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○月×日 どもほるんりんくる

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 んー、いいお天気。
 見渡す限り雲一つ見えない正に快晴! ではなくちょっと曇りがちな空。私はこの位が好きなんです。だって、晴れ過ぎてるとあっついし。
 こんなにも素晴らしい天気の日ともなれば散歩せざるを得ないというものなので、ウィンドウショッピングに出掛けるとします。
 はてさて本日は如何ようにして隠しボス・道具屋に挑もうかしら、さまざまな戦略を画策しながらてくてく歩いていると、見知った顔が向こうから近づいて来ました。

「こんにちはー」

 私が駆け寄って挨拶をすると、その女性はにっこり微笑んで 「こんにちは」 返事をくれます。

「ルイーダさんのお店で働いてるんですってね。ふふ、偉いのねー」

 綺麗な長い髪に白い肌、16歳の息子がいるとは到底思われぬ若々しさ。
 そうです。何を隠そう、このお方こそ! 勇者の母君にあらせらら……あらせられら……れ? ……ます。たいそう美人にあら……です!

「えへへ。あの、ゆーくんは、元気ですか?」
「あの子も最近はあまり家に寄り付かなくて……。旅立ったばかりの頃は毎晩のように泊まりに戻って来ていたのだけど」

 勇者ママはゆっくりと、丁寧に喋ります。とても優しい感じです。誰かさんとは大違い。

「この間もね、町には来ていたようなのに、私に顔も見せずに行ってしまったの。なんだかルイーダさんのところで商人を探していたみたい」

 ……果てしない胸騒ぎを覚えました。ああ、何だろう。その商人は辺境の地の街おこしの為、あわれ使い捨てられてしまうような、そんな不吉な予感が……。
 いやいやいや。まさか。勇者に限ってまさかそんなことするはずがありませんよね。

「うふふ、でも大丈夫。あの子が貴女を忘れるはずがないもの。やるべき事を全部済ませたら、必ずこの町に帰ってくるわ」
「はい」

 その後もしばらく立ち話をして、勇者ママと別れました。
 しっかし、ホントいつも素敵な人だなぁ。去りゆく後姿にさえ清楚な雰囲気が漂っています。ナチュラルにたおやかな物腰と言い、うーん、憧れる。乙女達の理想像、その良い例と言えましょう。

「こんなとこで何をしてるの?」

 わっ!
 突然背後から声をかけられ、びくっとしてしまいました。振り向くとそこには――

「あ、悪い例だ」

 ルイーダおばさん。いつの間に忍び寄っていたのでしょうか。あやしいかげの一族かも。 

「? 何それ」
「ううん、何でもない。おばさんのせいじゃないよ」
「なんなの一体」

 そう。しょーがないんです。おばさんは年相応に肌が荒れ気味だとか。目尻のしわが気になるだとか。これはおばさんのせいではないのです。誰のせいでもありません。強いて言うなら、若さとか美白とかその辺を司ってそうな神様が悪いのでしょう。
 うん。

9

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