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【家族団欒のためならタヒねる】

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家族団欒の為ならば、俺は鬼にだってなる。

どうも、俺 檸檬堂滅酔(檸檬堂ほろよい)フリーターっす。

既婚で20代。趣味はSwitchのゲームやること。

嫁が先日妊娠したことが発覚。

俺…なんとか堕胎シてくれって頼んだ。
土下座シて…頭さげて。

だってさ、俺らまだ20代で貯金もないし子供育てながらじゃ仕事もままならないだろ?

だが、嫁の答えはNO!一点張り。

高校の時のクラスメイトが中絶して、その後鬱になって学校来なくなったの見てたから絶対自分はそうなりたくないんだと。

(でも俺…諦めたくねぇよ。堕胎…。
腹パンとかしたら自然に流れんのかな?でも流石に可哀想だよな…)

俺は悩んだ挙げ句
ある作戦に賭けることにした。

その名も
「すっげ〜〜〜〜頭のおかしなキチガイになって、嫁の方から"こんなキショい夫の子供要らん!!"って堕胎してもらっちゃおう作戦★」だ。


そして俺は次の日から
キチガイ化した。


介護用の紙オムツを装着し、上半身裸で乳首にピアス穴を空けて髪をピンクに染めた。

嫁が仕事から帰ってくるタイミングで
大音量で「こんにちは赤ちゃん」の曲を流しながら、頭上出両手をバン!バン!と打ち鳴らしリビングをスキップで一周する。

玄関からリビングを覗く嫁と目があった。

嫁の表情が凍りつく。

俺はかまわず放屁をしながら尻を振り
「あぶ〜あぶ〜」と声を上げながら冷蔵庫の中から人参をとりだし、脇の下でゴシゴシ擦った。

嫁が怒りと拒絶の入り混じったような表情をしているのがチラッと見えた。

(よし……これでいい。あとは堕胎してくれれば……)

しかし、次の日の朝になっても、昼になっても嫁は何も言わなかった。
いつも通り朝食を作り洗濯をして掃除をする。
その様子はとても普通だった。
それどころか夕食には俺の大好きなカレーを作ってくれたのだ。
正直めちゃくちゃ美味しかった。

その夜、風呂上がりにふと思いつき俺は台所に向かった。
コップ一杯の水を飲む。

すると嫁も台所にやってきた。
「あのさ、ちょっと聞きたいんだけど……」
きた!!!! とうとうこの時が来たか!?

俺は最上級の変顔をつくり、ベローっと舌を出した。

嫁が言った。

「仕事嫌なら辞めれば?
あとウチ親が金持ちだから、別にお金の心配は要らん。最悪1円もくれなくても問題ないから」

はへ?
俺は呆気にとられた。

「ま、待ってくれ!
金が要らないって…そんなんじゃ俺と結婚する理由が…無いじゃないか」

父親としての責任も果たさない
金を稼いでこない人間を…
嫁はいったいどうしようというんだ??

「ふーん。金稼げなけりゃ意味ないって?
あんた……性格わるいね」

それだけ言うと、嫁は寝室へと戻っていった。

残されたオムツ一丁の俺。

オムツの中は…失禁していた。


〈それから5年後〉

「パパ!アイス食べたい」

「あぁ、じゃあ一個だけな」

俺は息子と夜のコンビニを訪れていた。

「ママにも何か買ってくか」

「ママはバニラ好きってゆってたよ?」

「そうか」

買い物を済ませて、息子とふたりで嫁の待つ家へと帰る。

5年前…俺は妻の心を変えられなかった。
その結果として、今幸せな日々が続いている。

不安に潰されそうだった俺に喝を入れてくれたのは最愛の妻だった。

耐え難い宝物を失わずに住んだのだ。
あの時の妻の勇気には感謝しかない。

「あのねパパ」

「うん?どうした?」

「ぼく、昨日きいちゃった!
ママが言ってたんだけどね……ナイショだよ?」

「あぁわかった。ナイショ話な?」

手招きする息子にあわせて
俺もしゃがんで耳を貸す。

「あのね、ぼく
本当はママの彼氏の子供なんだって!」


〈完〉
6

宇宙堂かみこ 先生に励ましのお便りを送ろう!!

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