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宿敵、シェディム

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 魔女募集のテレビ放送から3日たったが、公園には真新しい人物は来ていなかった。
 夕方、きびは公園のベンチに座り、誰か町の外からやって来ないかと待ち望んだ。
 もし、魔女が来たら小鳥がきびの元へ飛んでくる魔法をかけてある。魔女にしかわからない言葉を鳥が喋り魔女が答えたら鳥が知らせるようになっている。それでもきびは居ても立っても居られなかった。

「魔女……来ないね」

「まだ、これからよ……」

 ルシアンが言った。きびの隣でベンチの上でお座りしている。

「一人でも増えれば心強いのになぁ~。…………ああ、これからずっとルシアンしか話が持ち越せなくなると、頭パニックになっちゃうよ~!」

 きびはベンチの背もたれに寄りかかり頭を抱えて足をバタつかせた。ここ数日家族の会話は同じ内容しか話していない。テレビも学校でも昨日と同じ出来事が繰り返される。きびにとってはとても退屈で、電気があってもまるで洞穴で生活しているみたいだと思っていた。テレビアニメ、プリティープライムの最新話が見れないのだから。

「落ち着いてきびちゃん。魔女達にはきっと届いているはずよ。あの放送。」

「……あれで本当に来るかなぁ?」

 きびは空を見上げた。

「あれ?きびちゃん何してるの?」

 きびの前に現れたのは手提げ袋を手に持ったしろだった。習い事の帰りなのだろう。手提げ袋にはピアノの鍵盤の絵が描いてあった。

「このねこなーに?かわいい!」

 しろがびっくりさせないようゆっくりとした動作でルシアンの頭を撫でる。ルシアンは少し嬉しそうにゴロゴロと喉を鳴らした。

「そっか、しろちゃんにはルシアンの事知らないんだっけ」

「へー。あなたルシアンって言うのね」

 きびはねこを撫でるしろを見て思った。

「…………そうだよ!しろちゃんも魔法少女になろうよ!ねぇ?ルシアン!」

「えぇえ?」

 しろは驚き、ルシアンは渋い顔をした。

「水晶玉は3つあるんだものしろちゃんが居てくれたら心強いな!」

「あのねー。これは遊びじゃないの!魔法はおもちゃじゃないのよ!」

「ねこが喋った…………!!」

 しろが驚くもルシアンは話を続ける。

「私達はシェディムと名乗るあの子に狙われてる。いつまた襲ってくるかわからないわ。それに水晶玉は魔女の大事な…………って聞いてるの?!」

「あのねーこの石を手に持ってトランスホールミって呪文を唱えるの」

「トランスホールミ!」

 しろが光に包まれるとしろの着ていた服がきびの考えた魔法少女の衣装に変わった。乳白色の衣装は水晶玉の色と同じだった。

「すごーい!」

「ね。信じた?」

「ええ。夢みたいだけど。あのねこも魔法の国から来たの?」

 しろはまだ半信半疑の様だった。

「そうだよ。ルシアンは大事な任務があって、私はそれのお手伝いをしているの!」

「もう!……きびちゃんってば…………」

「いいじゃん、いいじゃん。しろちゃんだってあの子に顔知られちゃってるもん。しろちゃんも自分の身を守れる方がいいでしょ?」

「う~ん。一理ある……」

「んじゃあ、もう1個あるからもう1人呼ぼう!」

「顔が割れてるとなるともう1人いたわね。たしか……」



「なんだよ。見せたいものって」

 二人は河川敷近くの草野球が出来る練習場からあらせを呼びだした。他の子達は陽が沈む前に一足先に帰って行く。誰も居なくなったのを確認してきびとしろは魔法少女に変身した。

「いいの?こんな所で変身して」

「大丈夫。明日の事はみんな覚えてないから。日にち進まないし」

「?どう言う事?」

「お、まえら。何その格好!?」

「今から説明するから待ってて!」

 きびは魔法のステッキを取り出し、魔法でテレビを出現させた。この前テレビ放送をした映像を二人に見せる。
 あらせが色々と驚き少々混乱して声も出ない様子だったが、ルシアンが所々解説をして今までの事をしろとあらせに話すと二人とも取り敢えずその場は納得してくれた様だった。

「オレ達初対面じゃないのはわかったよ…………でもなあ!これは無いんじゃないの?!」

「あらせくん似合ってるわよ」

「魔法少女だもん。我慢してよね!」

「あなた達を守るためなのお願い」

「衣装の変更を希望する!」

 魔法少女に変身した3人は可愛らしいスカート姿だった。男の子であるあらせもスカートを履いている。もちろんこれは、きびの好みによるデザインだった。

 空が急に曇りだすと雷がゴロゴロと鳴り出した。

「あれ?天気が昨日と違うよ……」

 きびが空を見上げると、眩しいほど空が輝きコンクリートの地面に雷が落ちる。何か生き物の様にそこからきび達の真横にある木に向かって稲妻が走った。

「わあぁ!!」

「なんだ?!」

「木に穴が…………」

「みんなそこから離れて!」

 ルシアンが叫ぶ。
 木が燃え始めると、ドラゴンの様な顔をした怪物が電気を身に|纏《まと》い3人の前に現れた。蛇の様に木に巻き付き木を電気と炎で燃やしていく。
 
「とにかく火を消さなくちゃ!お水よでろ!」

 ステッキの先から大量のお水が噴き出す。きびは消防士の様に燃えている木に水をかけた。

「ダメ!きびちゃん水を止めて!」
 
 ルシアンが叫んだ。
 火は弱まっているものの流れ出る水の先から電気がきびに向かって走って来た。

「わぁ!」

 きびがぱっとステッキから手を離すと水が止まり、人型になったルシアンがきびを抱き上げ飛び跳ねるとステッキの周りに電気が弾け光った。

「大丈夫?」

「うん。ありがとう……」

「きびちゃん、あれ!」

 ルシアンがドラゴンの真上を睨むとフードを被り黒マントを|靡《なび》かせたシェディムの少年がいた。この前と雰囲気が違って見えるのは仮面を被っているせいか、きびは身をすくませた。この前よりずっと殺気を感じたからだ。

「どうして……あいつがここにいるの?」

「時間軸が違うんだわ。きびちゃんが時間を戻す時あいつは別の世界にいたからこの町のループに影響されてないのよ!」

「所詮は劣化物か…………」

 仮面の少年が呟いた。

「おいおい、お次はなんだ?!」

 あらせが中に浮く少年を見て言った。シェディムの少年はルシアンの方を指差した。

「アルプス|側撃《そくげき》」

 ドラゴンの口元からバチバチと電気の光が走る。
 ルシアンがきびを思い切り放り投げると息を吐く様にドラゴンの口から電撃が放出された。

「きゃあああーーー!!」

 直線的に飛んできた電気がルシアンの体を感電させた。
 あらせの所にきびが飛んで来ると2人一緒に地面に倒れてしまった。きびの下にあらせが下敷きになる。

「ルシアン!!」

 感電したルシアンはその場に倒れ込んだ。

「アルプス!」

 アルプスと呼ばれるドラゴンはルシアンからきび達を遠ざける様に電気を吐き出す。雷の様に光の線がきび達の側を走っては一瞬で消える。

「避雷針よでろ!」

 しろがステッキを振ると地面から針の様な避雷針が生え、吐き出された電気が避雷針に直撃する。
 だが、防ぎ切れず電撃は3人に当たってしまった。ビリビリと電気が体に走る。3人は地面に平伏し動けなくなった。

「|避雷針《ひらいしん》を過信しない方がいいぜ!|側撃雷《そくげきらい》はその側にも向かって落ちるんだからな」
 
「ルシ……ア……を……か……え……って」

 きびは舌が痺れて上手く喋れない。

「オレはこいつに用があって来たんだ。これ以上はオレの仕事ではない」

「どう……言う事?」

「全ては蛇に鉄槌を降すために」

 空にある真っ黒な雷雲が手の形となりルシアンを抱き抱えた少年が雲で出来た手のひらに乗り空の上へと消えた。

「ル……シ……ア」

 きびは電気で体が痺れながらも這いずる様に地面に落ちているステッキに向かって動いた。

「土よ……電気は地面に逃げる…………」

 しろが意識が朦朧としながら声を振り絞って言った。
 きびの下敷きになって一番地面に近かったあらせがよろよろと立ち上がり魔法のステッキを取り出すと、しろの言葉をヒントに魔法を使った。

「こうでいいのか?出てこい……アースジャイアント!」

 野球場の土で出来た巨大な泥人形を出現させた。
 泥人形はドラゴンに向かって行くと相撲でも取る様に取っ組み合いをする。泥人形は巻き付いている木ごと抱き抱え炎を弱めた。ドラゴンは噛み付いたり電撃を四方八方に吐き出した。電撃を泥人形に浴びせるも効果が無く、やがて泥人形に電気を全部発散させられ跡形も無く消えてしまった。

「勝った…………」

 あらせはその場に座り込んだ。
 3人の魔法が解けると魔法少女の服が消え普通の服装に戻った。
 
「ルシアン…………攫われちゃった…………」

 きびは倒れたまま泣いた。
 ぽつほつと雨が降り出しても3人はその場から動く事は出来なかった。

❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎

 暗黒の空に沈む邪悪な館。そこはシェディムの棲家。
 仮面の少年がルシアンを抱えて帰還した。ルシアンはネコの姿で意識を失っている。
 何本も建ち並ぶ柱の廊下ですれ違うのは、ルシアンのご主人様を石に変えたあの少年だった。

「そのネコは?」

「お前が取り損ねた魔女の使い魔さ」
 
 冷たくあしらうように仮面を付けた少年が答える。

「何で使い魔なんか……石はどうした?」

「あの町に魔女は居なかった。だが、石を持った小娘達が魔女を呼び寄せている。ふっ。バカなお前よりよっぽど役に立つだろうよ」

「何ぃ!」

「|剿滅《そうめつ》されたくなければ動く事だな。あの穴場は末のお前にくれてやろう。せいぜい網にかかった魔女を仕留めるといい」

 少年は手を強く握り締め唇を噛んだ。何も言い返せない自分が悔しかった。

 仮面の少年はルシアンを抱き抱え両開き|扉《とびら》の前に立つと重い扉を開いた。目の前には玉座に座った女性の影が布一枚隔てて映っている。

「お母様。魔女の使い魔を連れて参りました」

「ほう。それで?」

 女の声は老婆の様な低いしゃがれた声をしていた。

「こいつの記憶からまだ見つけていない魔女の居場所を特定します」

「いいでしょう。もっと前へ来なさい」

「はい」

「魔女の使い魔よ! |我《われ》の|僕《しもべ》となりて魔女を殲滅させよ!」

 ルシアンは女に魔法をかけられ洗脳されると、ルシアンの目は曇り表情もなくなってしまった。
 ルシアンは人間の姿になるとこう言った。

「はい。仰せのままに」

「行け!子供達!蛇に鉄槌を降すのだ!」

「御意!」

 仮面の少年はマントを|翻《ひるがえ》しルシアンは彼の後を追って部屋を出て行った。

 ルシアンが攫われて以来きびは部屋に引きこもっていた。
 しろやあらせが時々様子を見に家に来たがきびは誰とも顔を合わせなかった。自分の部屋で布団を被り枕を涙で濡らしてうずくまっていた。
 町の時間が止まってからはルシアンがきびの良き話し相手だった。ルシアンは年上のお姉さんだったのできびには姉妹が出来た様な気分だった。時折、あれこれ口うるさく感じる事もあったが、いまではそれが安心出来るひとときだったかのかもしれない。
 いつものように、夜お母さんに宿題やりなさいと言われた時も、勉強机の前に座るきびの膝の上でルシアンが勉強を教えてくれた。

『もー。どうして勉強しなくちゃいけないのー?』

『うーん。そうねぇ。自分を守るため……じゃないかしら?世の中の困難に立ち向かうには知識が必要よ』

『自分を守るため?』

『挫くじけないでやってみたら意外と出来ちゃったりするものよ。頑張ってきびちゃん!』

 きびは布団から出て勉強机に座ると問題の書かれたプリントを取り出し、ルシアンに教えてもらった問題を眺めた。答えを書き出すときびは少しはにかんで笑った。

「ほんとだ……少しだけ出来るようになったよ……ルシアン。でも……ルシアンがいなきゃ答えが合ってるかわからないよ…………」

 両の目から涙が溢れノートに落ちる。

「…………ごめんね。ルシアンは私を守ってくれたのに……私は…………守ってあげられなかったよぉ……」

 胸に付けている魔法の変身ペンダントが光り点滅しだした。

「なに?」

 胸のペンダントを触るとしろの声がペンダントから聞こえだした。

「きびちゃん?!駅前がおかしな事になってるの!多分、この前の敵だと思う。お願いすぐ来て」

「私は…………」

「きび!しょげてる場合じゃないだろ!お前が動かないで誰がみんなをルシアンを助けられるんだ!」

「あらせ……」

『挫けないでやってみたら意外と出来ちゃったりするものよ』

 きびはルシアンのこの言葉を胸の中で反芻はんすうした。

「そうだよね。わたし魔法少女だもん……挫けちゃダメだよね…………ルシアン。みんなを助けなきゃ!」

 きびは椅子から立ち上がり窓を開け放った。屋根にいた小鳥達が羽ばたく。

「トランスホールミー!」

 きびは魔法少女に変身して、魔法でほうきを出した。
 ほうきに跨ると空中に浮き部屋を飛び出す。
 きびは急いで駅前に飛んで行った。



 高層ビルの上で駅の広場をしろとあらせが見下ろしている。突然、広場に設置してあった町のオブジェが動き出し暴れたのを近くの住人がネットに公開したのだ。大きな鷹のオブジェが強い風を巻き起こしている。その隣にはシェディムの少年がいた。すぐにテレビでも放送され、しろとあらせが現場に駆けつけると人々は混乱状態だった。広場周辺の人達は次々と力が抜けたように倒れていく。きっと少年の仕業だろう。てには剣が握られている。剣には水晶玉の様な装飾が鍔ガードの中心に付いていた。少年は時々指輪を眺めている。何か確認しているようだった。

「これ、どうしよう」

「倒すしかないだろ。この前みたいに」

「とりあえず、側にいる町の人達を何とかしなきゃ」

 しろはステッキを取り出し魔法をかけた。

「町の人を広場から遠ざけて!」

 広場の床がガタガタと動きベルトコンベアの様に広場にいた人々を安全な場所へ運んだ。

「これで、誰もいなくなった」

「あの人達大丈夫かな?」

「みんなー!!」

 ほうきに乗って飛んできびがやってきた。

「きびちゃん!」

「きび!」

「遅くなってごめん!……だれ?!」

 しろの隣には魔法少女の服を着た髪の長い帽子を被った女の子がいた。

「あらせくんよ。女の子の姿ならこの服来てもいいって」

「お前、魔女っ子好きだろ。妥協だよ妥協」

「ちょー可愛い!」

 きびはあらせを見て喜んだ。

「それだけじゃないの。あのね……」

 しろはきびに耳打ちした。

「…………OK!」



「そこまでよ!」

「来たか、小娘共」

 シェディムの少年が言った。

「もも色の空より降り立つはエデンの御使みつかい。トキメキウィッチ!シュガール!ルヂェータ!」

「青い大地より降り立つはエデンの御使い。トキメキウィッチ!シュガール!群青ぐんじょう!」

「白い海より降り立つはエデンの御使い。トキメキウィッチ!シュガール!シロン!」

「「「我らシュガールただ今参上!!!」」」

 3人ポーズをとって決め台詞を言った。

「……なんだそれは、バカにしているのか?」

 ポーズをとっているきび達に向かってシェディムの少年が3人を睨み付ける。

「名乗ったのはいいものの、どうやって倒す?」

 シュガール群青が小声で言った。

「今なら正面からぶっ壊せるんじゃない?」

 と、シュガールシロン。

「あの、男の子捕まえられないかな?」

「ルヂェータ……」

 シェディムの少年がオブジェの台座を剣で切り倒すとオブジェの鷹が解き放たれ空高く飛び上がった。
 巨大な白い鷹が空へ羽ばたくと風圧で側にあるビルの窓ガラスが割れて飛び散る。
 しろとあらせがほうきで鷹を追った。

「鳥よ止まれ!」

 しろが呪文と同時にステッキを振り鷹に向かって魔法をかける。

「ダメ、上手く魔法がかからないわ。鳥に当たらないのかしら?それとも射程距離があるの?」

「両方かもな」

 鳥がビルの周りを旋回するとカルマン|渦《✳︎》(✳︎建物の間から互い違いに発生する渦巻き状の風の事)が発生し空を飛んでるあらせとしろを襲った。

「うわあー!」

「きゃあー!」

 ほうきに乗った2人は旋風せんぷうによって墜落してしまった。



「お前は追いかけないのか?小娘」

 シェディムの少年がいった。
 きびはオブジェが置いてあった広場に少年と2人睨み合っている。

「ルシアンをどこへやったの?ルシアンを返して!」

「ルシアン?」

「この前攫って行った黒ねこ。あの子をどうしたの?」

 シェディムの少年は他の兄弟が黒ねこを抱えていたのを思い出した。

「さぁ?僕はねこなんて飼ってないから知らないね。答える義理もない」
 
「それなら、力ずくで聞き出してやるんだから!!」

 ルヂェータはステッキを構えた。

「思い上がるな。劣化物」

 少年は剣をルヂェータに向かって振り下ろした。ルヂェータは振り下ろされた剣をステッキで食い止めると、相手の力が強すぎて食い止めるので精一杯だった。

「ふん……ぐぅ……ぅぅ」

「その棒切れごと真っ二つにしてやる!」

「けぇ……剣士よ出て!」

 ルヂェータの魔法で西洋の甲冑を着た剣士が現れシェディムの少年に向かって野球のバットでも振り回すかの様に剣で背中から切りかかった。
 少年は真上に跳び上がると、踏ん張っていたルヂェータが後ろに倒れかけると甲冑が降った剣が目と鼻の先をかすめた。

「はわあ!」

 真上に飛び上がっていた少年が落ちて来て甲冑の剣士に蹴りを入れると、甲冑はルヂェータに向かって倒れた。

「げ!」

 ルヂェータは甲冑の下敷きとなり少年は甲冑の背中部分のバックプレートに片足を乗せた。

「遊びは終わりか?」

 少年は甲冑に乗せている足に力を入れ下敷きになっているルヂェータに圧力をかける。

「……ぅぐっ! まだ……終わりじゃない!」

 ルヂェータの方を向いていた兜が180度回転し少年の方を向くと兜の顔や目を守るバイザーがパカッと開き中から投網が飛び出し、少年を捕えた。



 飛び回る鷹は町の人達からエネルギーを奪っているようだった。倒れている人達の体には鷹の羽が刺さっている。

「きっと、あれが原因なんだわ。あんな事してどうするのかしら? 群青今どこ?」

 広場から飛ばされたシロンは広場から離れた路地裏の物陰から鷹の様子を窺っていた。
 シロンの魔女の水晶玉は髪飾になっている。群青の水晶玉はネックレスになっており点滅してシロンの髪飾と通信中である。

「ビルの屋上……犬がメガネかけてる」

 群青は風に飛ばされ、ビルの看板に当たって床に落ちたままのびていた。

「メガネ屋さんの看板があるところね。そこに居て」

「どーすんの?」

「動きさえ止められれば……」

「…………じゃ、こんなんどお?」



「嫌あああーーーーーー!!! 何でリアルなのだすのよ!!」

 ビルとビルの間の壁には群青が魔法で出した人の頭ほどある蜘蛛がわらわらとまばらに待機していた。
 巨大な鷹に追われているシロンは蜘蛛がいる場所へ鷹を誘導する。
 蜘蛛のお尻から糸が噴き出される。垂らされた糸は風向きに流れ何本か鷹の体に糸がくっ付いた。鷹が蜘蛛を垂らしながら飛んで行くと、ビルとビルの間に太い蜘蛛の糸が縞模様に何本か張ってあった。
 シロンがそこを通り過ぎる。続けて鷹も通り過ぎると、鷹に垂れ下がってくっ付いていた蜘蛛がビルとビルの間に張ってあった糸を掴むと鷹がそれ以上前に進めなくなった。
 鷹の動きを止めるように他の蜘蛛達が鷹に向かって糸を飛ばし、蜘蛛の巣にかかった虫みたいに捕らえられた。
 ビルの屋上から刀を持った群青が、鷹に向かって飛び降りる。

「くらえ! 斬鉄剣!!!」

 群青が刀で鷹の翼を切り落とすと鷹はその場に落ちてただのオブジェに戻った。
 群青は蜘蛛の糸の上に着地した。

「アレスティングワイヤー作戦大成功だな!」

 シロンが群青と合流する。

「虫なんて大嫌い!」


 シェディムの少年が指輪を見ると、剣で投網を切り裂き網から出てしまった。

「ちっ! 反応が途絶えた。ここまでだな」

 少年が投網をルヂェータに投げ返すと、シェディムの少年が剣を振るい空間に亀裂が入り真っ黒な穴が広がる。

「なあっ!」

「お前。魔女を連れて来たなら猫を返してやろう」

「待って! どうして魔女を狙うの?あなたはなんなの?!」

「我等はシェディム。エデンを追われし者。また会おうシュガール」

「逃すもんですか! 発射!」

 シロンが蜘蛛を魔法で操り少年に向けて糸を発射させるもギリギリで逃げられてしまった。
 シロンと群青がほうきで降り立つと少年も空間の亀裂も無くなっていた。

「網よ消えろ!」

 群青の魔法でルヂェータに絡まっていた投網が消える。

「ありがとう……群青」

 ルヂェータは空を見上げて思った。

(取引を要求してきたって事は、ルシアンきっと無事だよね?)

「ところで、町の人達元に戻らないけど明日になれば何でもないかしら?」

 シロンが人差し指を頬に当て悩みのポーズをした。敵を倒しても町の人達は倒れたままの状態だった。町は1日をループするので3人はあまり焦らなかった。

「このまま放置は可哀想だろ……」

「明日元通りになるかわからないし、魔法も効くかわからないけど……魔法試してみる?」

「「「町の人達を元に戻して!!!」」」

 3人は魔法をかけたが元に戻らなかった。

「やっぱりダメなのかな?」

 ルヂェータが言った。
 急に鳥達が騒ぎ出しルヂェータの周りを飛び回った。ガラガラとスーツケースを引きずったメガネをかけたお姉さんがシュガール達に近付いて来る。

「なんやこの町、おかしな事になっとるやんけ!」

「誰?」

 シロンと群青が不思議そうな顔をしているとルヂェータは、ハッとしてお姉さんを指差した。

「もしかして……魔女!!」

 お姉さんはにっこりと笑った。

「よろしゅう。魔法少女達」
6, 5

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