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第二話

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タイトル:鉱山町の朝  作者名:漫☆小太郎
モンスターの名前(種族):山喰らい   属性:節足動物
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 埃っぽい空気に朝日が差す。辺境の鉱山町はいつになく喧騒に包まれている。
いかにも屈強の鉱夫たちが列を組んで勇ましく練り歩く。その手にはつるはしに
代えて大ぶりの剣が、シャベルに代えていしゆみが握られている。それを見送る
女子供の目には、まるで古代の英雄の軍勢のようにもみえていることだろう。
彼らはこれから、化け物を退治しに行くのである。

 鉱山に度々現れるこの「山喰らい」と呼ばれる化け物は、普通の人間の三倍は
あろうかという巨大な灰色のサソリのような姿をしている。だがそのおぞましい
見た目とは裏腹に、こちらから何もしなければ人を襲うことはない。とはいえ、
その縦横無尽に巣穴を掘る習性が落盤事故を引き起こすため、鉱山町の人々に
とってはやはり看過できない害獣なのだ。

 元来大人しい性格であるとはいえ、ひとたび怒らせてしまうと「山喰らい」は
手ごわい相手である。硬い外殻は刃をはじき、強靭なあごは鎧をも砕く。棍棒の
ようにふくれた硬い尻尾の一なぎは、大の大人を何メートルも吹き飛ばす力を
持っている。しかし、いざそれに挑もうとする男衆の顔はにこやかであった。
互いに冗談が飛び交い、家族に手を振っている者もいる。見送るほうにもまた
悲壮感は無く、頑張っといで、と進んで送り出すふうである。

 それもそのはず、「山喰らい」は鉱山を脅かす脅威であると同時に、山神の恵み
でもあることを彼らは知っているのだ。化け物は鉱山の屑石を噛み砕き、その名の
とおり喰らうことで生を得ている。そのとき石に含まれていたごく微量の輝石は、
どういう仕組みか化け物の体の中で精製され、件の尻尾の先に蓄えられる。
つまり、「山喰らい」最大の武器は、人の頭ほどもある巨大な宝石なのだ。
実のところ、鉱石の産出量がめっきり減ったこの寂れた鉱山町は、この怪物が生み
出す深い緑色の「臨時収入」に支えられているといっても過言ではなかった。

男達が歌を歌いながら町の門を出て行く。妻は、息子は、狩りの成功を期待して、
目を輝かせながらいつまでも手を振っている。もしよそ者がここにいたら、まさか
これが危険な怪物退治だとは夢にも思うまい。それはとても牧歌的な、ありふれた
日常の光景だった。
7, 6

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