Neo Generation Trading Card Game-"N Card"
"N Card"第二回全国大会少年部門準決勝戦。
「僕の先攻」
前回三位の陸奥竜馬がコイントスを言い当てて先攻を得る。
八枚の手札を一瞥し一瞬にして戦略を組み立てると
机上に展開された対戦シートに流れる様にカードを置いてゆく。
「風景を"大規模即売会"にし」
先ず風景と書かれた左端のカード枠に、
逆さ三角が二つ連なる奇妙な形のイラストが描かれたカード。
「"無名作家"を攻撃陣に召喚」
三列三行の線枠が引かれた書かれた正面部の一列一行目には
刀剣程に巨大な万年筆を持つ眼鏡を掛ける少女が
デフォルメされたキャラクターのイラストカード。
イラストの下には数行のテクストが書かれており、
更にその右下に1/1と云う記号がある。
「魔法陣にカードを一枚伏せ」
一列三行目にはカードを裏側にしたものを伏せる。
このカードゲームの略称である"Nc"が
システマティックに書かれていてるだけである。
「ターン終了」
六枚の手札と相手の手札を交互に眺め、陸奥竜馬は二、三頷く。
「私のターン。ドロゥッ」
後攻に廻る時雨晋作は前大会には出場しておらず実績は無いが、
これ迄の戦い全てを逆転勝ちで収めて来た注目株である。
山札からカードを引く際の合図である「ドロー」の発声が
些か独特であるのも一部の人気を集めていた。
「"奇術師"を防禦陣に召喚し"謎の箱"を装備させる」
時雨の眼前にも陸奥同様に展開するシートがある。
一列二行目に置いたカードに描かれたデフォルメキャラクターの、
シルクハットに燕尾服を着た片眼鏡という様相は正しく奇術師ではあるが、
可愛らしい少女であるからコスチュームプレイめいた違和感を生んだ。
いかにも付け髭である丸々しいカイゼル髭もその一端を担う。
全体としえてゃ"無名作家"のカードと同じ構成であり、テクストと1/1という記号がある。
続けざま黒い立方体の前面にクエスチョンマークが描かれただけの
イラストのカードを一列三行目に置く。
こちらも奇術師と同じ構成であったが、テクストの下の記号は+1/0とあった。
「手札の"魔術師"の効果、"友情出演"を発動」
六枚の手札から一枚を抜き出しテクストを目で追う。
「奇術師が攻撃陣か防禦陣にいる時にLPを2支払い、
防禦陣か攻撃陣に特殊召喚できる」
テクストの一文を引用して口述する。
対戦シートの外に置かれた十枚のコインから
二枚を取り除くとカードを一行一列目へ置いた。
「"魔術師"を攻撃陣に召喚」
三角帽子に黒衣のマントを羽織る少女のイラスト。
奇術師のイラストと同じアングルであり
顔つきも良く似せ、互いの関係を伺い知れる。
テクストの下にある記号は2/2。
「"魔術師"で"無名作家"へ攻撃、撃破」
陸奥が"無名作家"を右端の墓地と書かれた枠へ置き、
手元のコインから一枚を取り除くと
"大規模即売会"に触れ、テクストを読み上げる。
「同時に"大規模即売会"の効果、"代わりはいるもの"を発動」
テクスト欄に三つある文章の一つを引用する。
「"作家"戦士が撃破された時、LPを3支払い、
手札からLv2迄の"作家"戦士を特殊召喚できる」
手元のコインから更に三枚を取り除くと、
手札から一枚を取り出して一列一行目へ置く。
「"常連無名作家"を攻撃陣に召喚」
先ほどの"無名作家"のキャラクターが
幾らか煌びやかな装飾を纏い描かれていた。
テクストの中身と記号に差異があり、2/2となっている。
「ターンエンドです」
時雨は手札だけを繁々と眺め続けている。
準決勝戦 陸奥対時雨
「僕のターン。ドロー」
風を切るように山札から四枚のカードを引いた陸奥は
戦略戦術の建て直しをしているのか眉を顰めシートと手札を何度も見直す。
「"女子小学生コスプレイヤー"を攻撃陣に召喚」
短頭身の少女が金髪ツーテールでセーラー服を着ているイラストが
十年程前に多くの世代に好評だった少女向けアニメの
コスチュームプレイを主題にしている事は一目瞭然である。
記号は1/0とあり、他の同種と思しきカードに較べると数が小さい。
「更に"常連無名作家"に"輝く万年筆"を装備させ―…
条件を満たした事で"常連無名作家"を"中堅作家"に進化させる」
"常連無名作家"のテクストの一つに
進化条件は風景"大規模即売会"で"輝く万年筆"を装備するとある。
"常連無名作家"に"輝く万年筆"を重ね置き、
更に"中堅作家"のカードをその上に置いた。
明らかに無名作家のそれよりも手の込んだ絵柄で
描かれたイラストは、やはり眼鏡を掛けていながらも
少女と云うより青年層をモチーフにしている。
記号も4/3と今までにない大きな数字を示していた。
「"中堅作家"の効果、"売り子の成長"を発動」
陸奥はテクスト欄の真ん中に書かれている文章を
幾らか得意気な表情を浮かべて読み上げる。
「LP1を支払い、場のLv1の"コスプレイヤー"戦士をLv2に進化させる」
コインを6枚にまで減らす。
「"女子小学生コスプレイヤー"は"女子中学生コスプレイヤー"に進化」
先ほどの少女よりも少し頭身の伸びた、やはり青年層を意識した女性が
金髪のロングヘアで赤いリボンをし、ワンピースを着ている。
初めてそのカードを見た時雨は"漫画の方か"と云う言葉が
喉まで出掛かり、のみ込んでいた。
記号は2/0とある。
「"女子中学生コスプレイヤー"の効果、"売り上げ向上"を発動。
"作家"戦士の攻撃力を1上昇させる」
テクスト欄最上段の文章を慣れた様子で読み上げると、
先ほど塊から取り除いていたコインを一枚、
表にして"中堅作家"のカードの上に乗せる。
「"中堅作家"で"奇術師"へ攻撃、撃破」
時雨は下唇を噛み締めながらコインを三枚取り除く。
「カウンター。"謎の箱"の効果、"大脱出"を発動させる。
装備する"術師"戦士が撃破された時、
"術師"戦士を墓地へは送らず手札へ戻す」
"謎の箱"を墓地に置き、"奇術師"をシートから手札へ戻す。
そして手元のコインを一枚減らす行為までが一連の動作である。
「"女子中学生コスプレイヤー"で"魔術師"へ攻撃、撃破」
"魔術師"を墓地に置くが、コインの変動は無い。
防禦陣にある戦士が撃破された時は"ダメージ"が発生しないと云うルールである。
「ターン終了」
殆ど戦略通りに行ったのだろうか、
陸奥は満足気な微笑みさえ浮かべつつ手札を眺める。
「私のターン。来い―…ドロゥッ」
手札が八枚になるよう山札からカードを引くと、
時雨はその中の一枚に目を輝かせる。
「よし。フィールドを"発表会"にし」
大きく息を吸い込み、一気に手元のカードを展開させた。
先ず檜舞台のイラストカードを置く。
「"奇術師"を攻撃陣に召喚」
先ほど手札に戻した"奇術師"を再度シートへ置く。
「"発表会"の効果、"大掛かりな装置"を発動」
"発表会"のテクスト欄最下部に書かれた文章を読み上げる。
「LP2を支払い、術師を無条件に進化させる」
五枚のコインの塊から二枚を取り除く。
「"奇術師"は"大奇術師"に進化」
手札から、"奇術師"がそのまま成長したと思しき
キャラクターの描かれた"大奇術師"を"奇術師"に重ねる。
「更に"大掛かりな装置"を発動」
今度二枚を取り除くとコインの山は一枚しか残らない。
相手のコインの山を失くす事がゲームの主要目的だと云う事は
ルールも何も知らない観客が見ていても分かるので、
自ら窮地に立つように見る者が多かった。
「"大奇術師"は"催眠術師"に進化」
微細は違えど、"大奇術師"の衣装を
カイゼル髭も含めて白く塗り潰した様なイラストの"催眠術師"を
"大奇術師"に更に重ねる。
「"催眠術師"の効果、"幻惑の催眠術"を発動」
重なるカードは似たイラストが続いたとは云え、
一枚一枚が全く異なるテクスト欄であり、
"幻惑の催眠術"の一文も"催眠術師"にしか書かれていない。
「墓地にいる"術師"戦士を攻撃陣に復活させる」
時雨の墓地にある戦士はそもそも一体だけであり、
迷う事も選ぶ事もなく時雨はそれを二列一行目に置く。
「"魔術師"を攻撃陣に召喚。
同時に"魔術師"の効果、"黒魔術"を発動。
墓地から自陣に復活した際に使用できる。
LPを2快復する」
流れをスムースにする為か、
先ほど取り除かれたコインは未だ掌の中にあり、
それをそのまま塊に置き直すも、
再度取り易そうな按排を図った戻し方であった。
「再び"大掛かりな装置"を発動」
"発表会"に指先で触れつつ、
手札から出したカードを更に"催眠術師"に重ねる。
「"催眠術師"は"幻術師"に進化」
"幻術師"はそれまでの少女層或いは青年層から
大きく懸け離れ、世代としては少女の母を思わせる
妖艶な女性が白の燕尾を纏うイラストであり、
他のものと比べるとデフォルメの具合も少なかった。
記号は6/6とあり、これまで置かれてきたカードの中では
最大の数字を示している。
「"幻術師"の効果、"蟲惑の幻術"を発動」
テクスト欄は五つの文章に別れており、
上から二つ目を指差しながら読み上げる。
「敵戦士全員を一つ退化させる」
陸奥側のシートを確認しつつ、
テクストがもたらす一連の動作を口述する。
「"女子中学生コスプレイヤー"は"女子小学生コスプレイヤー"に。
"中堅作家"は"常連無名作家"になる」
それぞれの一番上のカードが墓地へ置かれ、
再び短頭身の少女が二人、シート上に現れる。
「"幻術師"で"常連無名作家"を攻撃、撃破。
"魔術師"で"女子小学生コスプレイヤー"を攻撃、撃破」
陸奥のコインも残り一枚。
「ターンエンドッ」
時雨は親指の爪を神経質めきながら噛む。
次の陸奥のターンで勝敗が決するのは誰の目にも明らかである。
手札が八枚になるよう山札からカードを引くと、
時雨はその中の一枚に目を輝かせる。
「よし。フィールドを"発表会"にし」
大きく息を吸い込み、一気に手元のカードを展開させた。
先ず檜舞台のイラストカードを置く。
「"奇術師"を攻撃陣に召喚」
先ほど手札に戻した"奇術師"を再度シートへ置く。
「"発表会"の効果、"大掛かりな装置"を発動」
"発表会"のテクスト欄最下部に書かれた文章を読み上げる。
「LP2を支払い、術師を無条件に進化させる」
五枚のコインの塊から二枚を取り除く。
「"奇術師"は"大奇術師"に進化」
手札から、"奇術師"がそのまま成長したと思しき
キャラクターの描かれた"大奇術師"を"奇術師"に重ねる。
「更に"大掛かりな装置"を発動」
今度二枚を取り除くとコインの山は一枚しか残らない。
相手のコインの山を失くす事がゲームの主要目的だと云う事は
ルールも何も知らない観客が見ていても分かるので、
自ら窮地に立つように見る者が多かった。
「"大奇術師"は"催眠術師"に進化」
微細は違えど、"大奇術師"の衣装を
カイゼル髭も含めて白く塗り潰した様なイラストの"催眠術師"を
"大奇術師"に更に重ねる。
「"催眠術師"の効果、"幻惑の催眠術"を発動」
重なるカードは似たイラストが続いたとは云え、
一枚一枚が全く異なるテクスト欄であり、
"幻惑の催眠術"の一文も"催眠術師"にしか書かれていない。
「墓地にいる"術師"戦士を攻撃陣に復活させる」
時雨の墓地にある戦士はそもそも一体だけであり、
迷う事も選ぶ事もなく時雨はそれを二列一行目に置く。
「"魔術師"を攻撃陣に召喚。
同時に"魔術師"の効果、"黒魔術"を発動。
墓地から自陣に復活した際に使用できる。
LPを2快復する」
流れをスムースにする為か、
先ほど取り除かれたコインは未だ掌の中にあり、
それをそのまま塊に置き直すも、
再度取り易そうな按排を図った戻し方であった。
「再び"大掛かりな装置"を発動」
"発表会"に指先で触れつつ、
手札から出したカードを更に"催眠術師"に重ねる。
「"催眠術師"は"幻術師"に進化」
"幻術師"はそれまでの少女層或いは青年層から
大きく懸け離れ、世代としては少女の母を思わせる
妖艶な女性が白の燕尾を纏うイラストであり、
他のものと比べるとデフォルメの具合も少なかった。
記号は6/6とあり、これまで置かれてきたカードの中では
最大の数字を示している。
「"幻術師"の効果、"蟲惑の幻術"を発動」
テクスト欄は五つの文章に別れており、
上から二つ目を指差しながら読み上げる。
「敵戦士全員を一つ退化させる」
陸奥側のシートを確認しつつ、
テクストがもたらす一連の動作を口述する。
「"女子中学生コスプレイヤー"は"女子小学生コスプレイヤー"に。
"中堅作家"は"常連無名作家"になる」
それぞれの一番上のカードが墓地へ置かれ、
再び短頭身の少女が二人、シート上に現れる。
「"幻術師"で"常連無名作家"を攻撃、撃破。
"魔術師"で"女子小学生コスプレイヤー"を攻撃、撃破」
陸奥のコインも残り一枚。
「ターンエンドッ」
時雨は親指の爪を神経質めきながら噛む。
次の陸奥のターンで勝敗が決するのは誰の目にも明らかである。
「僕のターン。ドロー」
陸奥が今まで伏せていたカードに初めて触れた。
「魔法陣の"新都社"の効果、"更新ラッシュ"を発動」
表返すと"無名作家"でも描かれた眼鏡を掛けた少女が
有象無象と描かれたイラストとテクストのカードであった。
「通常召喚の代用をする。
魔法陣に伏せていたターン数だけ"作家"戦士を召喚できる」
他のカードに比べて文章の短いテクスト欄を読み上げ、
手札の内から三枚を取り出してシートに置く。
「ターンのカウントは3。攻撃陣に"無名作家"を三体召喚。
"無名作家"の効果、"団結"を発動。
"無名作家"が場に三体ある際にできる。
"無名作家"三体を墓地に送り"有名作家"を召喚する」
置いた順とは逆繰りにカードを三枚取り除いてゆき
左右を軽く整えて墓地へと置く。
更に手札から一枚のカードを一列一行目へ置いた。
"幻術師"よりかは幾分量の少ないテクストと、5/4という記号。
「"有名作家"で"魔術師"を攻撃」
「撃破」と続ける前に一拍子置く事は
規約に定められていた。
「カウンター。"幻術師"の効果、"五里霧中"を発動。
敵戦士の攻撃対象は敵味方自分含めてダイスで決定される」
逆転勝利を掛けた大一番。
時雨はワイシャツの胸ポケットから
小さなサイコロを取り出し、それを陸奥に手渡す。
「1,2なら"有名作家"、3,4なら"魔術師"、5,6なら"幻術師"を攻撃する」
投げる感触を握々と確かめながら
二枚のシートの真ん中へ向けて放り出す。
「ダイスロールッ」
空中で勢い良く回転したサイコロは
三度ばかし着地しては弾けて中々目を定めない。
「出た目は―…4。よって"魔術師"を攻撃、撃破。勝利」
陸奥がゆっくり最後のコインを取り除き、
勝敗が決しゲームが終了する。
時雨晋作。
"N Card"第二回全国大会少年部門決勝戦進出。
陸奥が今まで伏せていたカードに初めて触れた。
「魔法陣の"新都社"の効果、"更新ラッシュ"を発動」
表返すと"無名作家"でも描かれた眼鏡を掛けた少女が
有象無象と描かれたイラストとテクストのカードであった。
「通常召喚の代用をする。
魔法陣に伏せていたターン数だけ"作家"戦士を召喚できる」
他のカードに比べて文章の短いテクスト欄を読み上げ、
手札の内から三枚を取り出してシートに置く。
「ターンのカウントは3。攻撃陣に"無名作家"を三体召喚。
"無名作家"の効果、"団結"を発動。
"無名作家"が場に三体ある際にできる。
"無名作家"三体を墓地に送り"有名作家"を召喚する」
置いた順とは逆繰りにカードを三枚取り除いてゆき
左右を軽く整えて墓地へと置く。
更に手札から一枚のカードを一列一行目へ置いた。
"幻術師"よりかは幾分量の少ないテクストと、5/4という記号。
「"有名作家"で"魔術師"を攻撃」
「撃破」と続ける前に一拍子置く事は
規約に定められていた。
「カウンター。"幻術師"の効果、"五里霧中"を発動。
敵戦士の攻撃対象は敵味方自分含めてダイスで決定される」
逆転勝利を掛けた大一番。
時雨はワイシャツの胸ポケットから
小さなサイコロを取り出し、それを陸奥に手渡す。
「1,2なら"有名作家"、3,4なら"魔術師"、5,6なら"幻術師"を攻撃する」
投げる感触を握々と確かめながら
二枚のシートの真ん中へ向けて放り出す。
「ダイスロールッ」
空中で勢い良く回転したサイコロは
三度ばかし着地しては弾けて中々目を定めない。
「出た目は―…4。よって"魔術師"を攻撃、撃破。勝利」
陸奥がゆっくり最後のコインを取り除き、
勝敗が決しゲームが終了する。
時雨晋作。
"N Card"第二回全国大会少年部門決勝戦進出。