江戸時代。
男が町を歩くと、骨董売りがいた。男は足を止め、妙に気になる物があった。それは六角形の木でできた箱に、お札がはられていて、「この箱あけるべからず」と片仮名で書かれた者だった。
「この箱はなんだい」
「この箱は呪い飛ばしだ。呪いたい相手に使うんだよ。」骨董売りのおじいさんは淡々とそう言い、目が血走っていた。男は怖いもの見たさで買うことにしたのだ。
「じゃあ買います」そういうとお金を払った。おじいさんは男をぎょろっと見て指差し言った。
「ちょっと待ちなはれ。この箱を使うときは、寝る直前に呪いやつの顔を思い浮かべ、枕の下にそいつの名前を書くのだ。そして呪たいやつの死にかたも書いて箱の側面の切れ込みに入れるんだ。入れたら自分の足元に置くのじゃ。決して自分の頭の上においてはならぬ。恐ろしい結末を迎えるからな。あと一つ、決して箱を開けるな。開けるな」
おじいさんが気味悪くなり、男はそそくさと帰っていた。
夜になり、そういえば呪い飛ばしを買ったなと思い出した男は使うことにした。紙に呪いたい奴の名を書き、枕の下に入れ、死ぬ方法を書き、切れ込みに入れた。
寝る直前に呪いたいやつの顔を浮かべて箱をいうとおり足元に置いた。寝れたが、夢がおかしかった。
うめき声が響く。それだけなのだ。
朝起きるとなにもなかった。昨日の夜と同じ風景が続いていた。山に雲海が触れている。「まぁ嘘なんだろう」そう思っていた。
男はうかぶ。「箱の中はなんだろう」と。嘘なんだから別に開けてもいい。そう思い。六角形の箱を持った。その時は悪寒などなく、好奇心が勝っていた。切れ込みに手を入れ、がっと開けた。箱にはなにもなかった
「ちっ。つまんねーの」瞬きをした瞬間、声が聞こえた。
「死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死んでくれ」
うめき声。脳裏に響き。
箱から多くの顔と多くの腕たちが出てきた。その顔はこの世のものざる目をしていた。白目がなかった。
男は見る見るうちに箱の中へと引き込まれ「ばたん!!」という大きな音とともに箱がしまった。
これ以来、男を見るものも骨董売りも見ることはなかった。