赤鬼と青鬼は鬼族の最後の生き残りであった。女の鬼が先に死に絶えていた。赤鬼と青鬼は、二人でちんちんを慰め合っていた。
二人は時折人間たちの営みを覗きに、山のふもとにある村に忍び込んだ。男と女が交わり、愛し合い、子を成すのを見て羨ましく思った。燃え上がった二人のちんちんは交わりあった。ある時、性急にその衝動を燃やし尽くしてしまいたかった彼らは、人間の村の馬小屋で交わってしまった。そこに後家となった豊満な女が現れて鬼に出会ってしまった。
「あれまあ、おっきな鬼っこだあね。ちんちんはそうでもねえな」
後家は亡くなった旦那のちんちんの方がずっと大きかったことを思い出した。今更鬼の一人や二人を怖がる歳でもなかった。赤鬼と青鬼は辱められた怒りと恥ずかしさで真っ赤になったり真っ青になったりした。
「騒ぎになんねえうちに山さ帰れ」かつて人間に恐れられた鬼族は、武家に討伐されて絶滅寸前となっていたのを、女は哀れに思っていた。一人息子は「侍になるのだ」という無謀な夢を追って村を出てしまっていた。要するに女は寂しかった。
「帰る場所がねえのなら、しばらくいたって構わねえ。乳、しゃぶっか?」
そう言って襦袢を脱いで豊かな乳をさらけ出すと、赤鬼は顔を真っ赤にして乳にむしゃぶりついた。青鬼は顔を背けて馬小屋を出ていった。
赤鬼と豊満な女は交わるうちに子を成した。いつの間にか他の村人にも赤鬼のことは知れ渡っていた。人に害をなさない鬼族は、角などの僅かな特徴を除けば、少し身体の大きく、体色の濃い人でしかなかった。生まれた子は両親に似て大きな身体に育った。ちんちんは小さかった。
一方青鬼は一人山に籠り、赤鬼との思い出とともに過ごしていた。鬼族最後の女を殺した犯人は実は青鬼であった。そうすれば赤鬼と交わることができると思ったからだった。その願いは叶ったものの、豊満な女によって短かった黄金時代は終わりを告げた。しかし赤鬼の幸せのためにと、青鬼は身を引いて山で獣と山菜を採って過ごした。
時は流れ、赤鬼と豊満な女の間に生まれた男は壮年となった。彼は山奥に分け入り、父から聞いた場所を目指した。その洞穴に生きた青鬼は既におらず、随分前に亡くなったらしい大きな男の白骨があるばかりだった。男は父に託された遺品であるちんちんの骨を、尾てい骨のあたりにそっと添えた。先に述べた人族と鬼族の僅かな違いは、頭の角の他に、ちんちんに骨があることだった。だから混血も容易だった。もっと昔から、分かりあうこともできたはずだった。壮年の男のちんちんには骨はなかった。
小さなちんちんの骨は砕けかけていた青鬼の骨と混ざり、すぐに見分けがつかなくなった。男がゆっくりとした足取りで山を降りた頃には、彼以外に、鬼のことを覚えているものなどいなくなっていた。