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ペニスを描く

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 村山はちんちんばかり描くという。親御さんが心配して一度来てくれないか、と言ってきた。村山とは幼い頃によく遊んだ仲だった。高校が違ってからは会わなくなっていた。昔から絵を描くのが好きな男だった。

 村山の部屋の壁一面には、自分で描いたちんちんの絵が貼られていた。ネットで拾ったちんちんの画像を参考にして描きまくっているのだという。
「どうしてちんちんを描くのだ」と聞いてみた。
「君は陸上選手に『なぜ走るのか?』と問うのか?」と聞き返された。
 なるほど一理ある、とは思わなかった。ちんちんは走らない。

「実物を見て描きたい。君のちんちんを見せてくれないか」
 それで気が済むのなら、と僕はちんちんを出して、あらゆる角度と大きさで村山に見せてやった。茶菓子を持って入ってきた村山の母が泣き出した。

 その後随分と時が経ち、多様性を認める風潮は芸術方面でも寛容になった。「ちんちん画家」として名を馳せた村山は、世界中で個展を成功させ、日本に凱旋帰国していた。
「描いたちんちんは誰の物か全て覚えています」と、あるインタビューで村山は語っていた。

 村山の成功は僕が最初にモデルになったおかげだ、という自負があった。記者に囲まれている村山を発見し「よう、村山! 偉くなったな!」と声をかけた。不審者を見る目で村山は僕を見た。警備員が近づいてきた。僕はズボンとパンツを下ろした。
「僕だよ! このちんちんを覚えてるだろ?」
「吉田! 吉田じゃないか!」
 僕の名前は中西だった。
 警備員に取り押さえられた僕を、会場に来ていた村山の母が見下ろしていた。その頬は赤く火照っていた。僕のちんちんから何か出た。逮捕された。
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