツジくん!?」

顔を向けると変装用のセレブハットに伊達メガネ姿の……

「え? 希春!?」

「「どうしてココに!?」」
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