「おつかれさま、今日はもうあがって良いわよ」
「はーい」
ふー、働いた働いた。本日も 『ルイーダの手先』 のお仕事、終了です。大変お疲れ様でした。
「それと、今朝も言ったけど明日は店お休みするから。あなたも一日ゆっくりしなさい」
「うん。でも良いのかなー? ここまがりなりにもルイーダの店だよ。勝手に休業日とかにしちゃってまずくない? 色々と」
「どうしても外せない用事があるのよ」
この人、世界の現状分かってるのかな。ここもいつモンスターに襲われるとも知れないのに。それともバラモスも週休二日制だったりするんでしょうか。
「代わりに店番出来る人もいないし、仕方ないじゃない」
「いるじゃん。今。目の前に。おばさんが手塩に掛けて育てた有能で頼れる看板娘が!」
「まだこの店を潰すつもりはないわ」
む……。ならば。論より証拠です。見せてやりましょう、私のこの溢れんばかりの商才を。
「ここは ルイーダのみせ。たびびとたちが なかまをもとめて あつまる であいと わかれの さかばよ。なにを おのぞみかしら?」
「何よ、急に」
「おばさんの物まね。どう、そっくりでしょ」
「色気が足りない」
むむ……。ならばならば。
「ここは ぶきと ぼうぐのみせだ。なにを かうかね?
――まほうのビキニ だね。どうも ありがとう。だれが もつかね?
――ルイーダ は これを そうびできないが いいかね?」
「……どうして装備できないのかしら?」
「年齢制限」
「そう。この武器屋は喧嘩まで売ってるのね」
「ま、待って。ジャストキディング。軽いブラックジョークだから、お願い、その振り上げた拳は下ろして」
ふぅ。危うく 『たたかう』 されるところでした。
「とにかく。あなたに任せるわけにはいかないわ」
「ちぇっ。ダメかぁ」
「家でおとなしくしてなさいな」
「あれ、そう言えば明日って何の用事?」
「隣のレーベ村でね、友達の結婚式があるの。出席しないわけにいかないでしょう?」
友達……結婚……。
私は思わずおばさんの顔をじっと見つめてしまいました。
お友達はハッピーウェディング。おばさんはオンリーロンリー。おお、なんと物悲しい情景か……。
「大丈夫だよ! たとえずっとバージンロードを歩けないまま孤独な老後を迎えたとしても、私はおばさんを山に捨てたりしないから!」
ルイーダのこうげき
つうこんのいちげき!
べちっ
デコピン。