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ペニスを抜ける

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 珍歩団を抜けたい、とリーダーに打ち明けた。
「鉄の掟は分かっているな」
「はい」決意もちんちんも固かった。

 私たちはちんちんを露出して夜な夜な歩き回る集団だった。昔暴走族を「珍走団」と言い換えることが流行った時があった。私たちも時には警察から逃げるために走ることもあった。しかし誇りをもって「珍歩団」と名乗っていた。

 その結果、団員のほとんどは職や家族を失ったり、前科者となったりしている。自分たちの性癖に素直に従った結果、真っ当な人生を歩めなくなってしまった。
 でも、そんな私でもいいという人が現れた。
 ちんちんを出すのは家の中だけにして、一緒に人生を歩んでほしい、という人が現れた。
 恋人と過ごす時間は、いつの間にか珍歩団のメンバーと露出徘徊をする時間よりも大切になっていった。

 かつては総数五十人を超えていたという珍歩団も、いまや私を除けば五人にまで減っていた。彼らが私の前でちんちんを露出させている。これから団を抜ける際に行われる儀式が行われるのだ。
 団員全員によるちんこびんた。
 その激しいちんこびんたは打たれるものだけではなく、打つものすら傷つける。恐怖と狂気といささかの喜びが混ざりあう、別れの儀式だ。

生意気なあの女に ちんこびんた
そしたらあの女 ちちびんた
俺がびちん 女がばちん
びちん ばちん びちん ばちん
さあもっとこい どんとこい

 リーダーによる「ちんこびんた」の朗読が終わると、一番手のシゲさんが小さなちんちんで私の頬をビンタする。悲しいくらいに痛みがない。「ちんこびんた」は2005年頃にネット上で流行した作者不詳の詩である。私たちの団に女性はいないから、ちちびんたで打たれることはない。

 シゲさんに続きモゲさんが巨大なふにゃちんで私の頬を打つ。クゲさんが平安貴族みたいな眉毛をしかめながら、無理して勃起させたちんちんで私の頬を打つ。ハゲさんは頭部にも股間にも毛がない。最後にリーダーはぎんぎんに勃起したちんちんを私の眼前にさらけ出した。これまでのちんこびんたで、私は一切のダメージを負っていなかった。かつての悲惨な脱退儀式の面影はなくなってしまっていた。

「最後にもう一度聞く。戻る気はないのか」
 私は首を振った。ちんちんも振った。
「次のリーダーはお前だと思っていたのに、残念だ」
 勃起しているとはいえ所詮はちんちんだった。全員のちんこびんたを受けきった私は脱退を許された。昔のように血生臭い結果にもならず、最後には握手代わりに全員のちんちんを握って別れた。

 それから私は恋人と二人、家の中でそれぞれのちんちんをぶら下げて幸せに暮らしている。


※「ちんこびんた」は私の作ではありません。記憶を頼りに検索したところ、「とうがねーぜ」という方が、自分の作だと書いておられました。私はそれをアレンジして当時「ちんこびんた音頭」を書きましたが、そちらは今回発見できませんでした。
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