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-登場人物紹介-

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鱗道灰人:
 主人公。蛇神の代理人である鱗道家の末代。生まれ付き灰色の髪以外にこれと言った特徴はない中肉中背の四十路。髪が硬く、皮膚に刺さることもある。老眼が進み、老眼鏡が手放せなくなりつつある。元喫煙者だが、今は吸っていない。未婚。イヌ好き。億劫な出来事に遭遇した際に首の裏を掻く癖があり、それでもやると決めた場合は右手、絶対にやらないと決めた場合は左手で掻く。
 覇気も愛想もはっきりとした主張もほとんどなく、正義感もない。受動的な立場を取ることが多く、話も聞き手一方に回ることが多い。新しい物に興味はなく、行動を起こすにも大抵腰が重い。ただ決めたことは譲らぬ頑固な一面があり、それに起因して蛇神の代理仕事に対する責任感は強い。感情表現は乏しいが、身内や関係者に対する情は厚め。他人の変化や心情を詳しく察するのが苦手で交友関係は非常に狭く、学生時代には交際相手がばっさりと髪を切ったことにも気が付かずにフラれたことがある。
 中学二年の時に交通事故によって生死をさまよった結果、父親から代理仕事を引き継ぐことで生還。環境の変化に戸惑い様々な友人に話したが猪狩以外に信じられることはなかったことも、受動的な性格や交友関係の狭さに拍車をかけた。
 三十代で質屋「鱗道堂」を開き、店主となる。接客態度が良いとはお世辞にも言えないため客は少ないが、「奇っ怪なものを持っていっても取り扱ってくれる」「厄介な物を引き受けてくれる」と口コミがあるらしく、持ち込み場に困った厄介な物――多くは〝彼方の世界〟絡みの物を持ち込まれるようになった。本人は歓迎していないが、客に対しては真面目な対応を心がけている。
 蛇神の代理仕事を優先するため、「鱗道堂」は不定休で開店時間も決まっていない。蛇神の代理仕事がない時や悪天候でもなければ店は開けているが、店番はシロとクロに任せていて隣接する居間で過ごしている。
 趣味は特になく、新聞を読むのとシロの散歩が日課。好きなものは唐揚げ、焼き鳥(塩)。嫌いなものは生野菜。秋生まれ。
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シロ:
 東北の山間、荒寥とした社にいた霊犬。大型犬~超大型犬ほどの犬で、真っ白で豊かな被毛の持ち主。耳は立ち耳。気が抜けている時には秋田犬、活動的な時には狼犬というように犬種もその時々や見る人物によって変わる。目の色は紺碧。シロは生前の名前でもあり、社の下に作られた小さな墓石に刻まれていた。
 意思が確立してから(〝彼方の世界〟基準で)日が浅い時点で交流が絶たれてしまったため精神面で成長不全となってしまい性格は全体的に子どもっぽく、感情は大袈裟と思えるほど豊かで、気弱なところもある。イヌらしく一途であり、好奇心は旺盛、人間が大好きで運動も大好き。〝此方の世界〟での鳴き声は体格に不釣り合いな子犬めいたもの。〝彼方の世界〟の語調は子どもっぽく舌っ足らず。
 蓄えた力の一部が腐ってしまい、穢れや瘴気となってしまっている。現在は蛇神の領地の清浄な性質や鱗道の管理下、シロの成長によって抑えられているが感情的に昂ぶったり、別の穢れや瘴気に誘発されることで動き出すことがある。穢れが優位に立ち始めると目に朱や赤錆色が混ざり始め口調や行動も荒々しいものに変わってしまう。鱗道やクロの制止、蛇神の力を降ろして穢れ部分を含むシロの一部を食う、物理的に頭を冷やさせることで抑止は可能。
 死霊であるため食事や睡眠、呼吸すら不要であるが、シロの場合は生前の名残が強く残っている事と、本人の思い込みによって空腹を感じて食事もするし、眠気も感じてよく眠る。また、呼吸を封じると苦しいと感じる。死んだと思い込んで死んだ状態になる可能性もあるが、力を消費していった結果の自然消滅か、第三者による破壊や消化以外にシロが迎える終わりはない。
 好きなものは肉(特に唐揚げ)、イヌ用おやつ、人間、鱗道、猪狩、クロ、蛇神サマ、その他諸々。嫌いなものは穢れや瘴気、トゲトゲしたもの。生まれた時も死んだ時も、霊犬として自覚した時も冬。
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クロ:
 人間に作り出された意思だけの存在。人工物で作られた鴉の贋作の中を満たしている液体金属に宿っている。鴉の贋作は剥製を思わせるほど精巧であるが、一般的なカラスより一回りか二回りは大きく、重量がある。目に填められている石は赤色。作り手から名は与えられておらず、鱗道が出会った時の呼び名がそのまま名前になった。
 意思存在も液体金属もそれ単体では脆弱なものであるが、鴉の贋作の中に密封され外気に触れずに居たために何十年も強固な意思を保ち続けている。性格は几帳面で神経質、好奇心と向学心が強い。人間社会を学ぶためとして、ジャンルを問わず様々な文化を映像や書物から見聞きし、知識は豊富でユーモアセンスは少々独特。〝彼方の世界〟の声は硬質で金属質で一定の敬語口調。感情が交ざると声質に変化が出る。
 記憶力や学習能力に優れていて、「鱗道堂」でパソコンを扱える唯一の存在。また疲労や摂食の必要がなく、長距離長時間の飛行も可能。少量の光源があれば視覚も確保でき、振動を感じ取ることで聴力、触覚として利用している。逆に、器が完全な人工物であって嗅覚や味覚はなく、〝彼方の世界〟に対しての感覚は「鱗道堂」で一番鈍い。
 存在していること自体が不可思議な存在であるため、基本的に死や消失は無いと考えられる。また、頑丈な鴉の贋作を貫通しない限り、生き物に対して有害な〝彼方の世界〟の力に触れられる為、人間である鱗道や瘴気に弱いシロでは触れられない呪物などを扱える。
 一方で鴉の贋作が壊れて液体金属が漏れ出たり外気に触れたりする事態や、〝彼方の世界〟の住人による物質を貫通する意思への干渉には対処のしようがなく全くの不滅ではない。
 好きなものはレコード、早朝。嫌いなものは騒がしいもの、急に動くもの。作られた屋敷から始めて外に出た季節は秋。
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猪狩晃:
 鱗道の幼馴染み。元警察官で、今は情報業に勤めている。古い映画に出てくるような男前で、非常に若く見られることが多く、三十代に見られることも珍しくない。大柄な体格で筋肉質。右目の視力が悪く、光にも弱いため外ではサングラスが手放せない。髪型はしょっちゅう変わるが肩に触れる程度の長髪で茶色に染めていることが多い。妻の名前は麗子、小学校高学年の娘が一人、中学年の息子が一人いる。
 基本的には闊達、剛毅、豪快な性格で大雑把。人間感情の機微に敏感だが、「デリカシーが薄い文字で書かれている」為、反りが合わない相手とはとことん反りが合わない。正義感に熱く、責任感に強く、交友関係に広く、情に厚い。一方で臆病なまでに慎重であり、情報収集や事前準備は可能な限り過剰なまでに行う。『目の前にあるものは何でも飲み込んでおきながら、確証が持てない内はいつでも吐き出せるように構えている蛙のような稀有な男』は、蛇神の評価。
 ただの一般人であり、〝彼方の世界〟に対する感覚は皆無。鱗道が蛇神の代理仕事を引き継ぐことになったことを聞き、あっさりとそのことを受け入れて検証として鱗道を引きずり回した。最初から全て信じたわけではなく、検証を経て真実だと受け入れた。多感な時期の出来事に、鱗道は恩を感じていて時に猪狩を「恩人」と言うこともある。
 趣味はアウトドアスポーツ全般、映画。好きなものは麗子、肉。嫌いなものは幽霊。夏生まれ。
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蛇神:
 かなり古くからH市内全域と他一部地域を領地としている一柱。時折青や緑の鱗が混ざる白い大蛇で、額の鱗が一枚だけ赤い。目は金色、瞳孔は漆黒、瞼は無いが瞳孔が動くことで感情表現を行っている。一度領地を離れた過去があるからか、あるいはあまりに古い存在だからか、〝此方の世界〟に名が残っていない。
 非常に強力な一柱であるが、世話役であった鱗道家のものに疑心を向けられ、武士により額に致命傷を負って領地を追われたことがある。友人であるこごめによって治療を施されて領地に戻った後、原因となった者を丸呑みにした上で疑心の償いとして鱗道家に代理仕事をさせることとなった。以降、蛇神の巣穴は代理仕事を引き継いだ人物の体内に通じ、そこから力を貸している。また代理人とは夢を介して意思の疎通を図り、領地や〝彼方の世界〟の情報や整地の依頼や状況などのやり取りをする。
 領地で人間の生活を長く見てきたのもあり、人間に対して一定の理解と歩み寄りはあるが、元が蛇でかつ〝彼方の世界〟の住人であるために根本的なところで交わることはない。〝彼方の世界〟の住人でもあり強者でもあるが故の余裕から大らかで思慮深く、冷静。しかし一柱となっても元が蛇である為に嫉妬深く、執念深い。
 鱗道灰人の代で蛇神の力も完全に取り戻すことが出来る為、鱗道家は断絶となる。その為、鱗道灰人を末代と呼んでいるが鱗道家との付き合いも長くなり、鱗道家の者全て(疑心を抱いた当人以外)に思い入れが生まれている。叶えてやれることは叶えてやりたいと考え、代理仕事の後には労いの言葉を欠かさない。
 好きなものは一人を除外した鱗道家の者達、己の領地。嫌いなものは金属。
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