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43・インタールード~幕間寸劇~

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夕闇迫る都心、金曜日とあって華やかだ。

行き交う人々は彼氏彼女連れがほとんど。

俺は月に一度のお楽しみ、レンタル彼女を借りた。

いつも通り指名は梨乃チャン。

モデルもやってるという美形JDのSクラス彼女だ。

指名料5千円にレンタル料1時間1万5千円とお値段もSクラス。

今日は奮発して4時間コースだ。

こうして美少女を連れて街を歩くと皆が振り向き、実に気分が良い。

街行く愚民どもの羨望の声が心地よい。

「今のコ見た?すごい美人」
「スタイルいいなぁ」
「ここら辺出版社が多いからモデル?」
「あんな彼女を連れてる男の人ってどっかの社長とか?」

残念ながら俺はしがない勤務医。

上司や先輩医師にコキ使われ激務激務で彼女を作る時間も無いが、金なら人並み以上に持っている。

この世は金さえあれば何とかなる。

性欲も自己顕示欲も自己肯定感も金が全てを解決してくれる。

こうしてたまの休みはレンタル彼女を引き連れて憂さ晴らし。

どけどけ愚民ども。

どいつもコイツもB級以下のクソザコ彼女を連れて恥ずかしくないのか?

ゴミのような女を連れたゴミ共はゴミらしく道の端に吹きだまってろ、このゴミが!!!

あーこうやってマウント取って歩くのは実に気持ちいい。

カミナリマガジン社の前を通ると男が一人こそこそと出てきた。

なんだ? こいつ……彼女すら連れていないとは憐れだなぁ。

すると男を追って
「ね、ちょっとダーリン! 待ってよ!」と金髪碧眼美少女が走って男のもとに駆け寄った。

脚めっちゃ長いし肌なんか真っ白しろのトゥルントゥルンの妖精クラス!なんじゃこれ!!

しかもその彼女イナイ男に腕を絡ます。

「ダーリン捕まーえた! 帰るんならあたくしも一緒!」

ぐっあ!あんな美少女が彼女で、しかも恋人繋ぎ……!ええい負けてられるか!

「梨乃チャン……」

「なんすか?」

「手ぇ繋ごうか?」

「いーけどオプション扱いになるんで1分2千円すよ」

「ゴクリ か、かまわんよ……」

梨乃チャンは
「じゃあ、時間計りますね。スタート」と言いAppleウォッチを押す。

ほ、ほら見ろ見ろ!Sクラス彼女と手繋ぎデートだぞ!!

ふぅこれで負けは無くなった。

すると抜群にスタイルのいいキャリアウーマン風美女があらわれた!

顔も胸も……S、いや特Sクラス!

その特Sが先ほどのカップルを声をかける。

「牧野先s……はぁはぁ!
もうすぐエレベーター乗っちゃうし、階段で急いで追いかけてきたんですよ!」

「あわわ澪奈さん、すみません。でも追って来なくても……」

「仕事後でみんなで食事くらい良いじゃないですか!
編集長の村井もご一緒したいって申しておりますので」と言ってこれまた男の手を繋いで体を密着させた。

男は
「いえ、さっき言った通りおやつ食べ過ぎたみたいで食欲が無いんですよ。
それにフーガの展開もちょっと考えたくて……一人の方が考えが進むので、申し訳ないですけど、今日はこれで失礼します。
また月曜に」と頭を下げる。

「えぇぇ、そんなぁ」と特Sクラスが突き出た胸を男の二の腕に押し付けている!

「梨乃チャン、もっと体を密着させて!胸が当たるくらいに」

「乳当て1分5千円すけど」

「いーから、やって!」

むぎゅ! 気持ちぃいい……しかしだからと言ってまだ負けている……

すぐさまレンタル彼女店に連絡を入れた。

「あー私だ。店長! 追加オーダー!
白人もしくはハーフの美少女追加! すぐに届けて!」

ふー!これで負けないぞ!

すると
「お兄ちゃん!」と声と共にロリータファッションに身を包んだ天使のような美少女が男の胸に飛び込んだ。

なんだ……まさかこのコも?

「楓ちゃん!
どうしたのその格好?」と男。

「カミナリティーン・マガジンのスタイリストさんと仲良くなってね。
似合いそうだからって着せてくれたの!
お兄ちゃんに見てもらいたくて出てきちゃった!」

俺はスマホをふたたび手にし
「て、店長! 追加の追加だ。JKのロリータファッションの似合うコを!
なに!? 未成年は扱ってないだと!
金ならいくらでも出すからすぐに何とかして!」とオーダーをかけたが、奥からまた一人出てきた。

「店長! まだ切らないで、待って!!さらに追加あるかも……」

「牧野クン! ウチも変身したべ」ともう一人、ゴスロリファッションのコがやって来た。

「愛里まで! いや……でも見違えたな。スゴく似合ってるよ!可愛いよ!」

「うひひ照れるべ」

ゴクリこちらもなかなかの美少女……方言丸出しだがそのギャップがまたィィイ!!!! よし!このタイプも追加だ追加。

さらにゴスロリ美少女の後を追うように、ゆるふわ美人が登場し
「こら楓、愛里ちゃん!
走って転げたりしたらたら危ないでしょ!
それにその服は借り物なんだから! はぁはぁ」と息を弾ませる。

しかもなんだ……このプルンプルンのおっぱいお化けは!!

息を弾ませるたび質量の暴力とも言うべき胸が弾む弾む、また弾むッ!!!

げっ!!もう一人出てきた!

「もぉ!ヒツジくん!
仕事終わったらバイバイなんてつれないじゃない♪」とセレブバットを被った眼鏡少女が男の首に腕を回す。

男は
「希はr……」と言いかけて口をつぐみ
「いやまた月曜に会えるんだし」と続けた。

希はr……???え?え?え?え?え?

まさかこのスタイル、横顔……藤咲 希春???ほ、本物!?!?!?すげーめっちゃ美人でエグいくらい可愛い!!!

ま、負けた……ボロ負け……なんて言ってられない!

男なら負けると分かっていても勝負に挑まなければならないっ!

「店長! ゴスロリちゃんと巨乳お姉さんとアイドルを3人前追加ですぐにカミナリマガジン本社前に届けて!!!!すぐに!!」

質で劣っても数でなら巻き返せる!

男は
「せっかくのお誘いは嬉しいけど……ちょっと一人の時間が欲しいんだ。
受賞してからというもの慌ただしくって、少し頭を整理したいというか」と言うと

ゆるふわ巨乳美人が
「ほらほらみんな、あまり牧野さんを困らせないで。
男の人には一人になりたい時があるのよ、分かってあげて」と諭すように優しく言い、そして頬を赤らめ
「牧野さんも健康な男の子だし……ほら……その……ね
若いから元気が余っちゃうと言うか…その……溜まっちゃう……からね。
一人になりたいのよ……」と続けた。

「あ~お兄ちゃん、ひとりえっちしたいんでしょ!?」

男は
「……ち!違いますよ!桜子さんに楓ちゃん!!
そそそうじゃ無くて、純粋に僕はフーガの展開を考えたくて!」

「なーんだダーリン!そういう事ならあたくしのスゴい動画送ったゃうから!」
「ウチもナマ乳以上のものを送るベ! 使って使って!」
「せせせ先生!ああたしもぜひお好みの性癖があればリクエストして下さい!」
「えへへーヒツジくんがクルクルパーになっちゃうくらいの送っちゃおうかなー♪」

「だから!そういうのはいいですから!
誤解しないで下さい!
そそそそれじゃ僕帰りますから!失礼します」と男は頭を下げて地下鉄の出入口へと走って行った。

???な、なんだ!?!?!?

あれほどの美少女、美女の全お誘いを断って立ち去った……だと?

考えられん!!

だが女を追わせてあえて振りほどく、なんて格好いいんだ!!

負けた!!男として完敗だ……急に自分の考えやしていた事が恥ずかしく惨めに思えてきた。

俺は梨乃チャンの手をふりほどき、店長に連絡を入れた。

「店長! すまないが先ほどのオーダー全キャンセルだ!」

「え!? そんな……もうみんな出ちゃいましたよ!
まぁキャンセルは構わないけど、全員の指名料と1時間分の料金は頂きますよ」

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